歴 史

協会70年のあゆみ
『一般財団法人 大阪大学産業科学研究協会 七十年のあゆみ』(2009年刊行)
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【沿 革】

 昭和6年の大阪大学の開学に伴い、大阪工業会を中心とした関西産業界では、大阪に国立の産業科学に特化した研究所「大阪大学産業科学研究所(以下研究所)」を設立すべく要望活動を行う組織を設置し、国に対し設立を強力に要請しました。設置が認可されると産業界より寄付を募り、研究所の産業側窓口として、昭和13年5月に財団法人 産業科学研究協会(以下協会)が発足しました。
 産業界よりの寄付によるおよそ400万円(現在の100億円)の資金と215,000㎡の土地(堺市浅香山)に国費25万円を加え、研究所の建物を新築し、昭和14年11月30日に3研究部門をもって大阪大学の付属研究所として設立、研究活動を開始しました。
 また、協会も研究所に対して研究資金の援助や研究施設の拡充等に積極的な役割を果たすとともに、研究所の特許実績権の委託業務をはじめ、受託・委託研究制度、委託研究員制度などの産学共同事業を展開して参りました。
戦後になると、文部省の指導により、研究所で発明した特許が全て国有特許扱いとなったこともあり、協会事業の重要な役割であった特許関係においての活動から、交流を中心とした活動へとその性格を変えていきました。
 近年は、産学連携の新しい潮流の中で、平成10年度から研究所と共催にて実施している、「産研テクノサロン」を、平成12年度からは事業化も視野に入れたマルチクライアント方式での新しい研究会である「新産業創造研究会」を、平成21年度からは「知財マネジメント事業(IPアカデミー)」及び実用化を支援する「インキュベーション事業」を立ち上げました。
 協会は、公益法人改革とグローバルなオープン・イノベーションの進展に鑑み、主に関西の中小企業の成長活性化に貢献できる仕組みとして、平成21年度より場所を大阪大学産業科学研究所内に移し体制を一新するとともに平成23年1月に一般財団法人に移行し、竣工なった企業リサーチパーク棟を活用として新の産業連携の実をあげる活動に変革・進化させています。

協会70年のあゆみ


歴史を引き継ぐ大阪大学産業科学研究協会の役割

平成21年10月
大阪大学産業科学研究協会理事長
安達 稔
(※肩書は当時のものとなります)


 一般財団法人 大阪大学産業科学研究協会創設70年を迎える平成21年(2009)は、リーマ ン・ブラザーズ破綻による金融資本市場を発端に100年に一度とも報じられる 世界同時不況で始まった。この厳しい経済産業情勢の中、目本国内政界では歴史的政権交代となり民主党の鳩山由紀夫代表が9月16日の衆参両院本会議で首相に選出され、第93代、60人目の首相に就任した。

 本年は、世界同時不況により各国では多大なる国費から環境・エネルギー問題を課題とした、財政・金融政策による補助金制度にて経済産業の活性化を計 っている。更に海外に於いても新たな新産業創生へ産学官連携推進とナノテク ノロジーを基とした、各産業分野の融合技術から基盤産業創出へ推進している 現状である。

直近10年から学ぶ課題

 日本はバブル崩壊後、産業界では厳しい不況が続き平成12年(2000)日本 経済連合会から「21世紀を拓くナノテクノロジー」が提言、翌年に総合科学技 術会議を発足し第二期科学技術基本計画(5力年)の重点4分野にナノテクノ ロジー・材料分野が位置付けされた。
平成14年(2002)に第一回産学官連携推進会議が開催され、平成15年(2003) に産業界をベースに行政支援によるナノテクノロジービジネス推進協議会 (N∋0)が発足された。それぞれのその背景から平成16年(2004)目本国内初 めての第一回ナノテクサミットが開催されるに至った。
 その後、アジア地域の急激な経済発展が進む中、日本国内は金利上昇と生産 拠点海外シフト等と企業環境の変化は目まぐるしくなり、世界的に金融経済へ の依存度が高い時代へと移っていった。その情勢下で各産業分野では効率数字 主義・成果主義等々から目先のメリットを求め、収益主義の社会へと変化した のである。企業経営者として責務を考える必要課題を、私は多くのセミナー・ 会議の機会時に企業の社会的役割と責務を言及してきた。

 平成20年(2008)リーマンショック以降、世界金融危機による経済への影響 は想像以上に厳しく、平成21年(2009)は歴史的激変の年であり厳しい試練を 受ける年でもあります。次世代への社会環境基盤と夢ある産業基盤を創る為、 大阪大学産業科学研究所、一般財団法人 大阪大学産業科学研究協会の役割を考えるものであ ります。
創設理念を引継ぎ役割の推進

 世界情報は近年の情報通信の発展により世界中が同時に繋がり、中小中堅 企業や大学に於いて各国の社会情勢を踏まえたマーケティング及び科学技術等 の情報を視野に入れた戦略的グローバル的事業展開が可能な時代です。一般財団法人 大阪大学産業科学研究協会は大阪大学産業科学研究所におけるナノテクノロジーを基 に新産業を創出への要として役割を担います。
 この度、世界で多くの人々に貢献出来る責務としての想いから、独立法人産 業技術総合研究所、独立行政法入日本貿易振興機構、目本政策金融公庫、更に フラウンホーファー研究所(ドイツ)の名誉会員として協力頂ける事になりま した。これから推進ずるイノベーションは、科学技術、人的組織等々の "トッ プダウンとボトムアップの融合"により、夢ある明日を創る"新産業創成"と "心豊かな人づくり"に貢献して参ります。

大阪大学産業科学研究協会史の刊行にあたって

平成21年10月
大阪大学産業科学研究所所長 
大阪大学産業科学研究協会理事
山口 明人
(※肩書は当時のものとなります)


 産研協会は、産業科学研究所の創立に先立つ1年前に設置され、産研創設の 推進母体となった由緒ある協会です。昨年、創立70周年を迎えたことをきっかけに、新しい理事長の下、協会事務局の独立と公益法人改革、産学連携への独創的貢献を目指して大きな改革に着手しております。こうした歴史の節目にあ たって、これまでの産研協会の歩みを今一度振り返り、その創設の志を再確認することは、産研協会の今後の発展の方向性を考える上でも大いに意義のあることと考え、ここに産研協会史をまとめることとなりました。資料の整理と本文の執筆は産研の元所長で、現在産研同窓会副会長、産研協会理事を兼ねていただいている福井俊郎先生にお願いし、大変立派なものをまとめていただきました。

 今、世界経済は未曾有の危機の最中にありますが、これは一面、内燃機関と 化石燃料を原動力とした一つの文明が終焉を迎え、新しい科学技術のパラダイ ムにシフトする産みの苦しみともとらえられます。その中での大学の果たすべ き役割は誠に大きいものがあると言わねばなりません。多くの大学人にとって、 産学連携はこれまでは多分に「立て前」にすぎませんでした。しかし、科学技 術のパラダイムシフトはばらばらの企業のカだけでは成し遂げることは難しく、 複数の大学と企業が連携したオープンイノベーションをいまこそ大胆に進めな ければなりません。産研は、今夏、東北大多元研、北大電子研、東工大資源研、 九大先導研を束ねた、我が国の歴史に例のない全国を縦断する物質デバイス領 域ネットワーク型共同研究拠点の拠点本部として文科省から認可を受けました。 科学技術のパラダイムシフトのまさにど真ん中を担う環境・エネルギー・医療研 究の中心拠点として大きな期待と責任を受けることとなります。

 産研は、新しい時代の要請に応えるべく、オープンイノベーションの拠点と して、インダストリーオンキャンパスを実現するナノテクインキュベーション 棟の建設に着手しています。2010年春完成の暁には、ベンチャーや小規模・中規 模の企業を含む広範な企業の方々に大学の資源を活用し、産研と気軽に共同研 究を展開できるこれまでになかった場を提供します。産研協会は、その制度設 計と運営に大きな役割を果たします。産研協会は、創設の原点に戻り、関西経 済界の発展のために産研をフルに活用するための協会として、力強く生まれ変 わりますので、大いに期待していただくと共に、ご支援ご協力を賜りたいと思 います。