大阪大学 産業科学研究所

第 64 回 学 術 講 演 会

平成20年12月1日(月)

拡大図

  ポスターセッション 10時 〜 12時

  シンポジウム    13時 〜 17時20分

  会 場 大阪大学接合科学研究所 荒田記念館(アクセス)

  共 催 財団法人  産業科学研究協会

シ ン ポ ジ ウ ム

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ネットワーク型先端学術科学を目指して

13:00 視聴する 開会の辞
所長  山口 明人
13:05 視聴する 原子分子材料研究拠点課題としてのバルク金属ガラスの魅力と
将来性
  東北大学総長
 井上 明久
13:55 視聴する カーボンナノチューブの形成と極微細デバイスの作製開
前橋 兼三
14:25 視聴する アライアンス研究室 −ネットワーク型先端研究の新しい姿のひとつ−
竹内 繁樹
14:55 視聴する 高温超伝導はなぜ起こる?
安藤 陽一
15:25   休憩(20分)
15:45 視聴する EUVレジスト研究の最先端と産学独及び国際連携ネットワーク
田川 精一
16:15 視聴する たんぱく質表面を標的とする阻害剤の創製
大神田 淳子
16:45 視聴する 細胞内ATP濃度を可視化するための新技術の開発
今村 博臣
17:15 視聴する 閉会の辞
副所長  朝日   一

シンポジウム要旨

 産業科学研究所は、国外においてはフランス、韓国等に産研ブランチを有すると共に、数多くの大学と国際学術交流協定を締結して国際的協力の下で先端的研究及び若手育成・学生教育を推進している。また、国内においては、東北大学・多元物質科学研究所、北海道大学・電子科学研究所、東京工業大学・資源化学研究所と共に「中核的研究拠点間アライアンス」において、先端的・融合的な共同研究プロジェクトを行っている。産研の更なる発展のためには、国際的な学術動向や国際社会の産業的技術ニーズを十分に注視しながら、独創性の高い研究を推進する必要がある。本シンポジウムでは、個々の研究者が行っている国際・国内共同研究を紹介すると共に、共同研究体制を点から線へさらに面へとネットワーク型研究に発展させる機会としたい。

「原子分子材料研究拠点課題としてのバルク金属ガラスの魅力と将来性」
東北大学総長 井上 明久
 東北大学では、世界トップレベル国際研究拠点形成促進プログラムに提案し、国際高等原子分子材料研究拠点が採択され、昨年10月に「原子分子材料科学高等研究機構」を発足させた。本機構では、原子分子を人為的に制御して、従来材料では得られない有用な性質を持つ新材料を創成し、工業材料として発展させ、人類社会の繁栄に貢献することを目指している。その際、材料創成、物性評価・解析、計算科学予測、加工、デバイス、システムなどのグループとシナジー効果を発揮できるような連携体制作りに努めている。私は本機構の主幹研究員として、原子分子制御法を駆使して、金属の過冷却液体の結晶化に対する安定性を究極に高め、臨界厚さが数センチメートル以上のガラス構造金属を創出し、新規で有用な性質を探査し、新工業材料を生み出すことを目指した研究を行っている。その結果、直径2cm以上のバルク金属ガラスが、Zr, Ni, Cu, Mg, La, Mg, Pd, Pt基合金において、また、Fe、Co、Ti基合金においても直径1cm以上の金属ガラスが得られ、高ガラス形成能、様々な有用特性、ネット鋳造性、粘性流動加工性などの相乗効果により、新工業材料として飛躍を遂げつつある。

「カーボンナノチューブの形成と極微細デバイスの作製」

産業科学研究所 助教 前橋 兼三

 カーボンナノチューブ(CNT)は、類を見ない優れた電気的、機械的特性および熱伝導性を有するため、次世代の産業基盤を担う素材として期待され、世界中で盛んに研究が行われている。特に、数ナノメートルといった直径をもった理想的な一次元構造を有するため、極微細デバイスのBuilding Blockとして期待されている。我々は、カーボンナノチューブをチャネルとして利用した電界効果トランジスタおよび単電子トランジスタの作製およびその特性評価を行っている。さらに、バイオセンサーを用いた次世代の医療システムとして、極微量の試料を高感度、非標識で網羅的に計測し、しかも簡便かつ小型化に適したナノバイオ計測システムを開発するために、CNTを用いたバイオセンサーの開発を行っている。講演では、これらの研究について紹介する。

「アライアンス研究室 −ネットワーク型先端研究の新しい姿のひとつ−」
産業科学研究所 招へい教授(北海道大学電子科学研究所 教授)竹内 繁樹
 いわゆるIT革命の恩恵により、社会全体がネットワーク化する中、ネットショッピングに象徴されるように「実際に存在する場所」の意味のバーチャル化が急速に進行している。その一方、IT化した社会の中で「特定の場所の持つ意味」への関心も高まっている。附置研究所間アライアンス事業の一環として、アライアンスラボが設立され1年、産業科学研究所に常駐して半年間の活動と研究成果の紹介を交えながら、ネットワーク化する研究環境における、アライアンス研究室の意義と可能性について議論したい。

「高温超伝導はなぜ起こる?」
産業科学研究所 教授 安藤 陽一
 銅酸化物系で高温超伝導が発見されてからもう20年以上経つが、高温超伝導が起こる具体的な機構は未だに解明されていない。しかし、高温超伝導体に関する実験事実は着実に積み上げられており、高温超伝導の発現において何が重要な役割を果たしているかは漠然とながらわかりつつある。そんな中、新しい鉄−砒素系高温超伝導体の発見が今年2月に報告され、いま大きなブームを巻き起こしている。この新しい高温超伝導体においても銅酸化物系と似た状況が実現しているようであり、高温超伝導に関する理解が一気に深まる可能性が出てきたと同時に、超伝導転移温度の記録更新の期待も高まっている。本講演では、このような高温超伝導研究の現状について紹介する。

「EUVレジスト研究の最先端と産学独及び国際連携ネットワーク」
産業科学研究所 教授 田川 精一
 現在の情報化社会を支える半導体製造分野では、微細化(高集積化)のための露光源の短波長化が進み、193 nmのArF液浸リソグライフィの次はExtreme Ultraviolet (EUV, 13.5 nm)光が露光源として期待されている。露光源の短波長化は高エネルギー化を意味し、EUVでは材料のイオン化エネルギーを越え、電離放射線領域に入るため材料化学の観点から新たな展開が求められている。EUVリソグラフィ用レジストに課せられている要求は、感度、解像度、LERの制御のすべてにおいて、材料の極限に迫るものである。ブレークスルーが期待される研究開発の最先端の取り組みを産学独及び国際連携ネットワークであるEUVレジスト-net、IEUVI Resist TWGの活動も含め紹介する。

「たんぱく質表面を標的とする阻害剤の創製」
産業科学研究所 准教授 大神田 淳子
 たんぱく質−たんぱく質間相互作用は、様々な生命反応を制御する情報伝達系で重要な働きを担っている。それにも関わらず、長い間創薬の対象として敬遠されてきた主な理由に、その作用面が広大で浅く、drug-likeな低分子による制御が極めて困難であることが挙げられる。本発表では、たんぱく質の特定表面を標的とする有機分子を、「部品(モジュール)」の集積によって組み上げようとする我々のアプローチについて紹介する。構造上の特徴に応じて領域分けしたたんぱく質部分表面に対するモジュールの合理的設計、これらの共有結合による連結もしくは金属錯体形成による集積化と、得られた集積体による標的たんぱく質の機能制御について議論する。

「細胞内ATP濃度を可視化するための新技術の開発」
科学技術振興機構 さきがけ研究者(産研 野地研究室)今村 博臣
 メタボリックシンドロームをはじめとして疾病と代謝の関係が注目を集める中、生体内の代謝物を定量的に解析する手法が盛んに研究されている。これらの手法の多くは網羅的に多数の代謝物を解析することを目的としており、個別の代謝物の変化を実時間で計測する手法はほとんど研究されていない。我々は、生体のエネルギー通貨であり、生体内の代謝物の代表格であるアデノシン三リン酸(ATP)に着目し、細胞内ATPを特異的に実時間で計測するための蛍光プローブを開発している。講演ではこのプローブの開発に至る経緯と、それによって初めて得られた知見を紹介する。