当研究室で行っている研究について、ご紹介いたします。


発光・蛍光タンパク質プローブの開発


■遺伝子でコードされたケイジドカルシウムの開発

(ACS Chemical biologyn, doi: 10.1021/cb400849)

カルシウムイオン(Ca2+)は最も重要な細胞内セカンドメッセンジャーの一つであり、筋収縮や神経発火をはじめあらゆる生命現象に関与しています。このようなCa2+の機能を解明することはCa2+が関与する生命現象の理解に貢献するだけでなく、Ca2+の動態異常によって生じるてんかんや不整脈など様々な疾患の予防・治療にもつながるため、これまでに数多くの研究が行われ知見が蓄積されてきました。Ca2+の機能について調べる方法は大きく2つあります。一つは、生きた細胞内におけるCa2+の動態をFura2や Rhod2、Cameleonなどのいわゆる“Ca2+指示薬”を用いて可視化する方法であり、もう一つはケージドCaやイオノマイシン等のいわゆる“Ca2+作動薬”を用いることで細胞内のCa2+の濃度を変化させ、現れる影響を解析する方法です。前者は多くのCa2+指示薬が開発され、様々な研究に応用されているのに対し、後者は技術開発が未だ発展途上にあると言わざるを得ない状況にあります。これまでのCa2+作動薬で特に問題となっているのが、全てのCa2+作動薬は有機合成物質であるため、in vivoに適用することが難しい点です。

そこで我々は、植物由来の青色光の吸収によって立体構造を変化させる光受容タンパク質由来のLOVドメインをCa2+結合タンパク質カルモジュリンに挿入し、光刺激により細胞内でCa2+を放出するタンパク質PACRを開発しました。核移行シグナルを付加したPACRをHeLa細胞に核局在させて、核内のみでCa2+濃度を上昇させることに成功しました。さらに、特異的プロモーターの制御下で線虫の接触神経にPACRを発現させ、光刺激により線虫個体の進行方向を反転させることにも成功しました。 本ツールは、カルシウムイオンが関わる生命現象を研究する有用なツールとなることが期待されます。





■蛍光タンパク質性の“ナノ爆弾”SuperNovaの開発

(Scientific Reports, 3, 2629, 2013)

蛍光タンパク質は、タンパク質や細胞を蛍光標識するためのツールとして生命科学研 究で大いに利用されています。一方、励起光照射により僅かながら発生する活性酸素に よって周囲の分子を酸化して不活性化する“ナノ爆弾”としての利用も原理的には可能であると考えられています。しかしながら、一般的な蛍光タンパク質は光照射による活性酸素の産生量が少なく、またKillerRed と呼ばれる活性酸素の産生能が高い蛍光タンパク質は2 量体を形成するため、他のタンパク質との融合に難がありました。

そこで今回我々はKillerRed をタンパク質進化工学により改変し、単量体型で効率よく活性酸素を産生する新しい蛍光タンパク質SuperNova を開発しました。さらに、SuperNova を用いて特異的なタンパク質の不活性化やアポトーシスの誘導などに成功しました。今後、多種多様なタンパク質や細胞の時空間的な機能の解析が可能な光遺伝学(オプトジェネティクス)用のツールになるばかりでなく、癌の光線力学療法などへの応用などが期待されます。





■生体組織内の任意の細胞での機能イメージングを可能にする光活性化型カルシウムイオンセンサー (PA-TNXL)の開発
(Scientific Reports , 3, 1398, 2013)

蛍光タンパク質を用いたライブイメージング技術の進歩により生命システムを理解するための研究手法は構成要素の網羅的解析から発展を遂げて、それぞれの構成要素が時空間的にどのように活性化/不活性化、或いは他の構成要素と相互作用するのかといった動的な観点での解析を行うための手法の開発が求められています。例えば、発生過程の個体内の特異的領域の生理機能を可視化する場合、組織特異的遺伝子プロモーターを用いて機能センサータンパク質を観察したい部位に発現させることが要求されるのですが、現在利用可能な遺伝子プロモーターで発現部位の任意性を保障する事は不可能です。従って、機能センサータンパク質を任意の領域に“出現”させる新たな技術として、光刺激によって活性化できるセンサータンパク質の開発が望まれていました。  

そこで、我々は蛍光タンパク質間のFRETを利用したCa2+センサータンパク質TN-XLを基に、そのFRETドナー分子とアクセプター分子をそれぞれ光活性化蛍光タンパク質と無蛍光性色素タンパク質に置換することにより光活性化Ca2+ センサー PA-TNXLを開発しました。PA-TNXLをHeLa細胞に発現させ、405nmのレーザー照射により任意の細胞を蛍光化して、ヒスタミン刺激を与えた時に生じるCa2+濃度の振動を蛍光強度変化として可視化することができました。更に、PA-TNXLを発現させたラット海馬神経細胞のdissociation cultureの任意の細胞を光刺激によって蛍光化し、自発的な神経発火に伴うCa2+濃度変化をイメージングすることに成功しました。  本センサーは、組織特異的イメージングに有用であると共に、神経細胞のような複雑に入り組んだ細胞集団内での任意の1細胞のCa2+イメージングを可能にし、発生・神経生物学研究のツールの1つとして研究に貢献することが期待されます。





■超高輝度発光たんぱく質Nano-lantern(ナノ-ランタン)の開発

(Nature communications, 3, 1262, 2012)

蛍光タンパク質を中心とした蛍光プローブの普及に伴い、生物個体を生きたまま可視化するライブイメージング技術が著しい発展を遂げています。観察対象が様々な動植物種に広がる一方で、蛍光観察におけるサンプルへの光毒性や自家蛍光といった問題が浮上してきました。
これらの問題を回避するために、我々の研究グループではホタルに代表される「化学発光」を用いたライブイメージングに取り組んできました。化学発光は蛍光と違い外部からの励起光を必要としないため、自家蛍光や光毒性といった問題を回避することができます。このような利点があるにも関わらず化学発光は蛍光に比べて明るさが足りないという弱点があったため、ライブイメージングの道具として有用ではありませんでした。例えば従来の化学発光でマウス体内の癌細胞を検出する場合は、麻酔で眠らせたヌードマウスを暗い環境で、長時間露光撮影する必要がありました。

今回我々は、化学発光タンパク質と蛍光タンパク質をハイブリッド化することで、従来の化学発光プローブに比べ10倍以上明るい超高輝度化学発光タンパク質 Nano-lantern(ナノ-ランタン)を開発しました。Nano-lanternを用いることで、自由に動き回るマウスの背中で光る癌細胞の様子をビデオレートで撮影することに世界で初めて成功しました。特別な処置すること無くマウスを化学発光で観察できるので、多くの疾病の原因究明やより効果的な創薬スクリーニングが期待されます。さらに我々は、Nano-lanternを改変してCa2+やcAMP、ATPを検出できる発光プローブの開発にも成功しました。これらの発光プローブは励起光を必要としないため、植物細胞のような自家蛍光の強い試料における活性測定や、光照射により細胞の活動やタンパク質の機能を制御する「光遺伝学的技術」と組み合わせて用ることが容易です。例えば、神経ネットワークのコントロールと神経活動のモニタリングを同時に行うことができるため、複雑で実験が困難であった高次神経活動(行動、思考、記憶)のメカニズムに迫ることが可能となります。

<撮影条件>
自作暗箱装置
カメラ:Evolve 512(Photometrics) + Cマウントレンズ(FUJINON)
露光時間:33 msec, 発光と明視野画像を交互に撮影
ソフトウェア:MetaMorph (Molecular Devices)





■より多彩にカルシウムイオンを検出できる、DNAにコードされた青、緑、赤色のカルシウムイオン指示薬の開発
(Science, 333: 1888-1891,2011)

下村脩博士らのノーベル賞受賞で知られる緑色蛍光タンパク質「GFP」に代表される蛍光タンパク質は、細胞や生体分子を蛍光標識することを主用途として、現在では医学・生物学研究に広く用いられるようになりました。

近年では、GFPを遺伝子光学的に改変することにより、細胞内の酸素の活性化やイオンの濃度変化などを計測することができる指示薬も開発されています。しかし、従来のCa2+指示薬は計測波長域が青緑色から緑色域に限定されていたり、Ca2+結合によって起きる蛍光強度の変化が小さいためにわずかなCa2+濃度の変化をとらえることができないという短所がありました。
そこで今回の研究では、GFPの円順列変異体を利用した緑色蛍光Ca2+指示薬である「GCaMP3」の遺伝子に「エラー誘発PCR法」と遺伝子シャッフリング法を用いてランダムに遺伝子変異を導入し、2600%ものシグナル変化率を有する緑色指示薬「G-GECO」(ジーゲッコー:green fluorescent genetically-encoded Ca2+indicators for optical imaging)の開発に成功しました。さらに、そのG-GECOの蛍光団を構成するアミノ酸の一種である「チロシン」を「ヒスチジン」に置換することで、青色指示薬「B-GECO」を、また、赤色蛍光タンパク質「mApple」をもとにした赤色指示薬「R-GECO」の開発にも成功しました。 次いで、B-GECO、G-GECO、flash-pericamの遺伝子混合物を鋳型にして「エラー誘発PCR法」を行った結果、Ca2+の結合によって蛍光色が緑から青色に変化する「GEM-GECCO」の開発にも成功しました。GEM-GECOはCa2+の結合により、蛍光シグナル(青の蛍光強度/緑の蛍光強度)が11,000%も変化し、これまでのどの指示薬よりもズバ抜けて大きな、変化量を示します。そのほか、励起2波長計測型「GEX-GECO」も開発しました。 これらGECOシリーズの性能は細胞内で維持され、極めて高いコントラストで細胞内のCa2+変動を観察することができるようになっただけでなく、複数のコンパートメントでのCa2+の同一細胞内での観察や、Ca2+とATPの同時計測も可能にしました。

なお、この研究は、カナダ・アルバータ大学化学科のロバート・キャンベル准教授,九州大学理学研究院生物科学部門の石原健教授らとの共同で行われました。





■世界最高の検出感度をもつカルシウムイオンセンサー“カメレオン-Nano”の開発 (Nature Methods, 7:729-32. 2010)

Cameleon(カメレオン)は遺伝子工学技術を用いてGFP をもとに開発された蛍光タンパク質であり, 細胞内の信号伝達を担うCa2+をリアルタイムに検出するセンサーとして利用されてきまし た。 これまでにカメレオンをはじめとして,幾つかのCa2+センサーが蛍光タンパク質の改変 や化学合成により開発されてきましたが,従来のCa2+センサーは感度が低いため,自発的な 生命活動に伴う僅かな Ca2+の濃度変化を計測することは難しく、これを可能にする高感度 センサーの開発が求められていました。 研究グループはカメレオンのCa2+結合領域を新奇の方法で改変することにより、Ca2+に対 する結合力を飛躍的に向上させ、超高感度 Ca2+センサー「カメレオン-Nano」の開発に至り ました。 カメレオン-Nano の Ca2+との結合力はこれまでに開発されたCa2+センサーの中で最 も強く、世界最高の感度(解離定数Kd=15 nM)を有しています。 Ca2+結合領域を微調節することで Ca2+との結合力を変えたセンサーも5 種類開発し、センサーのシリーズ化も実現しま した。 これらの超高感度Ca2+センサーを用いることで,大脳皮質の神経活動を高感度に検出する ことが可能になっただけでなく、生きた動物個体内における神経ネットワークやこれに制 御される筋肉組織の活動パターンの両方を同時計測することに成功するなど、従来の Ca2+ センサーでは検出できなかった現象を捉えることが可能になりました。




■群青色蛍光タンパク質 (シリウス) の開発 (Nature Methods, 6: 351-353, 2009)

2008年のノーベル化学賞の受賞対象となった緑色蛍光タンパク質 (GFP, Green Fluorescent Protein) は、1960年代に下村脩博士によってオワンクラゲから発見され、1990年代にGFP の遺伝子がクローニングされて以来、遺伝子改変により数多くの蛍光色変異体が開発されてきました。とりわけ緑よりも長波長の黄、橙、赤色の蛍光を発する蛍光タンパク質は数多く開発がされてきたものの、短波長の青や紫色の蛍光を発する蛍光タンパク質は未だに種類が少なく、多くの研究者から長年その開発が求められていました。  
我々の研究グループは蛍光タンパク質の発色団とそれを取り巻くアミノ酸への変異の導入、さらにはタンパク質全体へのランダムなアミノ酸変異を導入することで紫と青色の中間色である群青色の蛍光を発する蛍光タンパク質Sirius (シリウス) の開発に成功し、15年ぶりに蛍光タンパク質の最短波長発光記録が更新されました。これにより蛍光色のバリエーションが増え、従来では不可能であった細胞内の複数の部位やタンパク質を同時にかつ鮮明に可視化することができるようになりました。 Siriusは従来の蛍光タンパク質とは異なり、如何なるpH条件下でも安定した蛍光を発することから、これまで困難であった酸性環境下にある細胞内小器官内でのタンパク質の動態の観察も可能となりました











■分子デザインにより創生した光変換蛍光タンパク質を用いた、生きた細胞内の生体分子の動きを鮮明に可視化する技術の開発
(Nature Methods, 5: 339-345, 2008)

蛍光タンパク質を用いた生体分子の標識技術は発展を遂げ、今では紫外線などの光刺激によるスイッチングで蛍光色を変化させることのできる光変換蛍光タンパク質が細胞や分子の「動き」を解析するために用いられるようになりました。 従来の光変換蛍光タンパク質では蛍光波長の変化を観察するために、波長の違う2種類の励起光(蛍光タンパク質を光らせるために与える光)を用意する必要がありました。 我々は、2つの蛍光タンパク質を繋げたキメラ蛍光タンパク質をデザインしてスイッチング前後の2色の蛍光(前:シアン色、後:緑色)を1種類の励起光で観察することのできる光変換蛍光タンパク質 「Phamret(ファムレット)」を開発しました。1種類の励起光で観察できるため、特殊な光学系を使わずに、光変換によって生じた2種類の蛍光を同時に測定することが可能になり、動きの速い分子の映像化を可能にしました。 また、光刺激によるダメージを受けやすい生物には観察のために与える光の量は1種類の励起光だけでよいため負担が少なくなりました。




■全自動でプラスミドDNAを組換える方法の開発 (J. Biotechnol, 137: 1-7, 2008

分子生物学の最も重要な基盤技術の1つにDNA組換え法があります。 DNA組換えとは、遺伝子が符号化されたDNA断片等をつなぎ合わせることで、自由自在に遺伝子を操作する技術のことです。 インシュリン遺伝子をバクテリア用のベクタに組換えて安全にインシュリンを生産したり、クラゲの蛍光タンパク質遺伝子をヒト細胞に導入して癌の研究に役立てたりするなど、様々な分野で社会に貢献しています。 こうした技術は40年程前に確立されたのですが、熟練した研究者が長時間掛けて様々な処置を行う必要があるため、生物学の研究者の多くの時間をこうした遺伝子組換え操作に費やしてきました。 私たちのグループでは、こうした煩雑で非常に手間の掛かる従来の遺伝子組み換え方法に改良を加え、「混ぜるだけ」で自動的にDNA組換えを行うことの出来る新しい手法を開発しました(図1)。 DNAの決められた配列を切断する制限酵素には様々な種類が存在しますが、その中でもIIS型と呼ばれる制限酵素は、DNA配列の認識する場所と切断する場所が異なると言う面白い特徴を有しています。 IIS型のこうした性質とDNAリガーゼと呼ばれるDNAの連結酵素を組み合わせることで、DNA断片を自動的に組換える反応を考案しました(図2)。 実際にこうした反応を実験的に検討してみると、当初の予想よりも高い効率で組換えが起こることが判明し、また複数のDNA断片も同時に組換えることが可能であることも分かりました。 私たちはこの手法を「全自動単一試験管組換え法(Fully Automated Single Tube Recombination: FASTR)」と名付け、現在、様々な用途に則した実用化へ向けての研究を行っています。




■化学発光性カルシウムイオン指示薬"BRAC"の開発(PLoS ONE, 5: e9935,2010)

FRETや蛍光タンパク質を用いた「蛍光観察」ではサンプルへ強い励起光を当てる必要があります。 そのため励起光が届きにくい生物個体内部や、自家蛍光が多くまた光毒性の影響が多い植物等への適用は難しい点もあります。 一方、ホタルの光のように励起光を必要とせずに発光を起こす生物発光タンパク質も同定され研究に利用されています。 我々はこのように励起光を必要としない「発光観察」を生物個体へのイメージングにアプローチしようとしています。 生物発光タンパク質から蛍光タンパク質へのBRET(Bioluminescene Resonance Energy Transefer)を利用したバイオセンサーの開発も行っています。 新規に開発した発光性Ca2+指示薬BRACを発現したHela細胞のカルシウム振動を観察を行いました(下図)。




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生体イメージングのための新型顕微鏡・手法の開発



■白色光源を用いた高速多波長共焦点顕微鏡の開発

共焦点蛍光顕微鏡の光源は一般的にはレーザーを使用します。レーザーを使わずに、我々は水銀アーク灯やLEDを光源を使用して、暗い蛍光画像を明るく撮るため、光学系を改造した共焦点蛍光顕微鏡システムを構築しました。 作成された顕微鏡はレーザーを使用したものと空間分解能は変わらないまま、蛍光画像が非常に明るくなりました。このシステムを利用し、同一細胞内で複数の生理現象を同時に可視化する事も行っております。図はHela細胞を5色で染色したものです。







■新規吸収顕微鏡の構築

 吸収スペクトルは、分子固有であり、吸光度を求めることでランバート・ベールの法則から分子の濃度を求めることができます。 通常想定される光路長は、1 cm 〜 1 mmであり、通常細胞内に発現している分子濃度(サブμM~数十μM)を蛍光標識等の外部からの修飾無しで観察することは困難であります。 しかしながら、外部からの修飾はそれ自体が摂動になりうることや、分子量の小さな物質の観察は困難であること、光毒性の問題等があります。 そこで、透過光を光キャビティによって往復させ、僅かな光の吸収に伴う透過光強度の減衰信号を増幅させることでコントラストを得る吸収増幅顕微鏡を開発し、生体試料を標識することなく、吸光度イメージングを行うことを目的としています。




■光変換を利用した分子拡散定数を求める手法「FDAP」の開発

我々は、我々が開発した光変換蛍光タンパク質であるPhamretの光変換を利用して、特定の領域で光変換を起こさせ、その領域の分子が領域の外に出て行くことによって生じる蛍光強度の減衰を数値解析することで分子拡散定数を求める方法 「FDAP(エフダップ)」を開発しました。蛍光の褪色を利用して拡散定数を求める従来法などに比べ、動きの速い分子の拡散定数をより簡便かつ正確に求めることが可能となりました。 この技術を活用することにより、細胞内情報伝達メカニズム、細胞や個体の形態が形成される仕組み、がんの浸潤・転移メカニズムなどに関して新たな知見がもたらされることが期待されます




■複数のFRETセンサーを同時に捉える「Dual FRET法」の開発

我々の開発した群青色蛍光タンパク質Sirius の蛍光スペクトルは、シアン色を発するCFP の吸収スペクトルと大きく重なることから、Sirius からCFP へFRET (蛍光エネルギー共鳴移動) が効果的に起こるということがわかりました。このSirius とCFP のペア、そしてSirius と同じ紫外光で励起されて緑色を発するuvGFP と赤色の蛍光を発するDsRed のFRET ペアを併用することで1つの励起波長で4色の蛍光を観察するDual FRET が可能となりました。このDual FRET 法を用いることで2つの生理現象を同時に捉えることが可能になり、複数の生理現象間の関連を生きた細胞を用いて解析する道が開けました。図はHeLa細胞のプログラム死の過程で起こるカスパーゼ3の活性化 (上段)とCa2+濃度の動態 (下段) を示しています。






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蛍光・発光イメージングを用いたバイオロジー



■多細胞間で協働性が生み出される原理の研究

「リズム」には心を引きつける何かがあります。一匹のホタルだけでも十分魅力的ですが、たくさんのホタルが集まるとその様相は一変します。あるときは全てのホタルがリズムを揃えて明滅し、またあるときは光のウェーブを生み出すことすらあります。意外なことに、こうした集団全体のパターンを生み出すのに特別なリーダーは必要なく、隣同士の単純なルールだけから全体の秩序が作り出されます。このような自己組織化と呼ばれる現象は細胞や分子の世界にも見いだすことができ、私たちは研究材料の一つに細胞性粘菌を用いています。1万個をこえる細胞が走化性シグナルを互いにリレーすることで同心円や螺旋状の集合流をつくり出します。この現象の背後に潜むルールを理解するには、細胞間でやりとりされる情報を可視化することが有効です。わたしたちは、①細胞内部のカルシウムイオンやその他のシグナル伝達分子の活性化状態を計測する方法を開発し、②数万個の細胞を対象に、シグナル伝達の時間と空間のパターンがどのように変化するか明らかにしようと試みています。


小数分子が安定な出力を生み出す原理の研究

多細胞生物の神経発生に関わる神経軸索ガイダンス因子や成長因子などは,極めて低い濃度で神経細胞に作用します.例えば、神経の軸索伸長や持続的な生存を誘導する神経成長因子を、その作用濃度(10-11 M程度)で神経細胞に投与し、これを適当な方法で観察すると,受容体に結合したこの因子が1分子毎に数えられます(図).このように,細胞スケールでみると指折り数えられる程度の少数分子が,どのようなしくみで,神経回路形成や個体の体制構築といった、より高次の秩序正しい生命現象を引き起こすことができるのでしょうか.我々は蛍光を目印とした生体分子の1分子観察技術と、遺伝子工学的に作成された蛍光プローブを用いて、神経回路形成をつかさどる分子のふるまいを生きた細胞や組織内で観察することにより、このような問題にアプローチしています。



■植物の耐病性機構に関わる分子の動的メカニズムの解析

ポストゲノム時代を迎え、モデル植物を中心に、植物の耐病性に関わる分子群とそれらの相互作用に関する膨大な情報が得られるようになりました。 しかしながら、大部分の情報は断片的であり、より包括的な理解に迫るためには、機能分子を個体・細胞レベルで生きたまま捉えることが重要です。 我々は、植物の細胞から個体レベルでの生体イメージング法を確立し、植物の耐病性に関わる分子の動態を時空間的に理解することを目指します。


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