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産業科学研究所 小林研究室は、表面化学・半導体化学を専門とする研究室です。

研究内容RESEARCH THEMES

バナースペース

大阪大学産業科学研究所小林研究室

〒567-0047
大阪府茨木市美穂ヶ丘8-1
第二研究棟5階

TEL 06-6879-8451
FAX 06-6879-8454

4.半導体界面の研究

 半導体の界面は、太陽電池、薄膜トランジスター、LSIの電気特性に大きく影響します。特に、SiO2/シリコン界面の欠陥準位である界面準位は、微量であってもこれらの半導体製品の特性を大きく劣化させます。小林研究室では、「バイアス電圧印加時のXPS測定」という新しい方法を開発して、界面準位を直接的に観測することに初めて成功しました。

半導体界面-01
(図1 界面準位を観測するために小林研究室で考案した、バイアス電圧印加時のXPSスペクトルの測定図)

 1にバイアス電圧印加時のXPSスペクトルの測定図を示します。シリコン等の半導体上に1~2.5nmの酸化膜を形成し、その上に約3nmの白金膜を蒸着してMOS構造とします。この状態で白金側をアースとして半導体裏面にバイアス電圧を印加した状態で、白金側からX線を照射して、放出される光電子を観測します。


半導体界面-02
(図2 バイアス電圧印加時のXPS測定による界面準位観測の原理。a) 無バイアス時、b) 半導体に負バイアスVを印加した時)

 2に、界面準位観測の原理を示します。バイアス電圧を印加しない状態(図2a)では、金属と半導体のフェルミレベルは一致しています。フェルミレベルより下に存在する界面準位には、電子が蓄積されています。バイアス電圧Vを半導体に印加すると(図2b)、半導体のフェルミレベルが金属のフェルミレベルから離れます。したがって、半導体と金属のフェルミレベルの間に存在する界面準位に新たに電荷が蓄積されます。この電荷量を
ΔQitとすると、ΔQit / ΔCoxCoxは酸化膜の電気容量)だけ、酸化膜中の電位勾配がΔQit / ΔCox変化します。酸化膜/半導体界面では、半導体の価電子帯上端、VBM、と半導体の内殻準位(例えばSi 2p)のエネルギー差は一定です。したがって、半導体の内殻準位が変化します。すなわち、電圧印加によって界面準位に電荷が蓄積され、半導体の内殻準位がシフトします。したがって、内殻準位のシフト量をバイアス電圧の関数として観測すると、界面準位のエネルギー分布が得られます。
 従来、界面準位は、電気容量-電圧測定等の電気測定によって観測されてきました。電気測定による界面準位の観測では、1) 等価回路の仮定、2) すべての界面準位が高周波(または低周波)シグナルに追随しない(またはする)という仮定、3) エッジ効果や界面のラフネスの無視、4) ドーパントの均一性の仮定など、さまざまな仮定が必要でした。さらに、リーク電流が流れる極薄酸化膜では、電気容量などの電気測定ができないという問題点がありました。バイアス電圧印加時のXPS測定では、これらの仮定を用いることなしに、リーク電流が流れる極薄酸化膜の界面準位のエネルギー分布を求めることができます。


半導体界面-03
(図3 バイアス印加XPS測定から求めた1.5nm SiO2/単結晶シリコン構造の界面準位のエネルギー分布)

 3に、シリコン上に熱酸化法で形成した約1.5nmの極薄酸化膜の界面準位のエネルギー分布を示します。界面準位は、酸化膜の形成温度と共に変化することがわかります。酸化温度の上昇に伴って酸化膜の原子密度が上昇して、界面準位のエネルギー分布が変化することを見出しています。
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