Osaka

主な研究テーマ

研究成果の例

バルク絶縁性が格段に高いトポロジカル絶縁体新物質を発見

トポロジカル絶縁体とは本来、バルク絶縁体の表面にトポロジカルな金属状態が生じている物質のことで、この表面における有効質量ゼロのディラック粒子を利用した超低消費電力デバイスの実現が期待されています。しかし現実には、バルクが本当に絶縁体になっている(つまりバルクには電気が流れない)ような材料はこれまでにまだ得られていません。このため、トポロジカル絶縁体に特有の金属的表面に流れる電流の特性を実際に調べることは非常に困難でした。安藤研究室では、Bi2Te2Seという物質の化学的特性に着目し、その高品質単結晶を作製して調べた結果、この物質が格段に高いバルク絶縁性を持つトポロジカル絶縁体新物質であることを発見しました。さらにそのバルク絶縁性の高さを利用して、トポロジカルな表面状態の電気伝導率が強磁場中で量子振動現象を示す様子を明確に観測することにも成功しました。[Phys. Rev. B 82, 241306(R) (2010)]

なおこの成果は物理学研究上の重要なトピックスを伝える米国物理学会のオンライン雑誌Physicsで紹介されました。

 

トポロジカル超伝導体候補物質CuxBi2Se3の解明を推進

トポロジカル超伝導体とは、エネルギーギャップが開いた超伝導波動関数の持つトポロジカルな性質により、表面にギャップレスのマヨラナ型準粒子が現れる物質ですが、具体例は未発見です。マヨラナ粒子はまだ捉えられたことのない仮想的粒子として興味深いだけでなく、擾乱に強いトポロジカル量子計算の量子ビットとして使える可能性があるため、大きな注目を集めています。最近、電子ドープされたトポロジカル絶縁体であるCuxBi2Se3において超伝導が発見され、この物質が「トポロジカル超伝導体」である可能性が提案されました。しかしこの物質の合成は非常に難しく、これまでは全体積中のわずかな部分のみが超伝導を示すような品質の悪い試料しか得られなかったため、その超伝導状態の性質を解明することができませんでした。安藤研究室では、電気化学的手法を用いた新しい合成法によって、高品質のCuxBi2Se3単結晶試料を作製することに成功しました。さらにその高品質試料を用いて、超伝導状態における電子比熱の測定を初めて行い、超伝導状態が通常のBCS理論に従わない、非従来型のものである可能性が高いことを明らかにしました。[Phys. Rev. Lett. 106, 127004 (2011)]

 

トポロジカル超伝導体候補物質CuxBi2Se3の解明を推進

固体には、金属、絶縁体、半導体、超伝導体といった状態が存在しますが、ここ数年、「トポロジカル絶縁体」と呼ばれる従来の物質の状態とは全く異なる新しい状態が存在することが発見され、大きな話題になっています。このトポロジカル絶縁体物質は、内部(バルク)は電流を流さない絶縁体状態であるのに対して、その表面に特殊な金属状態が現われます。この表面における電子は、従来の物質中の電子よりも格段に動きやすい上に不純物に邪魔されにくいという性質を持っており、これを利用した次世代の超低消費電力デバイスや超高速の量子コンピューターへの応用へ向けた研究が現在世界中で急ピッチに進められています。しかし、これまでに知られているトポロジカル絶縁体物質はバンドギャップが比較的小さいため、その優れた特性が熱によって壊れやすいという欠点を持っていました。そのため、室温で安定して動作する新型デバイスを開発するためには、熱に強い新型のトポロジカル絶縁体を発見することが不可欠と考えられてきました。安藤研究室では、東北大物理の高橋研究室と共同で、「トポロジカル絶縁体」の中で最も大きいバンドギャップを持つTlBiSe2という新物質を発見しました。この成果は、これまでごく限られた物質でしか見出されなかったトポロジカル絶縁体が、より多くの物質で発見される可能性を明確に示したものであり、また、室温で動作するデバイスへの実用に道を拓くものです。[Phys. Rev. Lett. 105, 136802 (2011)]

 

高温超伝導体母物質の「無垢の状態」の特性を解明

高温超伝導は、電子間の反発力のために電気が流れなくなっているモット絶縁体と呼ばれる母物質にキャリア(電子もしくは正孔)を導入したときに起こります。しかしその発現機構はまだわかっていません。これを理解するためには、モット絶縁体にキャリアが注入されると何が起こるのかを正確に知る必要があり、特に電子(マイナス)側と正孔(プラス)側の違いを理解することが重要です。安藤研究室では、銅酸化物高温超伝導体の中で唯一、同じ構造を保ったままキャリアの符号を変えることのできる物質であるY1-zLazBa2-xLaxCuOy(略称YLBLCO系)について、精密な試料調製によってキャリアがいない「無垢の状態」を実現することに初めて成功し、そこにわずかに電子または正孔を注入しました。そして東北大金研の山田研究室などと共同で電気的測定と磁気構造決定を組合せて行うことにより、絶縁体組成を通り越してキャリアが符号を変える際に基底状態に非常に急峻な変化が起こることがわかりました。しかもその変化は、電子ドープ領域と正孔ドープ領域の間の「競合」という、予想外の現象に起因していることが明らかになりました。これらの結果は、高温超伝導が出現する舞台となるモット絶縁体の理解を進める上で大きく貢献すると期待されます。[Nature Physics 6, 579 (2010)] なおこの成果は重要なトピックスとしてNature Physics誌のnews & viewsで紹介されました。