平成22年度(後期) 共同利用の募集
大阪大学産業科学研究所 量子ビーム科学研究施設
強力極超短時間パルス放射線発生装置(Lバンド電子ライナック)、コバルト60ガンマ線照射装置、150MeV Sバンド電子ライナック、及びRF電子銃ライナック
1.はじめに
大阪大学産業科学研究所量子ビーム科学研究施設(以下ビーム施設という)では、強力極超短時間パルス放射線発生装置(Lバンド電子ライナック、150MeV Sバンド電子ライナック、及びRF電子銃ライナック)、コバルト60ガンマ線照射装置を学内共同利用に供しています。この内、150MeV SバンドライナックとRF電子銃ライナックは、平成18年度から共同利用の運用を開始しました。
平成22年度(後期)の共同利用を募集しますので、本要項に従ってお申込下さい。 前期に申し込みをされ、後期も引き続き利用される場合は、今回申し込む必要はありません。ライナックの利用を初めて希望される場合、事前にその旨を電子メールでビーム施設(info_rl@sanken.osaka-u.ac.jp)に連絡を下さい。申し込み前に、実験を行う上での技術的な事項を担当者が説明します。
注 意
量子ビーム科学研究施設の装置を維持管理運営するための財源である特殊装置維持費(通称)が減額されたことに伴い、産業科学研究所の利用者に対し平成19年度前期より施設装置に利用負担金を求めています。量子ビーム科学研究施に改組された後も同様に行いますのでご了解ください。利用者負担金の詳細についてはこちらをご覧下さい。
2.装置の概要
2.1 Lバンド電子ライナック
Lバンド電子ライナックは量子ビーム科学研究施設のライナック棟の地下2階に設置されています。このライナックは、熱陰極電子銃と3段式のサブハーモニックバンチャ−(SHB)システム、プリバンチャー、バンチャ−、主加速管から構成され、電子銃からの長短電子線パルスとSHB作動の組合せにより、過渡モード(短パルス、SHB無)、定常モード(長パルス、SHB無)、単バンチモード(短パルス、SHB有)、多バンチモード(長パルス、SHB有)の4種 類の運転モードを有しています。表1に各運転モードで利用可能な電子線の代表的な特性を示します。加速された電子線はビーム輸送路により、スイッチヤード
室、第1照射室や第2照射室に導かれ、種々の実験に利用されています。図1にライナック棟地下2階の実験室の配置を示します。 Lバンド電子ライナックは、ナノテクノロジーに関する研究と、関連分野の基礎研究、量子ビーム科学技術の研究を推進するために全学の共同利用に供されています。具体的には、以下のような実験が行われています。(1)パルスラジオリシス、(2)パルス赤外光の発生研究、(3)パルス放射線計測、(4)電子線による各種物質の照射、(5)その他の利用
表1 電子線の代表的な特性
|
過渡モード |
定常モード |
単バンチモード |
多バンチモード |
電子エネルギー(MeV) |
18〜30 |
18〜30 |
18〜30 |
18〜24 |
最大ピーク電流 |
15A |
600mA |
30nC/bunch |
2nC/bunch |
パルス幅 |
5 ns, 8 ns |
0.1〜2.0μs |
20ps |
0.1〜6.0μs |
パルス繰り返し(pps) |
60 以下 |
60 以下 |
60 以下 |
10 以下 |
エネルギー幅(ΔE/E) |
〜2% |
〜2% |
〜1% |
〜2% |
ビーム径 |
3〜5mm |
3〜5mm |
3mm |
3〜5mm |
図1.ライナック棟地下2階の実験室の配置
2.2 コバルト60ガンマ線照射装置
コバルト60ガンマ線照射装置(以下、「照射装置」という)は、表2に示すコバルト60ガンマ線源を持ち、コバルト棟に設置されています。図2に照射室の略図を示します。A照射室(Aケーブ:約2.4 m×1.9 m)、B照射室(Bケーブ:約4.5 m×1.9 m)で照射実験を行うことが可能です。 照射装置の共同利用では、以下のような研究が行われています。
(1)各種物質のガンマ線照射、(2)放射線計測、(3)放射線重合、(4)放射線損傷、(5)生体への放射線の影響、(7)その他の利用
表2 コバルト60ガンマ線源の特性
線源名 |
線源強度 |
線量率 |
線源の大きさ |
Millennium-10000 |
93 TBq |
2.8×103Gy/hr |
200mmL × 20mmφ |
Dog82 |
9.3 TBq |
2.8×102Gy/hr
|
150mmL × 25mmφ |
アメリカ3000 |
0.52 TBq |
1.6×101Gy/hr
|
100mmL × 14mmφ |
(2010年10月1日現在; 線量率は各線源からの距離を10 cmとした場合の水への線量率)
図2.コバルト60ガンマ線照射作業室内の配置
2.3 150MeV Sバンド電子ライナック装置
150MeV Sバンド電子ライナックはクライストロンで増幅された強力なマイクロ波を短い加速管に供給することで、高勾配の加速電場を発生させ、高エネ
ルギー電子ビームを生成するコンパクトな電子ライナックです。ビームポートは2つありますが、1つは低速陽電子の生成に使用されています。通常の運転条件 はエネルギー:100 MeV、ピーク電流 0.2 A、繰り返し:30 Hzです。
2.4 RF電子銃ライナック装置
レーザーフォトカソードRF電子銃ライナック(RF電子銃ライナック)は、低エミッタンスのフェムト秒・ピコ 秒という超短パルス電子線発生装置です。本装置では、電子ビームの発生に 1.6セルの加速空洞で構成されたS-バンドフォトカソードRF電子銃(加速RF周波数:
2856MHz、電場強度:115MV/m)を採用し、電子発生用の光カソードの材質には無酸素銅を用いています。また、光カソードの励起光源として、全固体Nd:YLFピコ秒パルスレーザーを備えています。 RF電子銃から発生したピコ秒電子線パルスは、進行波型線形加速器を利用して最大40MeVまで加速され、磁気パルス圧縮法を用いてフェムト秒領域までパルス圧縮することが可能です。これらフェムト秒・ピコ秒電子線パルスは、主として量子ビーム誘起反応現象の解明に関する研究に利用されています。
3.申し込み資格
大阪大学の研究者(大学院生を含む)。ただし、大学院生は申し込み代表者にはなれません。実験参加予定者は全員、放射線業務従事者の登録が必要です。
4.申し込み方法
所定の申込書を量子ビーム科学研究施設に提出して下さい。申込は年2回(前期と後期)受け付けます。後期は追加募集ですので、前期に採択されたテーマは後期も継続します。 ただし、後期の実験内容等に変更が有る場合は再度申込書を提出して下さい。量子ビーム科学研究施設専任職員または兼任職員以外の申込者が新規申込をする場
合、事前にビーム施設と十分相談し、世話人の候補者を決めて申し込んで下さい。場合によっては、研究実施計画を変更していただくこともあります。また、装 置の状況により、実験条件が制限される場合があります。尚、申込書式は下記よりダウンロードできます。申込用紙の様式は、産研内部からの場合は様式(A)、産研以外からの場合は様式(B)となっています。
産研内の申込者の方 |
||
産研外の申込者の方 |
様式(A)及び様式(B)の2枚目以降は、出来る限り電子媒体での提出をお願いいたします。
電子メールによる提出先
E-mail: info_rl@sanken.osaka-u.ac.jp
5.申し込み期限および利用期間
申し込み期限 |
平成22年8月27日(金) |
利用期間 |
平成22年10月1日〜平成23年3月31日 |
6.採否
申込まれた研究課題は、安全審査小委員会、量子ビーム科学研究施設運営委員会の審議を経て、量子ビーム科学研究施設長がその採否を決します。
7.共同利用の実施
(1)採択された共同利用に対して、量子ビーム科学研究施設兼任職員を世話人に指定します。実験の実施等については、世話人と密接な連絡を取ってください。
(2)強力極超短時間パルス放射線発生装置の利用時間は原則として10時より17時です。
(3)利用者は共同利用の実施にあたっては事前に実施申込書を提出してください。
(4)実験に必要な装置、測定機器および消耗品は利用者が準備する必要があります。ただし、一般的な測定装置は準備されており、利用可能です。詳細は、世話人または量子ビーム科学研究施設に問い合わせてください。
8.研究報告
年度末(通常3月)に、産業科学研究所で開かれる共同利用報告会で、研究結果を発表して頂くとともに、研究報告書を提出して頂きます。この研究報告書は施設の年次報告書に収録されます。施設を利用した研究、または一部に利用した研究を発表された場合にはその情報を量子ビーム科学研究施設にお送り下さい。
9.問い合わせ・連絡先
大阪大学産業科学研究所
量子ビーム科学研究施設
〒567-0047 大阪府茨木市美穂ヶ丘8-1
TEL:06-6879-8511, FAX:06-6875-4346
E-mail: info_rl@sanken.osaka-u.ac.jp