QHNDH
(quinohemoprotein amine dehydrogenase)

QHNDHの構造

グラム陰性細菌のPseudomonas putida及びParacoccus denitrificansは、培地中にn-ブチルアミンやベンジルアミンを加えると、これらをエネルギー源として資化するため、キノヘムプロテイン・アミン脱水素酵素を細胞膜内のペリプラズム画分に誘導生成する。本酵素はαβγのヘテロ三量体サブユニット構造をもち、約60 kDaのa-サブユニットには2分子のヘムcが、約9 kDaのg-サブユニットには構造未知のビルトイン型キノン補酵素が含まれている。触媒反応においては、基質アミンに由来する2電子はキノン補酵素、ヘムcを経由して、アズリンやチトクロムc550などの電子受容体タンパク質に受け渡され、最終的には末端酸化酵素により分子状酸素の水への還元に使われる

RCH2NH3+ H2O→RCHO + NH4+ 2H+ + 2e-

alpha subunit beta subunit gamma subunit

QNDNHの各サブユニットの構造(左からαβγ クリックすると拡大します。)

P. denitrificans由来キノヘムプロテイン・アミン脱水素酵素に含まれるαサブユニットは、互いに独立したフォールディングをもつ4個のドメイン(Ⅰ~Ⅳ)で構成され、おもにα-ヘリックスからなるドメインⅠはドメイン内に擬2回対称軸をもち、2分子のヘムcはシステイン残基とチオエーテル結合でそれぞれドメインⅠに共有結合していた。ドメインⅡ~Ⅳは、いずれも何本かの逆並行b-ストランドで構成されるb-バレル構造をもっている。
40 kDaのβ-サブユニットは、メチルアミン脱水素酵素やメタノール脱水素酵素など他の多くのキノプロテイン脱水素酵素で見られる7枚羽根のβプロペラ構造をもっている。

QHNDH遺伝子は、ゲノム上で少なくとも5つのオープンリーディングフレーム(ORF)から成るオペロン構造を形成している サブユニットはそれぞれORF1、ORF4、ORF3によってコードされている。QHNDHオペロン中には、各サブユニットに対応するORF以外に2つのORFが存在する。ORF5タンパク質は、サチライシン様プロテアーゼであることが配列データベースを相同性検索した結果より判明している。ORF2は、[Fe-S]クラスターやSAM結合モチーフをもつラジカルSAMスーパーファミリーに属するタンパク質と部分的な相同性を示すことが判明している。ラジカルSAMスーパーファミリーに属するタンパク質は、ビオチン合成酵素など、S-アデノシルメチオニンを解裂して生じるアデノシルラジカルを利用して、炭素―硫黄結合の形成反応などの化学的に困難な反応を触媒する酵素である。そのため、Asp、Glu残基のもつ化学的に不活性なメチレン炭素とシステイン残基の硫黄原子の間に結ばれるチオエーテル架橋の形成に働くことが予測されていた。最近の研究によって、ORF2タンパク質が実際に、チオエーテル架橋の形成に働いていることが明らかとなった。さらに、ORF5タンパク質はサチライシン様プロテアーゼであるため、前駆体 サブユニットのN末端プレ配列切断に関与すると考えられている。

QNDNHオペロン

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新規ビルトイン型補酵素 CTQ

CTQ

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最も小さなサイズのγサブユニットは、遺伝子の塩基配列(79及び82残基)中では4個のシステイン残基と5個のトリプトファン残基を含み、1個のシステイン残基(Cys37)と1個のトリプトファン残基(Trp43)が分子内で架橋している。またTrp43のインドール環の6,7-位はオルトキノン型に酸化されており、システイニル-トリプトファンキノン(CTQ)と呼ぶべき構造を発見した。これはQNDNHの補酵素として働き、アミン酸化酵素のトパキノン(TPQ)、メチルアミン脱水素酵素のトリプトファン-トリプトフィルキノン(TTQ)、ペプチジルリシン酸化酵素のリシン-チロシルキノン(LTQ)に次ぐ第4の新規なペプチド・ビルトイン型キノン補酵素であり、メタノール脱水素酵素やグルコース脱水素酵素のピロロキノリンキノン(PQQ)を含めると第5番目に同定されたキノン補酵素である。

CTQの生合成機構

活性型QNDNHの生合成機構は、TAT輸送システムとSec輸送システムによる各サブユニットのペリプラズムへの輸送を含む一連の機構が考えられる。現在この仮説を検証すべく研究を続けている。

予想されるQNDNHの生合成機構

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