当研究室では、物質代謝やエネルギー代謝を担う生体触媒「酵素」の活性部位構造や立体構造、触媒反応機構を明らかにするべく研究を展開しています。特に、銅アミン酸化酵素のトパキノン補酵素をはじめとして、最近相次いで発見されているアミノ酸残基由来の新規な共有結合型補酵素(ビルトイン型補酵素)の構造と触媒機能、タンパク質翻訳後修飾による生合成機構の解明に力を注いでいます。また、細菌の二成分情報伝達系を担うタンパク質の構造解析を行い、活性部位に結合する阻害剤の開発を目指しています。応用面では、バイオナノカプセルを用いる遺伝子導入法やドラッグデリバリー法を開発しています。
ペプチド・ビルトイン型補酵素の一種、トパキノンは前駆体タンパク質中のチロシン残基が銅イオンの存在下で自動的に酸化されて生成する新しいタイプの補酵素です。私たちは、トパキノン補酵素の生成過程を時間分割X線結晶解析により追跡し、活性部位における構造変化の詳細を解明しました。現在では、X線結晶解析や反応速度論的解析を用いて、触媒反応機構の詳細を解明すべく研究を進めています。
キノヘムプロテイン・アミン脱水素酵素に新規なビルトイン型補酵素、システイントリプトフィルキノン(CTQ)を発見しました。CTQは、21世紀になって初めて同定された補酵素で、同時に見つかった分子内チオエーテル架橋構造とともにその生成機構の解明は大変興味深い研究テーマとなっています。
細菌には二成分情報伝達系とよばれるセンシング・遺伝子発現制御システムがあります。細菌増殖やバイオフィルム形成に関与するので、新規な薬剤標的として注目されています。本研究では、これらの立体構造と機能の解明、さらには構造に基づく阻害型薬剤の開発を目指しています。本研究は、近畿大学農学部の内海龍太郎教授との共同研究です。
私たちが最近開発した中空バイオナノ粒子は任意の細胞及び組織に遺伝子や薬剤が導入でき、21世紀の先端医療のひとつとして注目されている遺伝子治療に有効なツールとして大きな期待が寄せられています。最近では、粒子表面に存在するヒト肝臓特異的レセプターを遺伝子工学的に種々の生体認識分子に置換することで、任意の細胞及び組織特異的に遺伝子や薬剤を導入することも可能になりつつあります。また、バイオナノカプセルと細胞膜との融合機構などの基礎的研究も行っています。本研究は、名古屋大学大学院生命農学研究科の黒田俊一教授との共同研究です。
最も構造の単純なアミノ酸であるグリシンはグリシン開裂系とよばれる複合体酵素により分解されます。3種類の酵素(P, T, L)および1種類のタンパク質(H)が複合体を形成し、合計5種類の補酵素が反応に関与する複雑なシステムですが、X線結晶解析によってその構造と反応機構を明らかにしています。