大阪大学 産業科学研究所

contact
home
english
HOME > 活動報告 > 研究成果

研究成果

research activities

服部 梓助教が「第7回 資生堂女性研究者サイエンスグラント」を受賞

服部 梓助教(ナノ機能材料デバイス研究分野)が、2014年資生堂女性研究者サイエンスグラント受賞者(全国の指導的女性研究者トップ10)として選ばれました。この賞は、年齢制限を設けず、研究分野も「自然科学全般」ということで200件を超える応募の中から、物性物理学の分野で大変優秀な研究活動が評価され、将来性が期待できる10名の1人として選出されたものです。産研から初受賞で(大阪大学からは二人目)、受賞研究テーマは、「強相関金属酸化物3次元配列ナノ構造体でのフォトクロミック機能の創出」です。

受賞後、服部助教は「後期博士課程在学中に二人の子供を産んだため、私の研究はいつも子育てと並行しています。時間的なハンディがあるため、自信を喪失したこともありました。でも、研究は楽しいし、家族はいとおしい。色々な経験をするからこそ、イノベーションを創出できると信じて突き進んできました。今回の受賞は、私の研究者としての生き方を評価してもらえたようで、大きな励みになりました。今後も気持ちを強く持って頑張っていこうと思います」と喜びのコメントをいただきました。

写真

Top of Page

世界初! p型およびn型半導体ナノ粒子からなる金属酸化物メソ結晶の合成に成功 ―光触媒や太陽電池などの高効率なエネルギー変換デバイスへの応用に期待

金属酸化物ナノ粒子は、光水分解、環境浄化光触媒、バッテリー、センサー、色素増感型太陽電池などに幅広く用いられています。しかしながら、金属酸化物ナノ粒子は無秩序に凝集しやすく、そのために生じる表面積の低下や界面の不整合が、機能を低下させる一因となっています。この問題を解決するために、金属酸化物ナノ粒子が自己組織化した超構造体である金属酸化物メソ結晶の応用が期待されています。従来の金属酸化物メソ結晶の合成法はいずれも手順が煩雑で合成に時間がかかることや、特定の種類の金属酸化物1種類のみしか合成することができませんでした。様々な金属酸化物メソ結晶を簡便に合成できる一般的合成法を確立することができれば、これまで成し遂げられていない複数の金属酸化物、または合金酸化物からなるメソ結晶の開発への糸口が得られるとともに、個々の物質の有する物理的・化学的特徴を生かした応用展開が期待されます。

立川貴士助教、真嶋哲朗教授らは、1種類もしくは2種類の金属酸化物ナノ粒子からなる金属酸化物メソ結晶を簡便に合成できる方法の開発に世界で初めて成功しました。また、p型およびn型半導体の特性を示す金属酸化物ナノ粒子からなるメソ結晶では、粒子間で非常に高効率な光誘起電荷移動反応が起こることを、単一粒子蛍光分光法や時間分解拡散反射法などの実験によって明らかにしました。その一例として、図1は酸化亜鉛-酸化銅メソ結晶の合成とその性質を示します。これらの研究により、これまで成し遂げられていなかった複数の金属酸化物、または合金酸化物からなるメソ結晶の開発への糸口が得られたことに加え、開発されたメソ結晶を用いることで光触媒や太陽電池などのエネルギー変換デバイスの更なる高効率化が期待されます。

本研究成果は、2014年1月22日(日本時間19時)に英国Nature Publishing GroupのNature Communicationsのオンライン速報版で公開されました。

図
図1: (a)ZnO-CuOメソ結晶の形成過程.ナノ粒子が自己組織化によって集合し,中間体結晶を形成する.焼結によってトポタクティック転移が起こり,金属酸化物メソ結晶となる. (b) 角度散乱暗視野走査型透過電子顕微鏡によるエネルギー分散X線分析(HAADF-STEM-EDX)法によって得られたZnO-CuOメソ結晶断面の元素分布像.赤色はCu,緑色はZn. (c) 単一粒子蛍光分光法によって観測された発光スペクトル.従来型のナノ複合体と比べ,ZnO-CuOメソ結晶の発光は電荷移動によって著しく消光されている.ZnOはn型半導体, CuOはp型半導体.

Top of Page

プラズモニック光触媒の高効率化に成功

化学的に安定で高活性なアナターゼ二酸化チタン(TiO2)は、環境浄化を目的とした光触媒や色素増感型太陽電池の電極材料などに幅広く利用されています。一方、TiO2は紫外光しか吸収することができないため、室内光や太陽光の大部分を占める可視光を有効利用できる光触媒の開発が重要な課題です。

立川助教、真嶋教授らのグループは、ナノメートルサイズのTiO2微粒子が高密度かつ規則的に集積した多孔性の超構造体であるTiO2メソ結晶に金(Au)ナノ粒子を担持することで、可視光照射下でも高い活性を示すプラズモニック光触媒を開発することに成功しました。開発したAuナノ粒子担持TiO2メソ結晶は、同様にAuナノ粒子を担持させたTiO2ナノ粒子と比べ、有機物の分解反応において一桁以上高い光触媒活性を示すことがわかりました(図1)。これは、Auナノ粒子のプラズモン共鳴帯を可視光で励起することによってTiO2との界面で電荷分離が起こり、生じた電子がメソ結晶内部の粒子間を効率よく移動し、酸素分子や基質分子と反応できることに起因しています。一方、従来のナノ粒子系では電子が速やかにAuナノ粒子に戻ってしまうため反応効率が著しく低下してしまいます。貴金属ナノ粒子の表面プラズモンは組成やサイズ、形状を変えることで容易に共鳴波長を変化させることができるため、今後、近赤外光も有効利用できる光触媒の開発が期待されます。

本研究の内容は米国化学会誌に掲載され(12/18, web)、日刊工業新聞でも紹介されました。(12/26)

図
図1: (a) Auナノ粒子担持TiO2メソ結晶の透過型電子顕微鏡像.黒い点がAuナノ粒子.(b) 可視光照射下におけるメチレンブルーの分解過程.(c) 電子移動のメカニズム.h+ は正孔,e は電子を示す.

Top of Page

原子・分子ワイヤーの熱電性能評価用ナノデバイスを開発

大阪大学産業科学研究所バイオナノテクノロジー研究分野の筒井真楠准教授と谷口正輝教授は、マイクロヒータと機械的破断接合を組み合わせたデバイスを開発し、これを用いて金原子ワイヤーにおける熱起電力の量子化現象を室温下で観測することに成功しました。

熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換することができる熱電デバイスは、ひとつの理想的なグリーンデバイスとしてその広い産業応用が期待されています。熱電デバイスが抱える大きな課題は、十分に高いエネルギー変換効率を与える優れた熱電特性を持つ材料の開発です。原子・分子ワイヤーは、量子閉じ込め効果を反映したユニークな電子構造を持つナノ構造材料であり、その特徴を活かすことで、バルク材料では達成することが難しい高い熱電性能を実現できることが理論的に示されています。一方、プローブ顕微鏡等を用いたこれまでの手法では、原子・分子ワイヤー構造を安定に保持することができず、そこに生じる微小な熱起電力を精度良く検出することが困難であった。そこで当方では、微細加工プロセスにより作製した金属ナノブリッジを機械的に破断させる方法を応用し、更にマイクロヒータによる熱制御を取り入れることで、原子・分子ワイヤーの熱電性能評価に応用できるナノデバイスを開発した。

このデバイスを用いると、原子・分子ワイヤーを長い時間安定に保持することができ、その電気伝導度と熱起電力の同時測定を通して、金原子ワイヤーに現れる熱起電力の量子化現象を室温下で観測することができました。

本研究成果は、戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)若手ICT研究者等育成型研究開発の委託研究に基づくものです。研究成果は、2013年11月25日(英国時間、日本時間:11月25日)にネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)「Scientific Reports」のオンライン速報版で公開されました。

温度勾配が与えられた原子ワイヤーの模式図
図1: 温度勾配が与えられた原子ワイヤーの模式図

Top of Page

原子の集団振動で電子が散乱する現象の直接観察に成功
超伝導物質・超高速デバイスなどの新機能材料開発に貢献

大阪大学産業科学研究所の田中慎一郎准教授と大阪大学生命機能研究科の木村真一教授、自然科学研究機構分子科学研究所の松波雅治助教の研究グループは、鉛筆の材料で知られる黒鉛(グラファイト)1) の中を運動する電子が、原子の特定の集団振動(フォノン)2)によって散乱される現象を角度分解光電子分光3) を用いて観測することに世界で初めて成功しました。今回の発見は、超伝導や電気抵抗などの固体の性質を支配する要因の一つとして知られる伝導電子と原子の集団振動の相互作用による散乱(電子格子相互作用)4)を散乱される方向(運動量)まで分解して観測できる道を開いたものであり、将来的には超伝導物質・超高速デバイスなどの新機能材料の開発に役立つと考えられます。詳細は10月23日(英国現地時間10:00)に英国ネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)の「Scientific Reports」(オンライン版)で公開されました。

なお、本研究は科学研究費補助金基盤研究(C)(23540366 および25400326)の補助を受けました。また、分子科学研究所UVSOR施設利用研究の研究課題の一環として実施されました。

グラファイト中の電子と原子の集団振動(フォノン)の相互作用(散乱)。赤丸は炭素原子であり、黒鉛中では六角形の2次元的な構造を作っている。
図1: グラファイト中の電子と原子の集団振動(フォノン)の相互作用(散乱)。赤丸は炭素原子であり、黒鉛中では六角形の2次元的な構造を作っている。

グラファイトからの角度分解光電子分光
図2: グラファイトからの角度分解光電子分光

(a):光電子強度の励起光および電子のエネルギー依存性
(b):スペクトルの拡大図
(c): (b)の微分スペクトル。(b)の階段型構造がピーク構造になり分かりやすい。
(d,e):微分スペクトルの運動量依存性。散乱に関与したフォノンの分散を示している。

Top of Page

SiC半導体を光で瞬時に常温接合することに成功
従来の360倍の速さで接合処理が可能に

大阪大学産業科学研究所先端実装材料研究分野の菅沼克昭教授らは、ワイドギャップパワー半導体(WBG)であるSiCダイ(単結晶SiCウエハ)の光照射による常温接合に成功しました(写真1)。従来は、高温で、1時間近くを要していたこの処理が、常温で、10秒程度で完結することになり、スマート社会を実現する全てのエネルギー変換機器への応用が期待されます。

SiCパワー半導体は、省エネルギー技術の切り札として期待されていますが、ようやく市場に登場したものの、特性を最大限に引き出すための実装技術や材料が無く、現状製品では機器の小型化に貢献するに留まっています。これを打開するために、菅沼教授は7月に「新世代パワー半導体実装技術コンソーシアム(WBG実装コンソーシアム)」を立ち上げましたが、既にメンバーは国内ばかりでなく海外にも広がり、SiC実装技術開発の重要性が確認されます。

SiC実装技術の中で、半導体デバイスを放熱基板へ接続するダイアタッチ技術は最もハードルが高く、エネルギー変換の高効率化の鍵を握る技術ですが、その課題の一つが接合の高い温度と接合に要する時間にありました。つまり、従来技術では300℃以上の高温で数十分から2時間近くの長い時間をかけて接合するために、SiCダイにかかる負荷歪みが大きく、デバイスに欠陥が生じ動作不良を起こします。これを解決する技術が、今回の常温接合技術になります。接合処理は、強い光を照射するだけで、数秒で処理が終了します。図1に、接合技術のメカニズムを示します。加熱炉を全く用いず、キセノンランプの強力な光を接合面層に数秒間照射し、局所的な界面活性化を引き起こして強固に接合する技術です。

本技術は、透明な材料の大面積接合に幅広く使えますので、ダイアタッチではSiCばかりでなく、もう一つのワイドギャップ半導体であるGaN、あるいは、将来に実用が期待されるダイヤモンドにも本技術を用いることが出来ます。

なお、本技術は、文科省科研費基盤研究(S)の補助により開発しました。

光常温接合したSiCダイ
図1: 光常温接合したSiCダイ

光常温接合のメカニズム
図2: 光常温接合のメカニズム

Top of Page

単純な金属を磁気センサーに応用できる新メカニズムの発見
350倍もの磁気抵抗効果を実現し、新たなデバイス作成への道筋を明らかに

首都大学東京(以下、「首都大」)、京都大学(以下、「京大」)、大阪市立大学(以下、「大阪市大」)、大阪大学(以下、「阪大」)、広島大学(以下、「広大」)の研究チームは、非磁性の単純金属であるパラジウム-コバルト酸化物(図参照)の磁場による電気抵抗の変化(磁気抵抗効果)を測定し、巨大な磁気抵抗効果が現れることを発見しました。磁場がゼロのときと比べ、磁場中では電気抵抗が最大で350倍にまで増加しました。大きな磁気抵抗効果を示す例として、コンピューターのハードディスクなどからの情報の読み出しに使われている磁性体多層膜が知られており、その原理の発見は2007年のノーベル物理学賞にも選ばれました。本成果で発見された新しい磁気抵抗効果は、この磁性体多層膜での抵抗変化にも匹敵する大きさです。パラジウム-コバルト酸化物は、伝導電子を豊富に持ち磁気的な性質は持たないなど、多くの意味で「普通」の導電体ですが、このような単純な金属で数百倍もの巨大な磁気抵抗効果が現れるのは驚くべきことです。また、この磁気抵抗効果の起源をコンピューターシミュレーションにより明らかにすることにも成功しました。その結果、単純な金属でも幾つかの条件を満たせば巨大な磁気抵抗効果を示しうるという、これまで見落とされてきた事実が明らかになりました。

この発見は電気伝導現象の基礎学術研究の上で大変興味深い成果です。それだけでなく、この発見は、単純金属でも磁気センサーに応用できる可能性を初めて示したものであると言えます。

この成果は、アメリカ物理学会が発行する英文誌Physical Review Lettersの111巻5号(2013年8月2日発行)に掲載予定です。また、編集者の推薦論文(Editors’Suggestion)に選ばれ、アメリカ物理学会が注目論文を紹介するPhysics誌に解説記事が掲載されます。

多剤排出タンパク質の阻害剤結合構造決定に初めて成功
図: PdCoO2の結晶構造。パラジウム(Pd)の電気伝導層とコバルト-酸素から成る絶縁性のブロック層(CoO2)が交互に積層することで二次元的な電子状態が実現しています。

Top of Page

多剤排出タンパク質の阻害剤結合構造決定に初めて成功
大きな社会問題となっている多剤耐性菌感染症克服に手がかり

大阪大学産業科学研究所の生体防御学研究分野中島良介特任准教授、山口明人特任教授らは、独立行政法人 科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業CRESTおよび独立行政法人 医薬基盤研究所の保健医療分野における基礎研究推進事業の一環として、緑膿菌および大腸菌の主な多剤排出タンパク質の阻害剤との結合構造の決定に初めて成功しました。多剤排出タンパク質とその阻害剤の選択的な結合構造を明らかにすることによって、社会的に大きな問題となっている多剤耐性緑膿菌感染症を克服するため治療薬開発に道を開きました。

細菌が薬物に対する耐性を獲得する主な原因である多剤(異物)排出タンパク質は生物の細胞膜上に広く存在し、細胞の生体防御を担うもっとも基礎的な装置ですが、病原細菌などの細胞膜上にこのタンパク質が増えてしまうと、抗生物質などの薬剤が細胞外に排出され、多剤耐性を引き起こします。これまでに、多剤排出タンパク質の阻害剤開発に多くの努力が傾けられましたが、未だに臨床的に有効な阻害剤が得られていません。大腸菌の多剤排出タンパク質AcrBを阻害するピリドピリミジン誘導体ABI-PPは、緑膿菌の多剤排出タンパク質MexBの特異的阻害剤ですが、多剤耐性緑膿菌のもう一つの有力な原因である多剤排出タンパク質MexYを全く阻害できないため、多剤耐性緑膿菌感染症の治療薬として使用できませんでした。

本研究により、多剤排出タンパク質の阻害剤結合部位の構造を元に、AcrB, MexBのみならずMexYにも広く阻害する多剤耐性感染症治療薬をタンパク質立体構造情報に基づく薬剤設計SBDD(Structure-Based Drug Design)の手法によって分子設計する道が開かれ多剤耐性緑膿菌感染症に有効な初めての治療薬の開発が期待されます。

本研究成果は、2013年6月30日(英国時間)に米国科学誌「Nature」のオンライン速報版で公開されました。

多剤排出タンパク質の阻害剤結合構造決定に初めて成功
【図の説明】 図左はMexB3量体の主鎖ストリングモデル。緑、青、赤はそれぞれ待機、結合、排出モノマー。構造中に見える橙色の網目は結合している阻害剤ABI-PP由来の電子雲。図右はABI-PP結合部位の拡大図。タンパク質は表面構造カットモデル。ABI-PPがスティックモデルで表示されている。黒は切断面。赤と白で見えているのは分子内チャネルの表面。赤は疎水的、白は親水的な表面。中央を左右に基質透過チャネルがあり、その途中に疎水性の狭い溝がある。ABI-PPは分子の一部がその狭い溝にすっぽりとはまり込み、親水性の部分を透過チャネルの方に突き出している。

Top of Page

多剤排出タンパク質の発現にブレーキを掛ける機構を解明!
—細菌の抗菌薬抵抗性制御への戦略的治療へ光—

大阪大学産業科学研究所感染制御学研究分野の西野邦彦准教授らは、病原細菌サルモネラが抗菌性物質を感知して多剤耐性化の原因となる多剤排出蛋白質の発現抑制を解除するメカニズムを明らかにしました。サルモネラは代表的食中毒菌であり、食中毒は大型の事例が多く、様々な施設等で多発しています。特に近年、サルモネラでは複数の抗菌薬に耐性の「多剤耐性化」が問題となっています。

今回、サルモネラの多剤排出蛋白質の発現にブレーキをかける抑制蛋白質(リプレッサー)がデカリニウムをはじめとした5つの抗菌性物質を感知して、その抑制を解除するメカニズムを明らかにしました。本研究では、サルモネラ多剤排出蛋白質ブレーキ役のリプレッサー蛋白質と抗菌性物質との共結晶構造決定に世界で初めて成功し、細菌の抗菌薬抵抗性制御の新たなメカニズムを明らかにしました。本成果は、多剤耐性菌感染症克服にも役立てられると期待されます。

本研究成果は英国Nature Publishing Groupの「Nature Communications」のオンライン速報版で6月26日(英国時間10時、日本時間18時)に公開されました。本研究は最先端・次世代研究開発支援プログラム「薬剤排出ポンプによる細菌多剤耐性化・病原性発現制御機構の解明と新規治療法開発」(研究代表者:西野邦彦准教授、研究期間:平成23年2月〜現在)の助成によりなされたものです。

論文タイトル: The crystal structure of multidrug-resistance regulator RamR with multiple drugs(多剤耐性制御因子RamRと複数の薬剤との共結晶構造)

著者: Yamasaki S., Nikaido E., Nakashima R., Sakurai K., Fujiwara D., Fujii I. and Nishino K. 山崎優1、二階堂英司1、中島良介1、櫻井啓介1、藤原大佑2、藤井郁雄2、西野邦彦1

1大阪大学産業科学研究所、2大阪府立大学大学院理学系研究科)

多剤排出タンパク質の発現にブレーキを掛ける機構を解明!
図1:薬剤結合型と非結合型のRamRタンパク質構造比較
抗菌薬抵抗性制御のブレーキ役を担うRamRタンパク質は、DNA結合ドメインと抗菌性物質認識ドメインから構成されている. 抗菌薬性物質が結合すると、構造が変化してブレーキが解除される.

Top of Page

触媒活性中の金ナノ粒子の原子スケール微小運動を観測

大阪大学産業科学研究所ナノ構造・機能評価研究分野の竹田研究室では、レンズの球面収差が補正できる高空間分解能の環境制御型・透過電子顕微鏡(ETEM)を利用して、化学反応を促進している活性中の金ナノ粒子が担体(セリア)の上で断続的にステップ的な平行移動と回転をすることを見いだしました。この予期しなかった運動の変位は小さく(0.1nm以下)、これまでのETEMでは空間分解能が不足して観察することは不可能でした。

この観察結果は、金ナノ粒子が担体である金属酸化物(セリア、CeO2)の上に緩やかに接合しており、そのためにETEM観察中に運動できた、と説明されました。つまり、担体の表面はほとんど酸素原子で覆われていますが、そのごく一部に酸素原子のいない場所(表面酸素空格子点)が残っていて、この場所で担体側の金属(セリウム、Ce)原子に金原子が直接結合することで、あたかも金ナノ粒子全体が担体に錨を下ろしたように緩やかに固定されていると結論されました。

金ナノ粒子が触媒となるメカニズムを電子論的に解明する上でも必須の実験データが得られたと考えています。

この研究成果は、米国化学会発行のNano Letters誌オンライン版で2013年6月 20日に公開されました。

触媒活性中の金ナノ粒子の原子スケール微小運動を観測

Top of Page

次世代の半導体製造の速度を10倍以上にする技術を確立
極端紫外線(EUV)リソグラフィの実現へ大きな一歩

大阪大学産業科学研究所ナノ極限ファブリケーション研究分野の田川精一招へい教授、大島明博招へい准教授らの研究グループは最先端の半導体デバイス製造のスループット(1時間あたりの半導体ウエハーの処理枚数)を10倍以上向上させる技術を開発しました。次世代の最先端の半導体デバイスの製造のためのリソグラフィ技術の本命として開発が進められている1台100億円と言われる極端紫外線(Extreme Ultra Violet:EUV)リソグラフィの露光装置では、露光光源のパワーが低いため、スループットが目標の10分の1程度と低いことが最大の課題でした。本CRESTチームのメンバーが体系化し、現在、世界中のレジストメーカーが開発の指針としている標準的な反応理論に基づいたレジストの高感度化は、ほぼ限界に近づいており、10分の1程度と低い露光パワーでは目標のスループットに到達できないので、現在、光源開発を待つ状態が続いています。本研究では基本に立ち返って、露光プロセスと感光性樹脂(レジスト)の両方を同時に根本的に変革し、前述の標準的な反応理論に縛られない、10分の1程度の低いパワーのEUV露光でもレジストの反応性を高めて目標のスループットに到達できる新しい技術体系を開発しました。

これにより、長年に渡って、産業界が望んでいた次世代のリソグラフィ技術の本命であるEUVリソグラフィの早期の実用化が実現することになります。

本成果の(独)科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)「極微細加工用レジスト研究とプロセスシミュレーターの開発(平成19~24年度)」(研究総括:渡辺 久恒、研究代表者:田川 精一)によって得られました。

新露光システム EUVパターン露光・光全面露光よる革新的プロセスのシステム
図1: 新露光システム EUVパターン露光・光全面露光よる革新的プロセスのシステム

通常プロセスと新プロセスとの比較の簡略図
図2: 通常プロセスと新プロセスとの比較の簡略図

Top of Page

2つの絶縁体間の界面に生じる金属層の電子構造を解明
-究極の省エネ ナノデバイスへの応用に期待-

大阪大学産業科学研究所の菅滋正特任教授、大学院基礎工学研究科の関山明教授、藤原秀紀助教、甲南大学の山崎篤志准教授らのグループは、ドイツビュルツブルグ大学のClaessen教授、Sing博士、日本原子力研究開発機構の斎藤祐児副主任研究員らとの共同研究で、同機構が大型放射光施設SPring-8 のBL23SUに有する世界トップクラスの軟X線角度分解光電子分光装置を駆使して、2つの絶縁体の間の界面にだけ生じる数原子層以下の極薄の金属層の電子状態の詳細を解明するのに世界で初めて成功しました。このような2次元伝導電子状態は両側を絶縁体で保護されるために極めて安定であると考えられますが、作成法を制御することで界面超伝導状態や、界面磁性も誘起できます。本研究ではナノテクノロジ-として大きく期待されながらも従来の手法では両側の物質の間に埋もれて観測が難しかった新規な超薄膜2次元伝導物質のもっとも基本となる電子状態を最先端計測法で解明したと言う意味で注目を集めています

研究成果は6月17日(米国時間)に米国科学雑誌『Physical Review Letters』のオンライン版に掲載される予定です。

図
図1:2次元金属電子状態を作る電子(Fermi準位のエネルギーを持つ)が運動量空間のどこに存在するかを本研究実験から求めた結果

Top of Page

単一分子観察用の高感度水溶性蛍光プローブの開発と
酸化チタン光触媒反応の超高解像マッピング

大阪大学産業科学研究所励起分子化学研究分野の真嶋哲朗教授、立川貴士助教らは、単一分子観察用の高感度水溶性レドックス応答蛍光プローブを開発し、単一分子蛍光顕微鏡を使い、水溶液中の酸化チタン光触媒反応の起こる位置を10ナノメートル程度の空間分解能で超高解像マッピングすることに世界で初めて成功しました。

本研究では、我々が以前開発したレドックス応答蛍光プローブである3,4-dinitrophenyl-BODIPY(DN-BODIPY)にスルホン酸を修飾した水溶性DS-DN-BODIPYを新たに開発しました(図1)。DS-DN-BODIPYを用いて酸化チタン光触媒による還元反応を単一分子蛍光顕微鏡により観測した結果、従来のプローブと比べて一桁以上感度が高く、10ナノモル濃度という非常に低い濃度でも光触媒反応を単一分子レベルで観測できることがわかりました。また、生成物であるDS-HN-BODIPYの単一分子蛍光像を解析することで、光の回折限界(数百ナノメートル)を超える10ナノメートル程度の空間分解能で反応サイトの位置を決定することに成功しました。この技術を用いることで、光触媒還元反応は酸化チタンナノ粒子の全体でほぼ均一に起こることが明らかになりました(図2)。さらに、可視光用光触媒として近年注目されている金ナノ粒子担持酸化チタンナノ粒子についても同様の実験を行い、反応サイトが金ナノ粒子近傍の酸化チタン上に局在化していることを見出しました。この結果は、金ナノ粒子の有する表面プラズモンが酸化チタン光触媒反応を促進することを裏付ける実験的証拠として、反応機構の解明や高機能光触媒の設計開発に大きく貢献すると期待されます。

研究成果は、アメリカ化学会のACS Nanoに掲載されACS Nano, 7(1), 263-275 (2013) 、5月22日の日刊工業新聞に紹介されました。

水溶性レドックス応答蛍光プローブDS-DN-BODIPYの反応機構と単一分子蛍光像
図1:水溶性レドックス応答蛍光プローブDS-DN-BODIPYの反応機構と単一分子蛍光像

単一酸化チタンナノ粒子上における反応サイトの空間分布
図2:単一酸化チタンナノ粒子上における反応サイトの空間分布

Top of Page

光と電気の同時計測で、1個のマイクロ粒子の流動ダイナミクスを解明

大阪大学産業科学研究所の谷口正輝研究室は、顕微鏡による1個のナノ粒子の蛍光観察と、ナノ流路内を流れるイオン電流変化の同時計測により、微小流路内を流れる1個のナノ粒子の流動ダイナミクスを解明することに成功しました。

ナノ流路やナノ細孔は、赤血球、白血球、ウイルス等を、イオン電流変化で検出するデバイスとして実用化されているものもあるナノデバイスです。これらのデバイスでは、ナノ流路やナノ細孔に検出物が入ると、検出物に応じてイオン電流が変化します。この原理を使うと、100KHz以上の高速で1個の検出物が識別され、その流動ダイナミクスが推定されますが、統計的なイオン電流変化を基準に判断されるため、真に1個の検出物を識別している直接的な証拠は与えられません。一方、ナノ流路やナノ細孔の中を流動する検出物の個数と流動ダイナミクスは、顕微鏡で観察されますが、広域な観察は100Hz以上の高速で行えません。そこで、電気計測と光計測を組み合わせることで、1個の検出物の識別と流動ダイナミクスの高速検出を実現しました。

開発した同時計測法を用いると、統計的に得られるイオン電流変化が、確かに1個のマイクロ粒子のイオン電流変化であることが実証され、さらに、イオン電流変化では予測出来なかった複雑な微粒子の流動ダイナミクスが明らかにできました。

本研究成果は、本学基礎工学研究科の川野研究室と最先端研究開発支援プロジェクトの川合特任教授グループとの共同研究によるものです。

研究成果は、2013年5月20日(英国時間、日本時間:5月20日)にネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)「Scientific Reports」のオンライン速報版で公開されました。

1個の粒子の流動ダイナミクスを調べる光と電気の同時測定の原理図
図. 1個の粒子の流動ダイナミクスを調べる光と電気の同時測定の原理図

Top of Page

2回らせんの右巻き・左巻きの選択機構の解明とその制御に成功
左右変換可能なキラル材料、 医薬品の開発へ

大阪大学産業科学研究所の宮田幹二招へい教授、 同大学院工学研究科の藤内謙光准教授・久木一朗助教らの研究グループは共同で、キラルなアミンとアキラルなカルボン酸から成る数多くの有機塩結晶の単結晶X線構造解析を通して、結晶中の水素結合2回らせんの右巻きと左巻きの選択機構を解明し、その制御に成功しました。このようならせんの左右の制御は医薬品の開発だけでなく、円偏光を利用した3Dディスプレイなどの光学デバイスへの応用が期待されます。

本研究成果は2013年4月30日(ロンドン時間)に英国Nature Publishing GroupのNature Communicationsのオンライン速報版で公開されました。

(a)超分子傾斜キラリティー法と(b)アキラル成分によるらせんの左右の制御
(a)超分子傾斜キラリティー法と
(b)アキラル成分によるらせんの左右の制御

Top of Page

折り紙エレクトロニクス
-ナノペーパーとナノワイヤを用いて軽量ウエアラブルコンピュータに光-

大阪大学産業科学研究所 能木雅也准教授らの研究グループは、折り畳んでも電気を流し続ける「導電性折り紙」を開発しました。この折り紙は、セルロースナノペーパーと銀ナノワイヤからできており、複雑に折り畳んでも導電性が失われません。そこで、導電性折り紙を折り畳んだ「折り鶴」を導線として使用すれば、LEDライトを点灯することができます(左図)。この材料は “折り紙エレクトロニクス”という新しい概念を切り拓き、ウェアラブルなコンピュータやメディカルセンサーなどを実現するでしょう。その端緒として、私達は折り畳み可能な高感度ペーパーアンテナの開発に世界で初めて成功しました(右図)。

この研究成果は、英国国立化学協会(RSC:Royal Society of Chemistry)の発行する学術雑誌Nanoscaleへの掲載が決定されています。そして、特筆すべき研究成果の一つに選ばれ、5月1日に英国国立化学協会からweekly RSC Publishing press packとして世界中の科学ジャーナリストへ配信されました。

導電性折り鶴によるLEDライトの点灯
左:導電性折り鶴によるLEDライトの点灯

折り畳んでも高いアンテナ特性を保持するペーパーアンテナ
右:折り畳んでも高いアンテナ特性を保持するペーパーアンテナ

Top of Page

大阪大学発バイオベンチャー企業:クオンタムバイオシステムズ株式会社設立
-世界に挑戦する国内唯一の1分子DNA・RNAシークエンサー開発企業-

DNAの塩基配列を解読するDNAシークエンサーは、生命科学や医科学など最先端の基礎科学研究には必須の装置であり、その急速な技術発展は、同分野に革命的なインパクトを与え続けています。一方で、今後、遺伝子に基づくがん診断や創薬などの臨床応用を実現するためには、さらに安価で、高速で、精度良く遺伝子を解読する技術が必要で、全世界の著名大学、大企業および約40社のベンチャー企業が、新しい原理に基づくDNAシークエンサーの熾烈な研究開発を展開しています。このような技術革新と用途拡大によりDNAシークエンサーの市場は、年率約20%で拡大している急成長市場であり、また、次世代のシークエンサーデバイスは、半導体応用技術製造されるため、最先端の半導体技術を用いた新たな市場の創出としても非常に注目されています。

大阪大学では、川合特任教授率いる最先端研究開発支援プロジェクト(FIRSTプロジェクト)において、第4世代DNA・RNAシークエンサーの開発が行われてきました。開発するシークエンサーは、これまでのシークエンサーとは異なる革新的な動作原理を持っており、究極の原理に基づくシークエンサーと期待されておりましたが、昨年、プロジェクトチームは、同原理の実証に成功し、実用化への道を切開きました。この研究成果は、世界のDNAシークエンサーを開発する研究者・技術者から注目されています。FIRSTプロジェクトでは、同研究成果の早期社会還元を実現するために、大阪大学新産業創出協働ユニットの第一号支援を得て、大阪大学発バイオベンチャー企業:クオンタムバイオシステムズ(Quantum Biosystems)株式会社を設立いたしました。

クオンタムバイオシステムズ社は、ベンチャーキャピタル、事業会社から資金調達を順調に進めており、国内では唯一、第4世代DNA・RNAシークエンサーの実用化を目指します。経営陣は、代表取締役兼最高経営責任者に本蔵俊彦、取締役兼最高技術責任者に本学教授谷口正輝であり、本学川合知二特任教授は、最高科学顧問に就任します。本内容は、日本経済新聞5月1日朝刊で紹介されました。

世界に挑戦する国内唯一の1分子DNA・RNAシークエンサー
【図1】 世界に挑戦する国内唯一の1分子DNA・RNAシークエンサー

Top of Page

「大きさで決まる消えないメモリ動作」の謎を解明
超低消費電力不揮発性メモリへ期待!

大阪大学産業科学研究所の柳田剛准教授・長島一樹特任助教らは、次世代高密度不揮発性メモリとして最も有望視されている電気抵抗変化現象(ReRAM、メモリスタ)において長年の謎であった電界極性依存性が素子の大きさにより決定されている原理を初めて見出しました。この指導原理は、自己組織化的に形成される10ナノメータ程度のナノワイヤを用いたメモリ素子と微細加工技術により構築された素子をシステム融合することにより初めて明らかにされました。

本研究成果により、現在世界中で激しい研究開発競争が行われているReRAM・メモリスタ素子においてより信頼性の高いデバイス設計が可能となり、更に極微な超低消費電力型の集積不揮発性メモリ素子や新しい論理演算素子(メモリスタ)を活用した省エネ科学技術・グリーンナノテクノロジーへの波及効果が期待されます。

研究成果は、2013年4月15日(英国時間、日本時間:4月15日)にネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)「Scientific Reports」のオンライン速報版で公開されました。

本研究は、最先端・次世代研究開発支援プログラムにより、助成を受けたものです。

大きさで決まる消えないメモリ動作の仕組み
【図1】 大きさで決まる消えないメモリ動作の仕組み

Top of Page

アーカイブ
2016年度
2015年度
2014年度
2013年度
2012年度
2011年度

大阪大学 産業科学研究所

contact home english
HOME > 活動報告 > 研究成果

研究成果

research activities

服部 梓助教が「第7回 資生堂女性研究者サイエンスグラント」を受賞

服部 梓助教(ナノ機能材料デバイス研究分野)が、2014年資生堂女性研究者サイエンスグラント受賞者(全国の指導的女性研究者トップ10)として選ばれました。この賞は、年齢制限を設けず、研究分野も「自然科学全般」ということで200件を超える応募の中から、物性物理学の分野で大変優秀な研究活動が評価され、将来性が期待できる10名の1人として選出されたものです。産研から初受賞で(大阪大学からは二人目)、受賞研究テーマは、「強相関金属酸化物3次元配列ナノ構造体でのフォトクロミック機能の創出」です。

受賞後、服部助教は「後期博士課程在学中に二人の子供を産んだため、私の研究はいつも子育てと並行しています。時間的なハンディがあるため、自信を喪失したこともありました。でも、研究は楽しいし、家族はいとおしい。色々な経験をするからこそ、イノベーションを創出できると信じて突き進んできました。今回の受賞は、私の研究者としての生き方を評価してもらえたようで、大きな励みになりました。今後も気持ちを強く持って頑張っていこうと思います」と喜びのコメントをいただきました。

写真

Top of Page

世界初! p型およびn型半導体ナノ粒子からなる金属酸化物メソ結晶の合成に成功 ―光触媒や太陽電池などの高効率なエネルギー変換デバイスへの応用に期待

金属酸化物ナノ粒子は、光水分解、環境浄化光触媒、バッテリー、センサー、色素増感型太陽電池などに幅広く用いられています。しかしながら、金属酸化物ナノ粒子は無秩序に凝集しやすく、そのために生じる表面積の低下や界面の不整合が、機能を低下させる一因となっています。この問題を解決するために、金属酸化物ナノ粒子が自己組織化した超構造体である金属酸化物メソ結晶の応用が期待されています。従来の金属酸化物メソ結晶の合成法はいずれも手順が煩雑で合成に時間がかかることや、特定の種類の金属酸化物1種類のみしか合成することができませんでした。様々な金属酸化物メソ結晶を簡便に合成できる一般的合成法を確立することができれば、これまで成し遂げられていない複数の金属酸化物、または合金酸化物からなるメソ結晶の開発への糸口が得られるとともに、個々の物質の有する物理的・化学的特徴を生かした応用展開が期待されます。

立川貴士助教、真嶋哲朗教授らは、1種類もしくは2種類の金属酸化物ナノ粒子からなる金属酸化物メソ結晶を簡便に合成できる方法の開発に世界で初めて成功しました。また、p型およびn型半導体の特性を示す金属酸化物ナノ粒子からなるメソ結晶では、粒子間で非常に高効率な光誘起電荷移動反応が起こることを、単一粒子蛍光分光法や時間分解拡散反射法などの実験によって明らかにしました。その一例として、図1は酸化亜鉛-酸化銅メソ結晶の合成とその性質を示します。これらの研究により、これまで成し遂げられていなかった複数の金属酸化物、または合金酸化物からなるメソ結晶の開発への糸口が得られたことに加え、開発されたメソ結晶を用いることで光触媒や太陽電池などのエネルギー変換デバイスの更なる高効率化が期待されます。

本研究成果は、2014年1月22日(日本時間19時)に英国Nature Publishing GroupのNature Communicationsのオンライン速報版で公開されました。

図
図1: (a)ZnO-CuOメソ結晶の形成過程.ナノ粒子が自己組織化によって集合し,中間体結晶を形成する.焼結によってトポタクティック転移が起こり,金属酸化物メソ結晶となる. (b) 角度散乱暗視野走査型透過電子顕微鏡によるエネルギー分散X線分析(HAADF-STEM-EDX)法によって得られたZnO-CuOメソ結晶断面の元素分布像.赤色はCu,緑色はZn. (c) 単一粒子蛍光分光法によって観測された発光スペクトル.従来型のナノ複合体と比べ,ZnO-CuOメソ結晶の発光は電荷移動によって著しく消光されている.ZnOはn型半導体, CuOはp型半導体.

Top of Page

プラズモニック光触媒の高効率化に成功

化学的に安定で高活性なアナターゼ二酸化チタン(TiO2)は、環境浄化を目的とした光触媒や色素増感型太陽電池の電極材料などに幅広く利用されています。一方、TiO2は紫外光しか吸収することができないため、室内光や太陽光の大部分を占める可視光を有効利用できる光触媒の開発が重要な課題です。

立川助教、真嶋教授らのグループは、ナノメートルサイズのTiO2微粒子が高密度かつ規則的に集積した多孔性の超構造体であるTiO2メソ結晶に金(Au)ナノ粒子を担持することで、可視光照射下でも高い活性を示すプラズモニック光触媒を開発することに成功しました。開発したAuナノ粒子担持TiO2メソ結晶は、同様にAuナノ粒子を担持させたTiO2ナノ粒子と比べ、有機物の分解反応において一桁以上高い光触媒活性を示すことがわかりました(図1)。これは、Auナノ粒子のプラズモン共鳴帯を可視光で励起することによってTiO2との界面で電荷分離が起こり、生じた電子がメソ結晶内部の粒子間を効率よく移動し、酸素分子や基質分子と反応できることに起因しています。一方、従来のナノ粒子系では電子が速やかにAuナノ粒子に戻ってしまうため反応効率が著しく低下してしまいます。貴金属ナノ粒子の表面プラズモンは組成やサイズ、形状を変えることで容易に共鳴波長を変化させることができるため、今後、近赤外光も有効利用できる光触媒の開発が期待されます。

本研究の内容は米国化学会誌に掲載され(12/18, web)、日刊工業新聞でも紹介されました。(12/26)

図
図1: (a) Auナノ粒子担持TiO2メソ結晶の透過型電子顕微鏡像.黒い点がAuナノ粒子.(b) 可視光照射下におけるメチレンブルーの分解過程.(c) 電子移動のメカニズム.h+ は正孔,e は電子を示す.

Top of Page

原子・分子ワイヤーの熱電性能評価用ナノデバイスを開発

大阪大学産業科学研究所バイオナノテクノロジー研究分野の筒井真楠准教授と谷口正輝教授は、マイクロヒータと機械的破断接合を組み合わせたデバイスを開発し、これを用いて金原子ワイヤーにおける熱起電力の量子化現象を室温下で観測することに成功しました。

熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換することができる熱電デバイスは、ひとつの理想的なグリーンデバイスとしてその広い産業応用が期待されています。熱電デバイスが抱える大きな課題は、十分に高いエネルギー変換効率を与える優れた熱電特性を持つ材料の開発です。原子・分子ワイヤーは、量子閉じ込め効果を反映したユニークな電子構造を持つナノ構造材料であり、その特徴を活かすことで、バルク材料では達成することが難しい高い熱電性能を実現できることが理論的に示されています。一方、プローブ顕微鏡等を用いたこれまでの手法では、原子・分子ワイヤー構造を安定に保持することができず、そこに生じる微小な熱起電力を精度良く検出することが困難であった。そこで当方では、微細加工プロセスにより作製した金属ナノブリッジを機械的に破断させる方法を応用し、更にマイクロヒータによる熱制御を取り入れることで、原子・分子ワイヤーの熱電性能評価に応用できるナノデバイスを開発した。

このデバイスを用いると、原子・分子ワイヤーを長い時間安定に保持することができ、その電気伝導度と熱起電力の同時測定を通して、金原子ワイヤーに現れる熱起電力の量子化現象を室温下で観測することができました。

本研究成果は、戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)若手ICT研究者等育成型研究開発の委託研究に基づくものです。研究成果は、2013年11月25日(英国時間、日本時間:11月25日)にネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)「Scientific Reports」のオンライン速報版で公開されました。

温度勾配が与えられた原子ワイヤーの模式図
図1: 温度勾配が与えられた原子ワイヤーの模式図

Top of Page

原子の集団振動で電子が散乱する現象の直接観察に成功
超伝導物質・超高速デバイスなどの新機能材料開発に貢献

大阪大学産業科学研究所の田中慎一郎准教授と大阪大学生命機能研究科の木村真一教授、自然科学研究機構分子科学研究所の松波雅治助教の研究グループは、鉛筆の材料で知られる黒鉛(グラファイト)1) の中を運動する電子が、原子の特定の集団振動(フォノン)2)によって散乱される現象を角度分解光電子分光3) を用いて観測することに世界で初めて成功しました。今回の発見は、超伝導や電気抵抗などの固体の性質を支配する要因の一つとして知られる伝導電子と原子の集団振動の相互作用による散乱(電子格子相互作用)4)を散乱される方向(運動量)まで分解して観測できる道を開いたものであり、将来的には超伝導物質・超高速デバイスなどの新機能材料の開発に役立つと考えられます。詳細は10月23日(英国現地時間10:00)に英国ネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)の「Scientific Reports」(オンライン版)で公開されました。

なお、本研究は科学研究費補助金基盤研究(C)(23540366 および25400326)の補助を受けました。また、分子科学研究所UVSOR施設利用研究の研究課題の一環として実施されました。

グラファイト中の電子と原子の集団振動(フォノン)の相互作用(散乱)。赤丸は炭素原子であり、黒鉛中では六角形の2次元的な構造を作っている。
図1: グラファイト中の電子と原子の集団振動(フォノン)の相互作用(散乱)。赤丸は炭素原子であり、黒鉛中では六角形の2次元的な構造を作っている。

グラファイトからの角度分解光電子分光
図2: グラファイトからの角度分解光電子分光

(a):光電子強度の励起光および電子のエネルギー依存性
(b):スペクトルの拡大図
(c): (b)の微分スペクトル。(b)の階段型構造がピーク構造になり分かりやすい。
(d,e):微分スペクトルの運動量依存性。散乱に関与したフォノンの分散を示している。

Top of Page

SiC半導体を光で瞬時に常温接合することに成功
従来の360倍の速さで接合処理が可能に

大阪大学産業科学研究所先端実装材料研究分野の菅沼克昭教授らは、ワイドギャップパワー半導体(WBG)であるSiCダイ(単結晶SiCウエハ)の光照射による常温接合に成功しました(写真1)。従来は、高温で、1時間近くを要していたこの処理が、常温で、10秒程度で完結することになり、スマート社会を実現する全てのエネルギー変換機器への応用が期待されます。

SiCパワー半導体は、省エネルギー技術の切り札として期待されていますが、ようやく市場に登場したものの、特性を最大限に引き出すための実装技術や材料が無く、現状製品では機器の小型化に貢献するに留まっています。これを打開するために、菅沼教授は7月に「新世代パワー半導体実装技術コンソーシアム(WBG実装コンソーシアム)」を立ち上げましたが、既にメンバーは国内ばかりでなく海外にも広がり、SiC実装技術開発の重要性が確認されます。

SiC実装技術の中で、半導体デバイスを放熱基板へ接続するダイアタッチ技術は最もハードルが高く、エネルギー変換の高効率化の鍵を握る技術ですが、その課題の一つが接合の高い温度と接合に要する時間にありました。つまり、従来技術では300℃以上の高温で数十分から2時間近くの長い時間をかけて接合するために、SiCダイにかかる負荷歪みが大きく、デバイスに欠陥が生じ動作不良を起こします。これを解決する技術が、今回の常温接合技術になります。接合処理は、強い光を照射するだけで、数秒で処理が終了します。図1に、接合技術のメカニズムを示します。加熱炉を全く用いず、キセノンランプの強力な光を接合面層に数秒間照射し、局所的な界面活性化を引き起こして強固に接合する技術です。

本技術は、透明な材料の大面積接合に幅広く使えますので、ダイアタッチではSiCばかりでなく、もう一つのワイドギャップ半導体であるGaN、あるいは、将来に実用が期待されるダイヤモンドにも本技術を用いることが出来ます。

なお、本技術は、文科省科研費基盤研究(S)の補助により開発しました。

光常温接合したSiCダイ
図1: 光常温接合したSiCダイ

光常温接合のメカニズム
図2: 光常温接合のメカニズム

Top of Page

単純な金属を磁気センサーに応用できる新メカニズムの発見
350倍もの磁気抵抗効果を実現し、新たなデバイス作成への道筋を明らかに

首都大学東京(以下、「首都大」)、京都大学(以下、「京大」)、大阪市立大学(以下、「大阪市大」)、大阪大学(以下、「阪大」)、広島大学(以下、「広大」)の研究チームは、非磁性の単純金属であるパラジウム-コバルト酸化物(図参照)の磁場による電気抵抗の変化(磁気抵抗効果)を測定し、巨大な磁気抵抗効果が現れることを発見しました。磁場がゼロのときと比べ、磁場中では電気抵抗が最大で350倍にまで増加しました。大きな磁気抵抗効果を示す例として、コンピューターのハードディスクなどからの情報の読み出しに使われている磁性体多層膜が知られており、その原理の発見は2007年のノーベル物理学賞にも選ばれました。本成果で発見された新しい磁気抵抗効果は、この磁性体多層膜での抵抗変化にも匹敵する大きさです。パラジウム-コバルト酸化物は、伝導電子を豊富に持ち磁気的な性質は持たないなど、多くの意味で「普通」の導電体ですが、このような単純な金属で数百倍もの巨大な磁気抵抗効果が現れるのは驚くべきことです。また、この磁気抵抗効果の起源をコンピューターシミュレーションにより明らかにすることにも成功しました。その結果、単純な金属でも幾つかの条件を満たせば巨大な磁気抵抗効果を示しうるという、これまで見落とされてきた事実が明らかになりました。

この発見は電気伝導現象の基礎学術研究の上で大変興味深い成果です。それだけでなく、この発見は、単純金属でも磁気センサーに応用できる可能性を初めて示したものであると言えます。

この成果は、アメリカ物理学会が発行する英文誌Physical Review Lettersの111巻5号(2013年8月2日発行)に掲載予定です。また、編集者の推薦論文(Editors’Suggestion)に選ばれ、アメリカ物理学会が注目論文を紹介するPhysics誌に解説記事が掲載されます。

多剤排出タンパク質の阻害剤結合構造決定に初めて成功
図: PdCoO2の結晶構造。パラジウム(Pd)の電気伝導層とコバルト-酸素から成る絶縁性のブロック層(CoO2)が交互に積層することで二次元的な電子状態が実現しています。

Top of Page

多剤排出タンパク質の阻害剤結合構造決定に初めて成功
大きな社会問題となっている多剤耐性菌感染症克服に手がかり

大阪大学産業科学研究所の生体防御学研究分野中島良介特任准教授、山口明人特任教授らは、独立行政法人 科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業CRESTおよび独立行政法人 医薬基盤研究所の保健医療分野における基礎研究推進事業の一環として、緑膿菌および大腸菌の主な多剤排出タンパク質の阻害剤との結合構造の決定に初めて成功しました。多剤排出タンパク質とその阻害剤の選択的な結合構造を明らかにすることによって、社会的に大きな問題となっている多剤耐性緑膿菌感染症を克服するため治療薬開発に道を開きました。

細菌が薬物に対する耐性を獲得する主な原因である多剤(異物)排出タンパク質は生物の細胞膜上に広く存在し、細胞の生体防御を担うもっとも基礎的な装置ですが、病原細菌などの細胞膜上にこのタンパク質が増えてしまうと、抗生物質などの薬剤が細胞外に排出され、多剤耐性を引き起こします。これまでに、多剤排出タンパク質の阻害剤開発に多くの努力が傾けられましたが、未だに臨床的に有効な阻害剤が得られていません。大腸菌の多剤排出タンパク質AcrBを阻害するピリドピリミジン誘導体ABI-PPは、緑膿菌の多剤排出タンパク質MexBの特異的阻害剤ですが、多剤耐性緑膿菌のもう一つの有力な原因である多剤排出タンパク質MexYを全く阻害できないため、多剤耐性緑膿菌感染症の治療薬として使用できませんでした。

本研究により、多剤排出タンパク質の阻害剤結合部位の構造を元に、AcrB, MexBのみならずMexYにも広く阻害する多剤耐性感染症治療薬をタンパク質立体構造情報に基づく薬剤設計SBDD(Structure-Based Drug Design)の手法によって分子設計する道が開かれ多剤耐性緑膿菌感染症に有効な初めての治療薬の開発が期待されます。

本研究成果は、2013年6月30日(英国時間)に米国科学誌「Nature」のオンライン速報版で公開されました。

多剤排出タンパク質の阻害剤結合構造決定に初めて成功
【図の説明】 図左はMexB3量体の主鎖ストリングモデル。緑、青、赤はそれぞれ待機、結合、排出モノマー。構造中に見える橙色の網目は結合している阻害剤ABI-PP由来の電子雲。図右はABI-PP結合部位の拡大図。タンパク質は表面構造カットモデル。ABI-PPがスティックモデルで表示されている。黒は切断面。赤と白で見えているのは分子内チャネルの表面。赤は疎水的、白は親水的な表面。中央を左右に基質透過チャネルがあり、その途中に疎水性の狭い溝がある。ABI-PPは分子の一部がその狭い溝にすっぽりとはまり込み、親水性の部分を透過チャネルの方に突き出している。

Top of Page

多剤排出タンパク質の発現にブレーキを掛ける機構を解明!
—細菌の抗菌薬抵抗性制御への戦略的治療へ光—

大阪大学産業科学研究所感染制御学研究分野の西野邦彦准教授らは、病原細菌サルモネラが抗菌性物質を感知して多剤耐性化の原因となる多剤排出蛋白質の発現抑制を解除するメカニズムを明らかにしました。サルモネラは代表的食中毒菌であり、食中毒は大型の事例が多く、様々な施設等で多発しています。特に近年、サルモネラでは複数の抗菌薬に耐性の「多剤耐性化」が問題となっています。

今回、サルモネラの多剤排出蛋白質の発現にブレーキをかける抑制蛋白質(リプレッサー)がデカリニウムをはじめとした5つの抗菌性物質を感知して、その抑制を解除するメカニズムを明らかにしました。本研究では、サルモネラ多剤排出蛋白質ブレーキ役のリプレッサー蛋白質と抗菌性物質との共結晶構造決定に世界で初めて成功し、細菌の抗菌薬抵抗性制御の新たなメカニズムを明らかにしました。本成果は、多剤耐性菌感染症克服にも役立てられると期待されます。

本研究成果は英国Nature Publishing Groupの「Nature Communications」のオンライン速報版で6月26日(英国時間10時、日本時間18時)に公開されました。本研究は最先端・次世代研究開発支援プログラム「薬剤排出ポンプによる細菌多剤耐性化・病原性発現制御機構の解明と新規治療法開発」(研究代表者:西野邦彦准教授、研究期間:平成23年2月〜現在)の助成によりなされたものです。

論文タイトル: The crystal structure of multidrug-resistance regulator RamR with multiple drugs(多剤耐性制御因子RamRと複数の薬剤との共結晶構造)

著者: Yamasaki S., Nikaido E., Nakashima R., Sakurai K., Fujiwara D., Fujii I. and Nishino K. 山崎優1、二階堂英司1、中島良介1、櫻井啓介1、藤原大佑2、藤井郁雄2、西野邦彦1

1大阪大学産業科学研究所、2大阪府立大学大学院理学系研究科)

多剤排出タンパク質の発現にブレーキを掛ける機構を解明!
図1:薬剤結合型と非結合型のRamRタンパク質構造比較
抗菌薬抵抗性制御のブレーキ役を担うRamRタンパク質は、DNA結合ドメインと抗菌性物質認識ドメインから構成されている. 抗菌薬性物質が結合すると、構造が変化してブレーキが解除される.

Top of Page

触媒活性中の金ナノ粒子の原子スケール微小運動を観測

大阪大学産業科学研究所ナノ構造・機能評価研究分野の竹田研究室では、レンズの球面収差が補正できる高空間分解能の環境制御型・透過電子顕微鏡(ETEM)を利用して、化学反応を促進している活性中の金ナノ粒子が担体(セリア)の上で断続的にステップ的な平行移動と回転をすることを見いだしました。この予期しなかった運動の変位は小さく(0.1nm以下)、これまでのETEMでは空間分解能が不足して観察することは不可能でした。

この観察結果は、金ナノ粒子が担体である金属酸化物(セリア、CeO2)の上に緩やかに接合しており、そのためにETEM観察中に運動できた、と説明されました。つまり、担体の表面はほとんど酸素原子で覆われていますが、そのごく一部に酸素原子のいない場所(表面酸素空格子点)が残っていて、この場所で担体側の金属(セリウム、Ce)原子に金原子が直接結合することで、あたかも金ナノ粒子全体が担体に錨を下ろしたように緩やかに固定されていると結論されました。

金ナノ粒子が触媒となるメカニズムを電子論的に解明する上でも必須の実験データが得られたと考えています。

この研究成果は、米国化学会発行のNano Letters誌オンライン版で2013年6月 20日に公開されました。

触媒活性中の金ナノ粒子の原子スケール微小運動を観測

Top of Page

次世代の半導体製造の速度を10倍以上にする技術を確立
極端紫外線(EUV)リソグラフィの実現へ大きな一歩

大阪大学産業科学研究所ナノ極限ファブリケーション研究分野の田川精一招へい教授、大島明博招へい准教授らの研究グループは最先端の半導体デバイス製造のスループット(1時間あたりの半導体ウエハーの処理枚数)を10倍以上向上させる技術を開発しました。次世代の最先端の半導体デバイスの製造のためのリソグラフィ技術の本命として開発が進められている1台100億円と言われる極端紫外線(Extreme Ultra Violet:EUV)リソグラフィの露光装置では、露光光源のパワーが低いため、スループットが目標の10分の1程度と低いことが最大の課題でした。本CRESTチームのメンバーが体系化し、現在、世界中のレジストメーカーが開発の指針としている標準的な反応理論に基づいたレジストの高感度化は、ほぼ限界に近づいており、10分の1程度と低い露光パワーでは目標のスループットに到達できないので、現在、光源開発を待つ状態が続いています。本研究では基本に立ち返って、露光プロセスと感光性樹脂(レジスト)の両方を同時に根本的に変革し、前述の標準的な反応理論に縛られない、10分の1程度の低いパワーのEUV露光でもレジストの反応性を高めて目標のスループットに到達できる新しい技術体系を開発しました。

これにより、長年に渡って、産業界が望んでいた次世代のリソグラフィ技術の本命であるEUVリソグラフィの早期の実用化が実現することになります。

本成果の(独)科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)「極微細加工用レジスト研究とプロセスシミュレーターの開発(平成19~24年度)」(研究総括:渡辺 久恒、研究代表者:田川 精一)によって得られました。

新露光システム EUVパターン露光・光全面露光よる革新的プロセスのシステム
図1: 新露光システム EUVパターン露光・光全面露光よる革新的プロセスのシステム

通常プロセスと新プロセスとの比較の簡略図
図2: 通常プロセスと新プロセスとの比較の簡略図

Top of Page

2つの絶縁体間の界面に生じる金属層の電子構造を解明
-究極の省エネ ナノデバイスへの応用に期待-

大阪大学産業科学研究所の菅滋正特任教授、大学院基礎工学研究科の関山明教授、藤原秀紀助教、甲南大学の山崎篤志准教授らのグループは、ドイツビュルツブルグ大学のClaessen教授、Sing博士、日本原子力研究開発機構の斎藤祐児副主任研究員らとの共同研究で、同機構が大型放射光施設SPring-8 のBL23SUに有する世界トップクラスの軟X線角度分解光電子分光装置を駆使して、2つの絶縁体の間の界面にだけ生じる数原子層以下の極薄の金属層の電子状態の詳細を解明するのに世界で初めて成功しました。このような2次元伝導電子状態は両側を絶縁体で保護されるために極めて安定であると考えられますが、作成法を制御することで界面超伝導状態や、界面磁性も誘起できます。本研究ではナノテクノロジ-として大きく期待されながらも従来の手法では両側の物質の間に埋もれて観測が難しかった新規な超薄膜2次元伝導物質のもっとも基本となる電子状態を最先端計測法で解明したと言う意味で注目を集めています

研究成果は6月17日(米国時間)に米国科学雑誌『Physical Review Letters』のオンライン版に掲載される予定です。

図
図1:2次元金属電子状態を作る電子(Fermi準位のエネルギーを持つ)が運動量空間のどこに存在するかを本研究実験から求めた結果

Top of Page

単一分子観察用の高感度水溶性蛍光プローブの開発と
酸化チタン光触媒反応の超高解像マッピング

大阪大学産業科学研究所励起分子化学研究分野の真嶋哲朗教授、立川貴士助教らは、単一分子観察用の高感度水溶性レドックス応答蛍光プローブを開発し、単一分子蛍光顕微鏡を使い、水溶液中の酸化チタン光触媒反応の起こる位置を10ナノメートル程度の空間分解能で超高解像マッピングすることに世界で初めて成功しました。

本研究では、我々が以前開発したレドックス応答蛍光プローブである3,4-dinitrophenyl-BODIPY(DN-BODIPY)にスルホン酸を修飾した水溶性DS-DN-BODIPYを新たに開発しました(図1)。DS-DN-BODIPYを用いて酸化チタン光触媒による還元反応を単一分子蛍光顕微鏡により観測した結果、従来のプローブと比べて一桁以上感度が高く、10ナノモル濃度という非常に低い濃度でも光触媒反応を単一分子レベルで観測できることがわかりました。また、生成物であるDS-HN-BODIPYの単一分子蛍光像を解析することで、光の回折限界(数百ナノメートル)を超える10ナノメートル程度の空間分解能で反応サイトの位置を決定することに成功しました。この技術を用いることで、光触媒還元反応は酸化チタンナノ粒子の全体でほぼ均一に起こることが明らかになりました(図2)。さらに、可視光用光触媒として近年注目されている金ナノ粒子担持酸化チタンナノ粒子についても同様の実験を行い、反応サイトが金ナノ粒子近傍の酸化チタン上に局在化していることを見出しました。この結果は、金ナノ粒子の有する表面プラズモンが酸化チタン光触媒反応を促進することを裏付ける実験的証拠として、反応機構の解明や高機能光触媒の設計開発に大きく貢献すると期待されます。

研究成果は、アメリカ化学会のACS Nanoに掲載されACS Nano, 7(1), 263-275 (2013) 、5月22日の日刊工業新聞に紹介されました。

水溶性レドックス応答蛍光プローブDS-DN-BODIPYの反応機構と単一分子蛍光像
図1:水溶性レドックス応答蛍光プローブDS-DN-BODIPYの反応機構と単一分子蛍光像

単一酸化チタンナノ粒子上における反応サイトの空間分布
図2:単一酸化チタンナノ粒子上における反応サイトの空間分布

Top of Page

光と電気の同時計測で、1個のマイクロ粒子の流動ダイナミクスを解明

大阪大学産業科学研究所の谷口正輝研究室は、顕微鏡による1個のナノ粒子の蛍光観察と、ナノ流路内を流れるイオン電流変化の同時計測により、微小流路内を流れる1個のナノ粒子の流動ダイナミクスを解明することに成功しました。

ナノ流路やナノ細孔は、赤血球、白血球、ウイルス等を、イオン電流変化で検出するデバイスとして実用化されているものもあるナノデバイスです。これらのデバイスでは、ナノ流路やナノ細孔に検出物が入ると、検出物に応じてイオン電流が変化します。この原理を使うと、100KHz以上の高速で1個の検出物が識別され、その流動ダイナミクスが推定されますが、統計的なイオン電流変化を基準に判断されるため、真に1個の検出物を識別している直接的な証拠は与えられません。一方、ナノ流路やナノ細孔の中を流動する検出物の個数と流動ダイナミクスは、顕微鏡で観察されますが、広域な観察は100Hz以上の高速で行えません。そこで、電気計測と光計測を組み合わせることで、1個の検出物の識別と流動ダイナミクスの高速検出を実現しました。

開発した同時計測法を用いると、統計的に得られるイオン電流変化が、確かに1個のマイクロ粒子のイオン電流変化であることが実証され、さらに、イオン電流変化では予測出来なかった複雑な微粒子の流動ダイナミクスが明らかにできました。

本研究成果は、本学基礎工学研究科の川野研究室と最先端研究開発支援プロジェクトの川合特任教授グループとの共同研究によるものです。

研究成果は、2013年5月20日(英国時間、日本時間:5月20日)にネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)「Scientific Reports」のオンライン速報版で公開されました。

1個の粒子の流動ダイナミクスを調べる光と電気の同時測定の原理図
図. 1個の粒子の流動ダイナミクスを調べる光と電気の同時測定の原理図

Top of Page

2回らせんの右巻き・左巻きの選択機構の解明とその制御に成功
左右変換可能なキラル材料、 医薬品の開発へ

大阪大学産業科学研究所の宮田幹二招へい教授、 同大学院工学研究科の藤内謙光准教授・久木一朗助教らの研究グループは共同で、キラルなアミンとアキラルなカルボン酸から成る数多くの有機塩結晶の単結晶X線構造解析を通して、結晶中の水素結合2回らせんの右巻きと左巻きの選択機構を解明し、その制御に成功しました。このようならせんの左右の制御は医薬品の開発だけでなく、円偏光を利用した3Dディスプレイなどの光学デバイスへの応用が期待されます。

本研究成果は2013年4月30日(ロンドン時間)に英国Nature Publishing GroupのNature Communicationsのオンライン速報版で公開されました。

(a)超分子傾斜キラリティー法と(b)アキラル成分によるらせんの左右の制御
(a)超分子傾斜キラリティー法と
(b)アキラル成分によるらせんの左右の制御

Top of Page

折り紙エレクトロニクス
-ナノペーパーとナノワイヤを用いて軽量ウエアラブルコンピュータに光-

大阪大学産業科学研究所 能木雅也准教授らの研究グループは、折り畳んでも電気を流し続ける「導電性折り紙」を開発しました。この折り紙は、セルロースナノペーパーと銀ナノワイヤからできており、複雑に折り畳んでも導電性が失われません。そこで、導電性折り紙を折り畳んだ「折り鶴」を導線として使用すれば、LEDライトを点灯することができます(左図)。この材料は “折り紙エレクトロニクス”という新しい概念を切り拓き、ウェアラブルなコンピュータやメディカルセンサーなどを実現するでしょう。その端緒として、私達は折り畳み可能な高感度ペーパーアンテナの開発に世界で初めて成功しました(右図)。

この研究成果は、英国国立化学協会(RSC:Royal Society of Chemistry)の発行する学術雑誌Nanoscaleへの掲載が決定されています。そして、特筆すべき研究成果の一つに選ばれ、5月1日に英国国立化学協会からweekly RSC Publishing press packとして世界中の科学ジャーナリストへ配信されました。

導電性折り鶴によるLEDライトの点灯
左:導電性折り鶴によるLEDライトの点灯

折り畳んでも高いアンテナ特性を保持するペーパーアンテナ
右:折り畳んでも高いアンテナ特性を保持するペーパーアンテナ

Top of Page

大阪大学発バイオベンチャー企業:クオンタムバイオシステムズ株式会社設立
-世界に挑戦する国内唯一の1分子DNA・RNAシークエンサー開発企業-

DNAの塩基配列を解読するDNAシークエンサーは、生命科学や医科学など最先端の基礎科学研究には必須の装置であり、その急速な技術発展は、同分野に革命的なインパクトを与え続けています。一方で、今後、遺伝子に基づくがん診断や創薬などの臨床応用を実現するためには、さらに安価で、高速で、精度良く遺伝子を解読する技術が必要で、全世界の著名大学、大企業および約40社のベンチャー企業が、新しい原理に基づくDNAシークエンサーの熾烈な研究開発を展開しています。このような技術革新と用途拡大によりDNAシークエンサーの市場は、年率約20%で拡大している急成長市場であり、また、次世代のシークエンサーデバイスは、半導体応用技術製造されるため、最先端の半導体技術を用いた新たな市場の創出としても非常に注目されています。

大阪大学では、川合特任教授率いる最先端研究開発支援プロジェクト(FIRSTプロジェクト)において、第4世代DNA・RNAシークエンサーの開発が行われてきました。開発するシークエンサーは、これまでのシークエンサーとは異なる革新的な動作原理を持っており、究極の原理に基づくシークエンサーと期待されておりましたが、昨年、プロジェクトチームは、同原理の実証に成功し、実用化への道を切開きました。この研究成果は、世界のDNAシークエンサーを開発する研究者・技術者から注目されています。FIRSTプロジェクトでは、同研究成果の早期社会還元を実現するために、大阪大学新産業創出協働ユニットの第一号支援を得て、大阪大学発バイオベンチャー企業:クオンタムバイオシステムズ(Quantum Biosystems)株式会社を設立いたしました。

クオンタムバイオシステムズ社は、ベンチャーキャピタル、事業会社から資金調達を順調に進めており、国内では唯一、第4世代DNA・RNAシークエンサーの実用化を目指します。経営陣は、代表取締役兼最高経営責任者に本蔵俊彦、取締役兼最高技術責任者に本学教授谷口正輝であり、本学川合知二特任教授は、最高科学顧問に就任します。本内容は、日本経済新聞5月1日朝刊で紹介されました。

世界に挑戦する国内唯一の1分子DNA・RNAシークエンサー
【図1】 世界に挑戦する国内唯一の1分子DNA・RNAシークエンサー

Top of Page

「大きさで決まる消えないメモリ動作」の謎を解明
超低消費電力不揮発性メモリへ期待!

大阪大学産業科学研究所の柳田剛准教授・長島一樹特任助教らは、次世代高密度不揮発性メモリとして最も有望視されている電気抵抗変化現象(ReRAM、メモリスタ)において長年の謎であった電界極性依存性が素子の大きさにより決定されている原理を初めて見出しました。この指導原理は、自己組織化的に形成される10ナノメータ程度のナノワイヤを用いたメモリ素子と微細加工技術により構築された素子をシステム融合することにより初めて明らかにされました。

本研究成果により、現在世界中で激しい研究開発競争が行われているReRAM・メモリスタ素子においてより信頼性の高いデバイス設計が可能となり、更に極微な超低消費電力型の集積不揮発性メモリ素子や新しい論理演算素子(メモリスタ)を活用した省エネ科学技術・グリーンナノテクノロジーへの波及効果が期待されます。

研究成果は、2013年4月15日(英国時間、日本時間:4月15日)にネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)「Scientific Reports」のオンライン速報版で公開されました。

本研究は、最先端・次世代研究開発支援プログラムにより、助成を受けたものです。

大きさで決まる消えないメモリ動作の仕組み
【図1】 大きさで決まる消えないメモリ動作の仕組み

Top of Page

アーカイブ
2016年度
2015年度
2014年度
2013年度
2012年度
2011年度