大阪大学 産業科学研究所

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研究成果

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大阪大学と富山市、IoT技術を用いたインフラ管理技術の研究開発を開始!

 関谷毅教授らの研究グループは、富山市(植野芳彦 建設技術統括監)と連携して、IoTセンサシステムを活用した橋梁、橋脚の効率的点検・管理手法の研究開発を開始しました。
 IoT技術を活用した社会インフラの保全、老朽化対策の研究開発は様々なところで進められています。本研究では大阪大学の関谷教授らが開発してきた多チャンネルのシート型センサシステムと富山市の持つ先進的な構造物の保全管理技術を融合し、大規模な構造物の全体系の挙動把握をきめ細かに計測し、状態に関する客観的な情報から保守点検の優先順位を自動的につけるAI技術へと発展させることを目的とします。
 また、超少子高齢社会を迎えた我が国において、老朽化が進む大規模社会インフラの「人手に頼らない管理手法の開発」は喫緊の課題であり、本取り組みを経て、さまざまな社会インフラへの展開も目指します。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

【記者会見】左:根津俊一特任研究員、中央:植野芳彦氏(富山市 建設技術統括監)、右:関谷毅教授
【記者会見】左:根津俊一特任研究員、中央:植野芳彦氏(富山市 建設技術統括監)、右:関谷毅教授

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nano tech 2018にて産学連携賞を受賞しました

 大阪大学(半導体量子科学研究分野(松本研究室))、村田製作所、中部大学、香川大学、京都府立医科大学からなるJST-CREST産学連携チームが、新炭素素材グラフェンを用いたインフルエンザウイルスセンサーを開発し、世界最大級のナノテクノロジー総合展であるnano tech 2018 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議にて展示を行いました。本センサーはインフルエンザウイルスのヒト感染性を高感度に鑑別し、創薬への応用も可能なもので、nano tech 2018における500社(750小間/24ヶ国・地域)の展示の中から産学連携賞に選ばれました。

【受賞イベント】
「この度はこのような賞を頂き、大変光栄に存じます。今回の受賞は我々のチームの産学連携による成果が評価されたもので、産業科学研究所の理念にも沿うものでありますので、なおのこと嬉しく思っています。今後、グラフェンバイオセンサーの構造や機構に関わる基盤的研究をさらに推し進めると共に、インフルエンザウイルスセンサーの実用展開・社会実装を目指して邁進して参ります。ご注目を頂ければ幸いです。」

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高性能のアモルファス性太陽電池材料の開発に成功

 家裕隆准教授らの研究グループは、ドイツマックスプランク高分子研究所のBlom教授らと共にアモルファス特性を持つ有機薄膜太陽電池材料の高性能化に成功しました。(図1)
 これまで結晶性の太陽電池材料が高性能化に有利と考えられていましたが、アモルファス材料でも高性能化に道筋がつけられたことから、簡便に成膜ができるなどの特徴を活かした太陽電池素子の構築が期待されます。
 本研究成果は、ドイツ科学誌「Advanced Energy Materials」に、1月23日(火)午前8時(日本時間)に公開されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1)本研究で開発したアモルファスポリマー、使用した素子構造、太陽電池特性、および、薄膜特性
図1)本研究で開発したアモルファスポリマー、使用した素子構造、太陽電池特性、および、薄膜特性

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細胞分裂期の染色体凝縮はマグネシウムイオンの増加によって起こる

 細胞が分裂する際、ヒトでは全長2メートルにもおよぶゲノムDNAからコンパクトに凝縮した「染色体」と呼ばれるDNAの束が作られ、2つの細胞に正確に分配されていきます。半世紀以上前、細胞に大量に存在するマグネシウムイオン(Mg2+)がゲノムDNA凝縮の鍵となりうることが提唱されたことがありましたが、当時は細胞内Mg2+濃度を測定する手段が無かったため証明されぬまま忘れられていました。
 永井健治 教授は、国立遺伝学研究所の前島一博 教授、慶應義塾大学の岡浩太郎 教授、京都大学の今村博臣 准教授らの共同研究グループは、蛍光タンパク質技術を駆使してMg2+濃度の変化を高感度で感知できる蛍光センサー MARIO を開発し、生細胞内のMg2+濃度を蛍光イメージングにより可視化することに成功しました。そして細胞分裂の際にMg2+濃度が一過的に上昇することを示すとともに、負の電気を帯びているDNA同士の反発を弱め、染色体の凝縮を促進していることを明らかにしました(図1)。本研究によって、実際にMg2+が細胞のなかで染色体の凝縮にかかわっていることが初めて証明されました。
 染色体の形成の失敗はゲノムDNAの損傷を引き起こし、細胞に「死」や「がん化」などのさまざまな異常、さらには疾病をもたらすと考えられています。また細胞のなかに多量に存在するMg2+は多くのタンパク質の働きを助けており、欠乏するとさまざまな細胞異常が現れることが知られています。今回の蛍光センサー開発と生物学的知見の発見は、このような細胞の異常が起こるしくみの解明につながると期待されます。
 本研究成果は、2018年1月19日(金)(日本時間)に「Current Biology」に掲載されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1)細胞が分裂する際にMg2+が増加し、染色体の凝縮が促進される。ATPの減少によりMg-ATPから遊離したMg2+が供給される。
図1)細胞が分裂する際にMg2+が増加し、染色体の凝縮が促進される。ATPの減少によりMg-ATPから遊離したMg2+が供給される。

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H30年度学振特別研究員に学生5名が採択されました。

H30年度学振特別研究員の審査結果が開示され、 産業科学研究所では以下の5名が採択されました。

 (DC1)工学研究科 電気電子情報工学専攻 博士前期1年
 (DC1)生命機能研究科 生命機能専攻 博士(5年一貫)2年
 (DC1)理学研究科 生物科学専攻 博士前期2年
 (DC2)工学研究科 生命先端工学専攻 博士後期2年
 (DC2)工学研究科 精密科学・応用物理学専攻 博士後期1年

特別研究員制度は、日本学術振興会が日本の優れた若手研究者に対して、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与え、研究者の養成・確保を図るため、研究奨励金および研究費を支給する制度です。

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黒リン、バナジン酸ビスマス(BiVO4)のナノ材料からなる可視光応答型光触媒を開発

 真嶋哲朗教授、藤塚守准教授らの研究グループは、黒リンとバナジン酸ビスマス(BiVO4) を用いた光触媒を開発し、この光触媒を使用すると紫外光のみならず可視光の照射によっても、水から水素と酸素を同時に効率よく生成できることを世界で初めて見出しました。
 従来の光触媒では、太陽光の3-4%にすぎない紫外光を利用するため、水から水素への太陽光エネルギー変換効率が低いという問題や、犠牲剤やバイアス電位を必要とするため、実用性には程遠いなどの問題がありました。
 今回、真嶋教授、藤塚准教授らの研究グループは、紫外光のみならず可視光にも強い吸収をもつ数層からなる2次元層状構造の黒リンと、同じく数層からなる2次元層状構造のバナジン酸ビスマスとの2成分からなる複合体を合成しました。この複合体において、黒リンとバナジン酸ビスマスがともに可視光に応答して光励起されます。黒リンの光励起によって生成した電子がプロトンを還元して水素を生成し、一方、バナジン酸ビスマスの励起によって生成した正電荷が水を酸化して酸素を生成することを見出しました。波長420nm光の照射の場合、水素と酸素の生成量はそれぞれ160および102 μmol g-1 h-1でした。バナジン酸ビスマスの伝導帯から黒リンの価電子帯に電子が移動することで、水素と酸素を同時に効率よく生成する触媒反応が進行することがわかりました。
 この黒リンとバナジン酸ビスマスからなる光触媒は、犠牲剤やバイアス電位を必要とせず、可視光の照射下で水を完全分解する、画期的な光触媒であり、太陽光から可視光を利用して、水から水素と酸素を同時に生成することが可能になりました。
 本研究成果は、Angewandte Chemie International Edition に公開されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1 黒リンとバナジン酸ビスマス(BiVO4)の2成分からなる光触媒の電顕写真。HAADF-STEM (a), dark-field (b), HRTEM(c とd) 像。EDX 元素マッピング: P (e), Bi (f), O (g), V(h)。
図1 黒リンとバナジン酸ビスマス(BiVO4)の2成分からなる光触媒の電顕写真。HAADF-STEM (a), dark-field (b), HRTEM(c とd) 像。EDX 元素マッピング: P (e), Bi (f), O (g), V(h)。

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日本産ハナガサクラゲより開発!耐酸性緑色蛍光タンパク質Gamillus

 永井健治教授らの研究グループは、鶴岡市立加茂水族館から提供された日本産ハナガサクラゲから、pH4.5-9.0の細胞環境で安定して蛍光する、耐酸性の緑色蛍光タンパク質“Gamillus”の開発に成功しました。
 今回研究グループは、ハナガサクラゲの光る触手から、蛍光タンパク質をコードする遺伝子を新規に同定し、タンパク質工学を用いて遺伝子改良することで、耐酸性で単量体型、高輝度の緑色蛍光タンパク質Gamillus (Green fluorescent protein with acid-tolerance and monomeric property for illuminating soured environment の略)を開発しました(。一般によく使われる、緑色蛍光タンパク質EGFP(オワンクラゲ由来)がpH6.0以下の酸性環境で蛍光を失うのに対して、Gamillusは酸性環境でも安定した蛍光を放ち、細胞内のほぼ全てのpH環境で使用可能です(図2左)。Gamillusの立体構造をX線結晶解析法で決定したところ、一般的なGFPとは異なるトランス型の蛍光発色団を形成し、この構造が耐酸性メカニズムに寄与することを見いだしました。
 酸性細胞小器官は、2016年のノーベル医学・生理学賞受賞者の大隅良典博士が発見したオートファジーなど、多くの生命機能に密接に関わっています。しかし、既存の緑色蛍光タンパク質は、低pHで蛍光しないため、酸性細胞小器官内での使用が限られていました。Gamillusを用いることにより、マクロオートファジーにより蛍光タンパク質が細胞質から酸性細胞小器官のリソソーム輸送される過程を観察することが可能になりました(図2右)。将来的には、既存の耐酸性の青色・赤色蛍光タンパク質と組み合わせることで、複数種のタンパク質を別々の色で標識して、同時に追跡することが可能となります。Gamillusは、酸性環境中の未知の生命現象を発見するための基盤技術となり、医学・創薬研究にも大きく貢献すると期待されます。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1)Gamillus作成の概略図。ハナガサクラゲの触手より、蛍光タンパク質の遺伝子をクローニングし、タンパク質工学により明るさや単量体度を改良した。
図1)Gamillus作成の概略図。ハナガサクラゲの触手より、蛍光タンパク質の遺伝子をクローニングし、タンパク質工学により明るさや単量体度を改良した。(ハナガサクラゲは鶴岡市立加茂水族館の奥泉様よりご提供いただいた。)

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自分の腸内フローラを最大限活用できるトイレの研究開発が始動!

 生体分子制御科学研究分野の山崎聖司助教らの研究グループは、センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム※1における革新的な研究開発課題として、自らの腸内フローラ(腸内細菌叢)を判定することができるトイレと、腸内フローラを改善するためのサプリメントの開発を行います。
 近年、ヒト腸内に存在する様々な細菌の集合体である「腸内フローラ」が、ヒトの免疫力向上・抗がん作用・抗うつ作用・各種疾患の発症等に関わることが示され、当分野は非常に注目されています。
 しかしながら、一般の方が自分の腸内フローラを日常的に簡単に知る方法はなく、各々に適した食品・サプリメントを選択できていないという大きな問題があります。
 そこで当研究では、様々な生体情報を測定可能なハイスペックトイレを軸とした、「自らのもつ腸内フローラを最大限活用できる社会の実現」(図1)を最終的な目標として掲げ、基礎研究段階から実用化を目指した産学連携による研究開発を推進します。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1 ハイスペックトイレを用いた腸内フローラ活用システム
図1 ハイスペックトイレを用いた腸内フローラ活用システム

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AIが対話の流れから単語を学ぶ手法を開発

 駒谷和範教授らの研究グループは、対話システムにおいて、知らない単語に関する推定結果が正しいかどうかを対話の流れの中から判定する暗黙的確認という手法を新たに開発しました。
 近年、音声応答を行うロボットやアプリが数多く公開されていますが、その機能は基本的に事前にシステムに組み込まれた知識に基づいて、質問に答えるというものです。
 他にも、人間に質問して学ぶという手法もありますが、単純に知識を獲得しようとして、対話の最中にシステムが「××って何ですか?」のような質問ばかりを繰り返すと人間が対話を続ける意欲を削いでしまいます。
 駒谷教授らのグループは①直接的に尋ねずにその推定結果が正しいと仮定して話を続け、それに対する相手の反応も踏まえて正誤を判定する。②複数の人とのやりとりを総合して正誤判定の精度を上げる。の2つを組み合わせた手法を開発しました。①、②にはいずれも機械学習※2技術が使われています。
 この成果によって、開発者が事前に用意したり更新したりしたやりとりができるだけでなく、人間と話すにつれて自ら学んで次第に賢くなっていく対話システムの実現が期待されます。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1 暗黙的確認の例
図1 暗黙的確認の例

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プラスチックに数層の分子配向膜を形成する手法の開発とその応用に成功

 JST戦略的創造研究推進事業の一環として、東京大学の横田 知之 講師、染谷 隆夫 教授、東京工業大学の福島 孝典 教授、梶谷 孝 特任准教授、大阪大学の関谷 毅 教授らのグループは、プラスチック基板上に自己組織化単分子膜のような数層からなる分子配向膜の形成手法を開発し、有機集積回路への応用に成功しました。
 フレキシブルエレクトロニクスは、次世代のエレクトロニクスとして非常に注目を集めています。しかしながら、プラスチック基板上には金属や酸化物のように、薄い均一な分子配向膜(微細な溝のある板)を形成する技術がないために、エレクトロニクスの高性能化・高機能化が難しいという問題点がありました。本研究グループは、二次元に配向する3枚羽プロペラ状の分子であるトリプチセンを用いることで、プラスチック基板上に数層の分子配向膜を形成することに成功しました。さらに、この技術を有機集積回路に用いると、デバイスの電気特性が向上しました。今後、トリプチセンの分子設計を行うことで、新規分子デバイス創出など多様な応用展開が期待されます。
 本研究成果は、2017年12月18日(イギリス時間)に「Nature Nanotechnology」誌の オンライン速報版で公開されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1)トリプチセン分子を用いた有機トランジスタの絶縁膜表面の修飾
絶縁膜表面をトリプチセン分子で修飾することにより、有機トランジスタの移動度が大幅に向上した。
図1)トリプチセン分子を用いた有機トランジスタの絶縁膜表面の修飾 絶縁膜表面をトリプチセン分子で修飾することにより、有機トランジスタの移動度が大幅に向上した。

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多根正和准教授が、大阪大学賞を受賞しました

 先端ハード材料研究分野の多根正和准教授が、大阪大学賞を受賞しました。大阪大学賞は、今年度から新たに創設された3つの部門(大学運営・教育貢献・若手教員)からなる賞で、本学教職員のモチベーションを一層高めるとともに、いわゆる「縁の下の力持ち」的存在の教職員にもスポットを当てることを目的として実施するものです。
 八木教授らの研究グループでは、独自の深層学習モデル(図1)の適用により、歩く向きが異なる映像でも高精度の歩容認証性能を実現しました。
 多根准教授は、単結晶育成を必要としない単結晶弾性率決定法の構築に基づく生体および構造材料の研究を展開しており、2016年9月に第13回村上奨励賞、今年5月に本多記念会第38回本多記念研究奨励賞を受賞するなど、産業科学研究所において活躍する若手研究者の一人です。


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高額医療を必要とする希少難病「キャッスルマン病」が指定難病に追加されました

 生体分子制御科学研究分野の吉崎和幸特任教授がリーダーとして研究を進めている特発性多中心性キャッスルマン病が難病医療法に基づき指定難病に指定されました。
 キャッスルマン病は1956 年に米国のキャッスルマン博士によって提唱された病気で、60年経った現在も病因は不明で確固たる治療法もない希少難病です。日本の患者数は推定1,500人と言われています。
 指定難病に承認されたことにより、患者への経済負担が大いに軽減され、また、より適切な治療が可能となることが期待されます。

詳細はこちらをご覧ください。

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黒田俊一教授が開発した嗅覚受容体解析技術が大賞を受賞しました。

 黒田俊一教授が開発した嗅覚受容体解析技術の社会実装を担う大阪大学発ベンチャー㈱香味醗酵が池田泉州銀行主催「第17回ニュービジネス助成金コンペ」にて177件中1位で大賞となりました。

黒田教授の研究内容についてはこちらをご覧ください。

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「未来科学捜査」歩容鑑定 〜深層学習でどんな向きの人物も認証可能に〜

 八木康史教授らの研究グループでは、AI(人工知能)技術の中でも特に注目を集めている深層学習※1を用いた高精度歩容認証技術を開発しました。
 人の歩き方(歩容特徴)は、服装や髪型の差異では変化せず、防犯カメラ等で遠方から撮影した低解像度の映像からでも抽出可能であることから、個人認証を行う上で非常に実用的な特徴として期待されています。
 しかし、カメラに対して人の歩く向きが異なると、人の見え方が大きく異なるため、従来の技術では歩容認証が困難でした。
 八木教授らの研究グループでは、独自の深層学習モデル(図1)の適用により、歩く向きが異なる映像でも高精度の歩容認証性能を実現しました。
 本研究成果は、2017年11月8日に情報処理学会 コンピュータビジョンとイメージメディア研究会(CVIM研究会)での発表を予定しています。また、米国科学誌「IEEE Transactions on Circuits and Systems for Video Technology」に2018年1月(オンライン速報版は2017年10月9日公開済み)に公開されます。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1: 歩く向きの違いに応じた深層学習モデル
図1: 歩く向きの違いに応じた深層学習モデル

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世界初!細胞の集合状態を三次元の塊と二次元の単層状態との間で自在に制御することを可能とする新規高分子を開発

 永井健治教授、東京工業大学生命理工学研究科の丸山厚教授、嶋田直彦助教、九州大学先導物質化学研究所の木戸秋悟教授らの共同研究グループは、物質・デバイス領域共同研究拠点ならびに人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンス活動における研究成果として、培養した細胞の集合状態を三次元の塊と二次元の単層状態との間で自在に制御することを可能とする新規高分子を用いた培養技術を世界で初めて開発しました。  培養した細胞は再生医療などの近年の細胞を活用した医療技術においてますます重要な医療資源です。そしてそれらの細胞を適切に集めて培養し、三次元的な形を与えたり、その形を自在に設計する技術は、細胞からなる組織や臓器を構築する上で極めて大切な基盤技術の一つとなっています。
 一方、従来の典型的な細胞培養法では、細胞培養皿を用いた二次元的な平面培養法や、浮遊培養などを用いる三次元の塊(スフェロイド)状培養などが多用されますが、これらの間での自在な転換技術は開発されていませんでした。
 今回、永井教授らの研究グループが独自に開発した、尿素基を側鎖にもつウレイド高分子(図1)を細胞培養に応用することで、細胞の単層状態/スフェロイド状態の迅速な可逆的転換が可能となることが明らかとなりました(図2)。この技術は単層培養細胞を容易にスフェロイドへ誘導することを可能とするばかりでなく、逆にスフェロイドとしたのち適切なタイミングで二次元層状組織へと導くといった、従来にはなかった細胞集合体の構造制御法として再生医療分野への展開が期待されます。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1 ウレイド高分子の構造式
図1 ウレイド高分子の構造式

図2 ウレイド高分子の存在下において、単層培養状態であった細胞は冷却によってスフェロイドへと形態変化する。加熱によってスフェロイドは単層培養状態へと戻る。
図2 ウレイド高分子の存在下において、単層培養状態であった細胞は冷却によってスフェロイドへと形態変化する。加熱によってスフェロイドは単層培養状態へと戻る。

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高品質金属酸化物ナノワイヤの低温合成に成功 – 太陽電池、リチウムイオンバッテリー応用に期待-

 竹田精治教授・吉田秀人准教授らの研究グループと九州大学先導物質化学研究所の柳田剛教授らの研究グループは、金属酸化物ナノワイヤをVLS法により合成する際の温度を下げる手法を開発しました。  金属酸化物ナノワイヤは太陽電池、リチウムイオンバッテリー、スーパーキャパシタ、不揮発性メモリなど、様々な用途への応用が期待されています。
 VLS法は高品質な金属酸化物ナノワイヤを合成することのできる手法ですが、合成に必要な温度の高さ(600~1000℃)が問題です。
 今回、研究グループは原料の供給レートを厳密に制御することで、金属酸化物ナノワイヤを400℃以下の低温で合成することに成功しました。本手法を用いることで、様々な金属酸化物の高品質ナノワイヤを熱的に不安定な基板上にも合成することが可能となります。これにより、金属酸化物ナノワイヤの応用範囲を広げることが期待されます。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1 金属酸化物ナノワイヤのVLS法による低温合成の概略図。
原料供給レートを小さくすることで合成温度下げることができる。
図1 金属酸化物ナノワイヤのVLS法による低温合成の概略図。 原料供給レートを小さくすることで合成温度下げることができる。

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嗅覚IoTセンサーの業界標準化推進に向けた「MSSフォーラム」発足 ~香りやニオイの基準モノサシ!」実用化に向けて~

 鷲尾隆教授は、国立研究開発法人物質・材料研究機構(以下NIMS)、 京セラ株式会社、日本電気株式会社、住友精化株式会社、旭化成株式会社、NanoWorld AGの7機関と共同で、超小型センサー素子「MSS (Membrane-type Surface stress Sensor / 膜型表面応力センサー)」を用いた嗅覚IoTセンサーの業界標準化(de facto standard)推進に向けた“公募型実証実験活動”を行う「MSS(エムエスエス)フォーラム」を11月1日に発足させました。
  MSSとは、NIMS国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)の吉川元起グループリーダーを中心とした国際共同研究によって、2011年に開発されたセンサー素子です。このMSSのMembrane部分に被覆してガス分子を吸着させる「感応膜」には、有機・無機問わず様々な材料が利用可能であるため、汎用性が非常に高く、香りやニオイの元となる多様なガス分子に対応可能です。その上、超小型・超高感度であるため、食品・環境・医療・安全など様々な分野への応用が期待されています。2011年の開発後、嗅覚センサーとしての基礎研究を経て、2015年には、MSSの実用化を加速すべく、産学官共同で、要素技術の研究開発を行う「MSSアライアンス」を発足させ活動を継続してきました。
 MSSアライアンスでの研究活動を通して、センサーデバイス開発、感応膜材料の開発、精密評価システム開発、計測データ分析・解析環境の開発など、重要要素技術の研究開発において顕著な成果を得ることが出来ました。2017年4月からは、旭化成が新たに参画し、ガス分子を吸着させる感応膜材料開発および感応膜材料塗布技術開発を担当しています。さらに、これらの成果を基に招聘参加企業による10件以上の実証実験が実施されており、様々な香りやニオイに対する高い感度と識別能力が次々に実証されています。
 以上の様な共同研究活動の成果を踏まえて実用化を加速するため、そして、様々な分野からの「MSS嗅覚IoTセンサー」を実際に使用してみたいとの声にお応えするため、オープンな実証実験を行う「MSSフォーラム」を11月1日付で設置し、参画する企業を公募いたします。MSSアライアンス7機関で、引き続き要素技術の確立を目指しつつ、MSSフォーラムに参画された企業・研究機関とともに、多種多様な環境下における有効性実証実験を推進することで、「MSS嗅覚IoTセンサー」技術の業界標準化の推進を図ります。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図

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固体中で光の情報を制御する新現象を発見 -光デバイスの多機能化に期待-

 張奕勁研究員は東京大学大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センターの岩佐義宏 教授(理化学研究所創発物性科学研究センター 創発デバイス研究チーム チームリーダー兼任)、同研究科附属量子相エレクトロニクス研究センターの井手上敏也 助教、同研究科物理工学専攻の恩河大 大学院生らの研究グループと共同で、新たな二次元物質として注目される二硫化モリブデン(MoS2)の単層を用いて、入射光の偏光情報を保った励起子(れいきし)を伝達し、選択的に空間分離することが可能な新現象(励起子ホール効果)を発見しました。
 フォトダイオードやLEDを構成する半導体の受光・発光において、励起子といわれる複合粒子が主要な役割を果たします。励起子は素子の電気特性と光を結びつける概念として20世紀半ばから研究が続いてきましたが、その光のエネルギー・情報を受け取った励起子そのものを伝達・制御し、光エレクトロニクスにつなげようとする研究は極めて少なく、一方で、固体中の様々な粒子の軌道を曲げて制御するホール効果と呼ばれる現象は広く研究されてきましたが、励起子については全く報告がありませんでした。
 今回は単層二硫化モリブデン内の励起子が光の偏光情報と結合することに着目し、その特異な励起子が磁場を加えなくてもホール効果を示すことを発見しました。これは光の偏光情報を固体中で励起子として選択的に輸送できることを示しており、励起子を直接的に用いた新たな光エレクトロニクスなどの基礎となりうる結果です。
 本研究成果は、英国科学雑誌『Nature Materials』のオンライン版(平成29年10月2日版)に掲載されました。
 本研究は日本学術振興会科学研究費補助金 特別推進研究(No. 25000003)、挑戦的研究(萌芽)(No. 17K18748)、研究活動スタート支援(No. 15H06133)の支援を受けて行われました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1:励起子ホール効果の観測
今回の研究で用いたサンプルの写真が左図。実線で囲まれた部分が単層MoS2サンプル。右図が測定結果で、図の上方から下方に向かって励起子が流れている。その際にゼロ磁場下でも、K励起子(赤)が右に、K’励起子(青)が左に曲がって流れていることが今回の研究で分かった。
図1:励起子ホール効果の観測 今回の研究で用いたサンプルの写真が左図。実線で囲まれた部分が単層MoS2サンプル。右図が測定結果で、図の上方から下方に向かって励起子が流れている。その際にゼロ磁場下でも、K励起子(赤)が右に、K’励起子(青)が左に曲がって流れていることが今回の研究で分かった。

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世界最高感度の電気計測システムを開発

 内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の宮田プログラム・マネージャーの研究開発プログラムの一環として、名古屋大学大学院工学研究科(研究科長:新美 智秀)生命分子工学専攻の馬場 嘉信(ばば よしのぶ)教授、安井 隆雄(やすい たかお)助教、矢崎 啓寿(やさき ひろとし)研究員らが、九州大学先導物質化学研究所柳田 剛(やなぎだ たけし)教授、大阪大学産業科学研究所川合 知二(かわい ともじ)特任教授との共同研究により、世界最高感度の電気計測システムを開発し、微粒子や微生物、DNA分子の高感度電流計測を可能としました。
 電流計測システムは、電気シグナルに応じたサイズ検出機能があるため、様々な分野において、効率良く物質のサイズ計測を実現する小型の計測システムとして期待されています。しかし、従来の電流計測システムには、計測したい物質の大きさに合わせて計測部の大きさを変更する必要があり、サイズ検出範囲が狭く、様々なサイズの微粒子・微生物・DNA分子を1つの計測部で検出するのが困難であるという問題が生じていました。
 そこで、本研究では、内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の取り組みにおいて、ブリッジ回路を用いたバックグラウンド電流抑制技術(µA(マイクロアンペア)からpA(ピコアンペア)まで)と、これまでに開発したマイクロ流体技術を用いて、従来の電流計測システムの計測部より、格段に大きい計測部でナノ粒子の検出に成功し、次世代の電流計測システムの基盤技術を確立しました。環境測定デバイス、生命科学研究、個別化医療など幅広い分野への貢献が期待できます。
 今回の研究成果は、2017年9月30日発行の米国国際学術誌『Journal of the American Chemical Society』誌(電子版)に掲載されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1 ブリッジ回路を搭載した電流計測システムの概念図とその計測システムを 用いたポリスチレン粒子、細菌細胞、がん細胞、DNA分子の検出結果
図1 ブリッジ回路を搭載した電流計測システムの概念図とその計測システムを 用いたポリスチレン粒子、細菌細胞、がん細胞、DNA分子の検出結果

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世界初!可視光・近赤外光照射により、 水から水素を高効率で生成する完全金属フリー光触媒を開発

 励起分子化学研究分野の真嶋哲朗教授、藤塚守准教授らの研究グループは、黒リンとグラファイト状窒化炭素(g-C3N4)の二成分からなる複合体を用いた光触媒を開発し、この光触媒を使用すると可視光・近赤外光の照射によっても、水から水素生成が効率よく起こることを世界で初めて見出しました。この触媒は金属を全く使用していない、環境に好ましい、完全金属フリーの触媒です。
 従来の光触媒では、太陽光に4%程度しか含まれていない紫外光を利用するため、水から水素への太陽光エネルギー変換効率は低く、実用からは遠いという問題がありました。
 今回、真嶋哲朗教授、藤塚守准教授らの研究グループは、紫外・可視光のみならず近赤外光にも強い吸収をもつ層状の黒リンと、数層からなるg-C3N4との二成分からなる複合体を合成しました(図1)。この複合体に可視光・近赤外光を照射すると、複合体の光触媒作用によって、水から水素が効率的に生成します。この複合体において、黒リンが可視光・近赤外光に応答する光増感剤として働き、また、g-C3N4が可視光に応答する光増感剤として働きます。黒リンとg-C3N4はともに層状構造のためその界面を形成しやすく界面間での電荷移動が容易になりその結果電荷分離が効率的に進行します。特に、黒リンとg-C3N4との界面にP-N結合が生成して電子捕捉部位となり、水から水素が生成することは、本研究成果により世界で初めて明らかになりました。
 この可視光・近赤外光駆動型で水から水素を生成する光触媒は、金属を全く使用しない完全金属フリー光触媒としては世界初めての例です。新しく開発した黒リンとg-C3N4の複合体を光触媒として使用することによって、太陽光からの広帯域波長光を利用して、水からの水素製造が可能になりました。
 本研究成果は、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」に、9月21日に公開されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1
黒リンとグラファイト状窒化炭素(g-C3N4)の二成分複合体からなる光触媒の透過型電子顕微鏡写真。
図1 黒リンとグラファイト状窒化炭素(g-C3N4)の二成分複合体からなる光触媒の透過型電子顕微鏡写真。

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磁性分子中の複雑な電子スピン状態の新たな高精度計算手法を開発 -分子スピントロニクス素子開発への応用に向けて-

 小口多美夫教授、三重大学大学院工学研究科の名和憲嗣大学院生と同大学の中村浩次准教授、ウィスコンシン大学のWeinert(ワイナート)教授らの研究グループは、磁性分子材料の電子及びスピン状態を高精度に解析・予測するための第一原理計算手法の開発に成功しました。磁性分子が持つ物性の起因となるd軌道やf軌道の電子スピン状態は、従来の第一原理的手法では計算精度に信頼性を欠く場合があり、高精度な磁性分子の物性予測を可能とする第一原理計算手法の開発が求められていました。本成果により、分子スピントロニクス素子開発の発展に向けた新規磁性分子素子を予測するための、重要な理論的手法が確立されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1
(a)メタロセン分子構造と配位子場分裂した遷移金属のd軌道。 (b)Mn原子を含む系(d5)における考えられる電子スピン状態の一例。
図1 (a)メタロセン分子構造と配位子場分裂した遷移金属のd軌道。 (b)Mn原子を含む系(d5)における考えられる電子スピン状態の一例。

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世界初!シリコン断崖側面構造の原子レベル観察に成功

 田中秀和教授、服部梓助教の研究グループ、及び奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科の大門寛教授、服部賢准教授、楊昊宇(大学院生)、大畑慧訓(大学院生)、竹本昌平(大学院生)のグループは共同で、原子分解能をもつ走査トンネル顕微鏡を用いて、デバイス加工後のシリコン切削側面表面を原子レベルで平坦かつ清浄にし得ることを世界で初めて明らかにしました(図1)。
 これまでデバイス加工後の側面表面の顕微評価はナノメートル程度の分解能をもつ走査電子顕微鏡でしかなされておらず、精密なデバイス加工を施しても、顕微プローブが加工構造と干渉するため、原子レベルでの評価はなされておらず、デバイス性能を十分に発揮できていませんでした。
 今回、本研究グループは、デバイス形状を顕微プローブと干渉しない加工構造に調整することにより、原子レベルでのデバイス加工側面の顕微観察に成功し、加工側面表面を平坦かつ清浄にし得ることを示しました。これにより、原子レベルでの側面加工の確度の向上、及び精密側面を利用した立体超集積回路の構築の推進が期待されます。
 本研究成果は、科学誌「Japan Journal of Applied Physics」に近日中に公開予定です。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1
シリコン基板エッチング処理・加熱処理後の切削側面の走査トンネル顕微鏡像
図1 シリコン基板エッチング処理・加熱処理後の切削側面の走査トンネル顕微鏡像

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らせん型機能分子の実用的合成法を確立

 鈴木健之准教授、周大揚助教らの研究グループは、岩手医科大学薬学部河野富一教授、辻原哲也助教との共同研究により、らせん型機能分子の実用的合成法を確立しました。
 この基盤技術を基に創製したらせん型不斉配位子は高い不斉認識能を有することが明らかとなりました。また含硫黄複素環を有するヘテロヘリセンの合成にも成功しました。
 ベンゼン環をオルト位で縮合すると6個で一周し、ヘリセンというらせん型構造をとる分子になります。このらせん構造由来の右巻き、左巻き分子は光学的に逆の性質を示します。
 このたび、本研究グループは、ヘリセンの内側に酸素官能基を含む基盤骨格である1-[6]へリセノールを世界で初めて合成し、光学活性体として数グラムスケールで合成する方法を発表しました。この技術を基に合成された、リン元素を含有するハイブリッドヘリセンは、パラジウムを用いる不斉触媒反応の不斉配位子として高い選択性を示します。また今回、硫黄元素を含むヘテロヘリセンの合成にも成功しました。(図)硫黄元素を[6]ヘリセンの内側に含む化合物は世界初の例となります。
 このようにらせん型構造を有する機能性分子の鍵化合物合成が可能になったことで、従来の不斉炭素を基盤とする機能性材料とは異なる性質を有する機能性分子が開発されると期待されます。 本研究成果は、米国科学誌「Organic Letters」に、6月7日(水)に公開されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図

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谷口 正輝教授が「分子科学国際学術賞」を受賞しました。

 「分子科学国際学術賞」にバイオナノテクノロジー研究分野の谷口正輝教授が受賞されました。この賞は、分子科学研究分野において量ではなく質的に優れた研究業績をあげ、国際的に高く評価されている分子科学会会員に授与されるものです。 表彰式は、分子科学会会期中の9月15日、東北大学川内北キャンパスで行われます。

詳細はこちらをご覧ください。

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次世代パワー半導体のCu電極に対応 -低コストで高パワー変換率電力変換器の小型化にはずみ-

 菅沼克昭教授が開発した銀粒子焼結接合は、低コストでありながら、低温、低圧、大気中の条件でダイアタッチを可能にし、しかも250℃を超える耐熱で高信頼性を実現することから、次世代パワー半導体ダイアタッチの本命として世界に普及が始まっています。
 昨年、その接続メカニズムをナノレベルで解明しましたが、技術の鍵は銀と酸素の反応にあり、このため接合電極は銀に限られていました。
 一方、Si(シリコン)やSiC(シリコンカーバイド)などの半導体、DBC基板などの電極にはニッケルや銅が用いられることが多く、これら電極への接合の実現を国内企業は強く望んでおり、さらに、シート接合ができることで適用範囲が一気に拡大します。
 これらの課題解決のために、科学技術振興機構(JST)のALCAプロジェクトの一環として株式会社ダイセルとの共同研究により銀の界面形成を活性化する溶剤の開発を進め、これまでより低温である200℃においても多種類の電極の接合を実現する無加圧焼結接合技術を可能にしました。この新ペースト(溶剤)では、銀の2倍程度の抵抗値3×10-6Ω・cmという、これまでナノ銀ペーストでしか得られない低抵抗値を得ることができます。
 また、従来のパワー半導体プロセスでは、ペーストを用いずシートをダイアタッチ接合材料として使う場合も多数あります。菅沼教授らのグループでは、銀シート表面に簡単な研削加工を施すことで表面活性化させる技術を開発しました。この加工組織導入によって、200℃から250℃の低温度域で銀シート表面にヒロック*4を多数形成することが確認され、新たなシート接合技術へ展開できることを確認しました(図1参照)。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1 加工組織導入銀シートを用いて250℃でリードフレームへ接合したSiダイアタッチの例
図1 加工組織導入銀シートを用いて250℃でリードフレームへ接合したSiダイアタッチの例

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全ての匂いを数値化する技術の社会実装開始 -新しい匂いをデザインするサービスはじまる-

 黒田俊一教授らの研究グループは、独自開発した全自動1細胞解析単離装置を駆使することで、特定の匂い分子に反応して活性化する嗅覚受容体群を網羅的に単離する唯一の方法を2016年に世界に先駆けて開発しました(Scientific Reports Vol. 6 (2016) p.19934)。
 医薬品、化粧品、香料、食品、酒類などの各業界において、任意の匂いが、どの嗅覚受容体群を活性化するかを明らかにする需要は高まってきており、社会還元の一つとして、この度、株式会社香味発酵と共同で、産業上有用な匂いを嗅覚受容体で数値化してデータベースを構築し、新しい匂いをデザインする事業展開が開始されました。
 現在、①任意の匂い(混合物でも可)による嗅覚受容体群(ヒト約400種類、マウス約1000種類)の活性化度合いを迅速測定する方法、②任意の匂いを嗅覚受容体群活性化度合いで表現する方法(右上図)、③求める匂いを他の匂い分子群で迅速に再構成する方法(右下図)を特許申請しています。
 黒田教授らの開発した嗅覚受容体を発現する細胞群から任意の匂い(混合物を含む)に反応する細胞のみを全て迅速に取り出す方法を駆使して、ニーズに即した匂いのデータベース構築を進めており、蓄積したデータを活用することにより、我々の匂いの感じ方に基づく匂いの要素分解及び再構成を行います。

詳細はプレスリリースをご覧ください。


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新機能デバイスへの応用に期待-酸化物セラミックスの3次元的立体構造作製に成功-

 田中秀和教授、神吉輝夫准教授とイタリア・ジェノバ大学の研究グループは、金属-絶縁体相転移に伴う巨大な抵抗変化を示す機能性酸化物セラミックス※2において、新たな3次元造形の開発により、単結晶酸化物フリースタンディングナノワイヤ※3の作製に成功しました(図1)。これにより、従来の100分の1の消費電力で3桁の電気抵抗スイッチングや、新しい原理に基づく高周波アクチュエータの実現に世界で初めて成功しました。
 今回、田中教授らの研究グループは、酸化マグネシウム基板上に、高品質酸化バナジウム単結晶を成長させる技術を開発し、MgO基板をエッチングにより取り除く技術の開発により、単結晶酸化物フリースタンディングナノワイヤを実現したものです。これにより、高感度センサ、強磁性や超伝導など多様な機能を示す酸化物セラミックスを利用した新機能NEMS(ナノ電気機械結合システム)デバイス※5など各種の新規デバイスの創製が期待されます。
 本研究成果は、日本科学誌「Appl. Phys. Exp. 10 (2017) 033201 (Published 22 February 2017)」に掲載され、また、ドイツ科学誌「Advanced Materials」にも7月に掲載されました。

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図1 単結晶酸化バナジウムの自立(フリースタンディング)ナノワイヤの走査型電子顕微鏡像
図1 単結晶酸化バナジウムの自立(フリースタンディング)ナノワイヤの走査型電子顕微鏡像

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単純構造のシリコン太陽電池で変換効率20%達成 -発電コスト低減に大きく寄与-

 大阪大学産業科学研究所の小林光教授と今村健太郎助教らの研究グループは、10秒~30秒の簡単な溶液処理によって、3%以下の反射率※1のシリコンウェーハを形成する方法(図1参照)を開発しました。この技術を結晶シリコン太陽電池に用いて、反射防止膜を形成しない極単純な構造の太陽電池で、20%の変換効率を達成しました。 
 従来技術では、シリコン表面にピラミッド構造※2を形成することで低反射にしていましたが(図2左図参照)、低反射処理に約20分を要し、そのうえ反射率は10%以上とあまり低くすることはできませんでした。その結果、プラズマCVD法※3等の高価な方法を用いて反射防止膜を形成する必要がありました。
今回開発した技術により、太陽電池の製造コスト低減が期待されます。
 開発した技術では、シリコンウェーハを過酸化水素水(H2O2)とフッ化水素酸水溶液(HF)の混合溶液に浸し、白金触媒体に10~30秒接触させるだけで、瞬時に表面にシリコンナノクリスタル層※4が形成され、極低反射化します。どの方向から入射する光もほとんど反射しませんので(図2右図参照)、反射防止膜を形成する必要がありません。一方、シリコンナノクリスタル層は莫大な表面積を持ちますので、効果的な表面パッシベーション※5処理を行わなければ、光生成した電子とホールが表面で再結合して消滅し、変換効率が低下します。再結合を防止するために、リン珪酸ガラス法(PSG法)という新規の方法を開発しました(図3)。PSG法を用いない場合の太陽電池の変換効率は約15%でしたが、これを用いることによって20%にまで向上しました。
本研究成果の一部は、学術誌「Solar RRL」2017年7月号に掲載されました。

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図1 開発した溶液処理(化学的転写法)による多結晶シリコンウェーハの極低反射化
図1 開発した溶液処理(化学的転写法)による多結晶シリコンウェーハの極低反射化

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DNAは、生きた細胞の中で不規則な塊を作っていた! -遺伝子情報や細胞関連疾患の理解につながる成果-

 DNAは規則正しくらせん状に折り畳まれて細胞の核の中に収められていると、長い間考えられてきました。ところが近年、この規則正しい構造は存在せず、不規則に核のなかに収納されていることがわかってきました。しかしながら、実際の収納の様子を「生きた細胞」で捉えた決定的な証拠はありませんでした。
 このたび永井健治教授は、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所・野崎慎研究員・前島一博教授らと理化学研究所・岡田康志チームリーダーの共同グループとの共同研究において、光学顕微鏡の分解能を超える超解像蛍光顕微鏡(1)を構築することで、生きた細胞内におけるDNAの収納の様子を観察することに世界で初めて成功しました。その結果、DNAは不規則に折りたたまれ、「クロマチンドメイン」とよばれる小さな塊を形作っていることがわかりました(図1)。このクロマチンドメインは細胞増殖、細胞分裂を通じて維持されていることから、遺伝情報の検索・読み出し・維持に重要な染色体ブロック(機能単位)として働くことが示唆されます。  本研究の結果によって、遺伝情報がどのように検索され、読み出されるのかについての理解がさらに進むとともに、DNAの折りたたみの変化で起きるさまざまな細胞の異常や関連疾患の理解につながることが期待されます。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

左は従来の生細胞の顕微鏡像(DNAを染色している)。中央は今回の研究で得られた超解像のクロマチン像。より細部の構造がはっきりと分かり、つぶつぶのクロマチンの塊(クロマチンドメイン)が観察された。(右)ヌクレオソーム(研究の背景参照)が塊を作ってドメインを形成すると考えられる。
左は従来の生細胞の顕微鏡像(DNAを染色している)。中央は今回の研究で得られた超解像のクロマチン像。より細部の構造がはっきりと分かり、つぶつぶのクロマチンの塊(クロマチンドメイン)が観察された。(右)ヌクレオソーム(研究の背景参照)が塊を作ってドメインを形成すると考えられる。

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映像解析と人工知能で酪農を変える!-乳牛の歩行映像から重大疾病の予兆を発見-

 八木康史教授らの研究グループは、酪農学園大学の中田健教授と共同で、人物歩行映像解析技術を乳牛に応用し、乳牛の歩行を撮影した映像から、乳牛の重要な疾病の一つである蹄の疾病(蹄病※1)を、軽症のうちに高精度(99%以上)で発見する手法を開発しました。
 蹄病の兆候は、乳牛の背中の湾曲や歩き方に現れることが知られており。これまで、乳牛の背中の湾曲度合いを画像から検出して蹄病を検出する手法が研究されていました。しかし、この手法で検出対象となるのは中程度~重度の蹄病でした。
蹄病は予防・早期発見が重要であるとされており、蹄病の有無は跛行スコアとよばれる5段階(1:正常、5:重度)のスコアで管理されています。本グループが開発した手法では、スコア1(正常)とスコア2(軽度の蹄病)以上の乳牛を分けることができます。
 今回の研究成果は、将来的に、ロボット搾乳機や給餌ロボットなどと協調する「スマート牛舎」(図1)の実現に大きく寄与し、酪農家の省力化だけでなく、酪農家が真に牛の健康や生産物の高品質化に専念できる、新時代の酪農業を実現することが期待されます。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図 分子一個から発生するテレグラフ雑音

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邪魔者ノイズを一分子計測に利用 ―”自然界の揺らぎ”を利用した生体模倣デバイス開発への応用に期待―

 赤井恵(大阪大学大学院工学研究科助教)及び桑原裕司(同工学研究科教授)らは、松本和彦(同産業科学研究所教授)及び小川琢治(同理学研究科教授)、葛西誠也(北海道大学量子集積エレクトロニクス研究センター教授)らの研究グループとの共同研究において、単一の単層カーボンナノチューブ素子に、あえて異物である大きな酸化還元活性を持つ有機分子を導入して素子雑音を発生させ、分子種毎に特性周波数をもつ雑音が発生することを発見しました。また、素子内の分子がたった一つであった場合、発生した雑音は2つの電流値を遷移するテレグラフ状の信号を示し、この2状態遷移が分子の酸化・還元状態の移り変わりを反映している(図)ことを明らかにしました。
 本研究成果により、これまで不可能と考えられていた一分子の電気化学反応計測が室温大気下で可能であることが示されました。また、雑音は電子デバイスの邪魔者ですが、生体内での雑音や揺らぎをうまく利用した情報の検出や伝達の仕組みが最近解明され始めており、雑音源としての分子の役割を明らかにしたことで、今後の生体機能模倣素子開発における応用が期待されます。
 本研究成果は、英国化学会誌「Nanoscale」に、2017年6月15日(木)(日本時間)に公開されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図 分子一個から発生するテレグラフ雑音
図 分子一個から発生するテレグラフ雑音

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世界初!水から水素を高効率で生成できる光触媒を開発 -太陽光広帯域利用による水素製造に期待-

 励起分子化学研究分野の真嶋哲朗教授らの研究グループは、黒リンを用いた光触媒を開発し、この光触媒を使用すると可視光・近赤外光の照射によっても、水から水素生成が効率よく起こることを世界で初めて見出しました。
 従来の光触媒では、太陽光の3-4%にすぎない紫外光を利用するため、水から水素への太陽光エネルギー変換効率は低いという問題がありました。
 今回、真嶋教授らの研究グループは、紫外・可視光のみならず近赤外光にも強い吸収をもつ層状の黒リンと、層状のチタン酸ランタン(La2Ti2O7)を数層からなる超薄膜とし、これらと数ナノメートルのサイズの可視光にも吸収をもつ金ナノ粒子との三成分からなる複合体を合成しました(図)。この複合体において、黒リンが可視光・近赤外光に応答する光増感剤として働き、また、金ナノ粒子が可視光に応答する光増感剤として働き、励起電子がチタン酸ランタンに移動し、プロトンの還元により水からの水素生成が効率よく起こることを世界で初めて明らかにしました。
 新しく開発した黒リン、金ナノ粒子、チタン酸ランタンの複合体を光触媒として使用することによって、太陽光からの広帯域波長光を利用して、水からの水素製造が可能になりました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図 黒リン、チタン酸ランタン、金ナノ粒子からなる光触媒の電顕写真。
図 黒リン、チタン酸ランタン、金ナノ粒子からなる光触媒の電顕写真。

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世界初!放熱から電気への変換効率を100倍以上にする理論を実証! 熱電デバイスへの応用に期待

 バイオナノテクノロジー研究分野の筒井准教授、谷口教授らの研究グループは、1分子素子の熱電変換性能における電極-分子接点構造の影響を、世界で初めて実験的に明らかにしました。平均値比で100倍以上の熱電変換性能が実証され、1分子接合の熱電デバイスへの応用が期待されます。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図 1分子接合の熱電計測の様子を表したイメージ図。
図 1分子接合の熱電計測の様子を表したイメージ図。

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永井健治教授と関谷毅教授が大阪大学栄誉教授の称号を付与されました!

 「大阪大学栄誉教授(Osaka University Distinguished Professor)」の称号付与は、本学教職員のモチベーションの向上と大学運営を支える優秀な人材の確保を図るため、平成29年度から実施する新たな表彰制度で、ノーベル賞、文化勲章、フィールズ賞、文化功労者、日本学士院賞、日本学士院エジンバラ公賞、日本芸術院賞、日本国際賞、紫綬褒章、京都賞、日本学術振興会賞その他これらに相当する著名な賞を受賞し、本学の教育、研究及び社会貢献の推進に先導的な役割を担う本学教授及び大阪大学特別教授の称号付与者に対して称号が付与されます。
 このたび、産業科学研究所では2名の教授が大阪大学栄誉教授の称号を付与されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

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水素生成量が1桁増加する光触媒の開発に成功 ―太陽光による水素製造の実現に新たな一歩―

 励起分子化学研究分野の真嶋哲朗教授は、神戸大学分子フォトサイエンス研究センターの立川貴士准教授らとの共同研究で光触媒作用による水素生成量が1桁増加する光触媒の開発に成功しました。
 水素は、再生可能エネルギーである太陽光と水から製造できる、次世代のエネルギー源として注目されており、水素を高効率に製造できる光触媒の開発が望まれています。しかしながら、従来の光触媒では、電子と同時に生成する正孔(電子が抜けた孔)のほとんどが触媒表面上で再結合して消失してしまうため、水から水素への光エネルギー変換効率が伸び悩んでいました。
 今回、電子と正孔を空間的に分離できる、光触媒の大きさ・配列の均一性をあえて崩したメソ結晶光触媒の合成方法を開発しました。その結果、従来をはるかに超える水素生成の光エネルギー変換効率(約7%)を有する光触媒の開発に成功しました。
 今後は、有用性が実証されたメソ結晶化技術を応用することで、太陽光による高効率な水素製造の実現を目指します。
 本研究成果は、平成29年4月6日(独国時間)にドイツ化学誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版で公開されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図 80℃という低温で個体のままカドミウムを吸収する層状物質 Ti2PTe2
「図:トポタクティックエピタキシャル成長によるSrTiO3メソ結晶の合成」

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大阪大学 産業科学研究所

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研究成果

research activities

大阪大学と富山市、IoT技術を用いたインフラ管理技術の研究開発を開始!

 関谷毅教授らの研究グループは、富山市(植野芳彦 建設技術統括監)と連携して、IoTセンサシステムを活用した橋梁、橋脚の効率的点検・管理手法の研究開発を開始しました。
 IoT技術を活用した社会インフラの保全、老朽化対策の研究開発は様々なところで進められています。本研究では大阪大学の関谷教授らが開発してきた多チャンネルのシート型センサシステムと富山市の持つ先進的な構造物の保全管理技術を融合し、大規模な構造物の全体系の挙動把握をきめ細かに計測し、状態に関する客観的な情報から保守点検の優先順位を自動的につけるAI技術へと発展させることを目的とします。
 また、超少子高齢社会を迎えた我が国において、老朽化が進む大規模社会インフラの「人手に頼らない管理手法の開発」は喫緊の課題であり、本取り組みを経て、さまざまな社会インフラへの展開も目指します。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

【記者会見】左:根津俊一特任研究員、中央:植野芳彦氏(富山市 建設技術統括監)、右:関谷毅教授
【記者会見】左:根津俊一特任研究員、中央:植野芳彦氏(富山市 建設技術統括監)、右:関谷毅教授

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nano tech 2018にて産学連携賞を受賞しました

 大阪大学(半導体量子科学研究分野(松本研究室))、村田製作所、中部大学、香川大学、京都府立医科大学からなるJST-CREST産学連携チームが、新炭素素材グラフェンを用いたインフルエンザウイルスセンサーを開発し、世界最大級のナノテクノロジー総合展であるnano tech 2018 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議にて展示を行いました。本センサーはインフルエンザウイルスのヒト感染性を高感度に鑑別し、創薬への応用も可能なもので、nano tech 2018における500社(750小間/24ヶ国・地域)の展示の中から産学連携賞に選ばれました。

【受賞イベント】
「この度はこのような賞を頂き、大変光栄に存じます。今回の受賞は我々のチームの産学連携による成果が評価されたもので、産業科学研究所の理念にも沿うものでありますので、なおのこと嬉しく思っています。今後、グラフェンバイオセンサーの構造や機構に関わる基盤的研究をさらに推し進めると共に、インフルエンザウイルスセンサーの実用展開・社会実装を目指して邁進して参ります。ご注目を頂ければ幸いです。」

写真

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高性能のアモルファス性太陽電池材料の開発に成功

 家裕隆准教授らの研究グループは、ドイツマックスプランク高分子研究所のBlom教授らと共にアモルファス特性を持つ有機薄膜太陽電池材料の高性能化に成功しました。(図1)
 これまで結晶性の太陽電池材料が高性能化に有利と考えられていましたが、アモルファス材料でも高性能化に道筋がつけられたことから、簡便に成膜ができるなどの特徴を活かした太陽電池素子の構築が期待されます。
 本研究成果は、ドイツ科学誌「Advanced Energy Materials」に、1月23日(火)午前8時(日本時間)に公開されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1)本研究で開発したアモルファスポリマー、使用した素子構造、太陽電池特性、および、薄膜特性
図1)本研究で開発したアモルファスポリマー、使用した素子構造、太陽電池特性、および、薄膜特性

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細胞分裂期の染色体凝縮はマグネシウムイオンの増加によって起こる

 細胞が分裂する際、ヒトでは全長2メートルにもおよぶゲノムDNAからコンパクトに凝縮した「染色体」と呼ばれるDNAの束が作られ、2つの細胞に正確に分配されていきます。半世紀以上前、細胞に大量に存在するマグネシウムイオン(Mg2+)がゲノムDNA凝縮の鍵となりうることが提唱されたことがありましたが、当時は細胞内Mg2+濃度を測定する手段が無かったため証明されぬまま忘れられていました。
 永井健治 教授は、国立遺伝学研究所の前島一博 教授、慶應義塾大学の岡浩太郎 教授、京都大学の今村博臣 准教授らの共同研究グループは、蛍光タンパク質技術を駆使してMg2+濃度の変化を高感度で感知できる蛍光センサー MARIO を開発し、生細胞内のMg2+濃度を蛍光イメージングにより可視化することに成功しました。そして細胞分裂の際にMg2+濃度が一過的に上昇することを示すとともに、負の電気を帯びているDNA同士の反発を弱め、染色体の凝縮を促進していることを明らかにしました(図1)。本研究によって、実際にMg2+が細胞のなかで染色体の凝縮にかかわっていることが初めて証明されました。
 染色体の形成の失敗はゲノムDNAの損傷を引き起こし、細胞に「死」や「がん化」などのさまざまな異常、さらには疾病をもたらすと考えられています。また細胞のなかに多量に存在するMg2+は多くのタンパク質の働きを助けており、欠乏するとさまざまな細胞異常が現れることが知られています。今回の蛍光センサー開発と生物学的知見の発見は、このような細胞の異常が起こるしくみの解明につながると期待されます。
 本研究成果は、2018年1月19日(金)(日本時間)に「Current Biology」に掲載されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1)細胞が分裂する際にMg2+が増加し、染色体の凝縮が促進される。ATPの減少によりMg-ATPから遊離したMg2+が供給される。
図1)細胞が分裂する際にMg2+が増加し、染色体の凝縮が促進される。ATPの減少によりMg-ATPから遊離したMg2+が供給される。

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H30年度学振特別研究員に学生5名が採択されました。

H30年度学振特別研究員の審査結果が開示され、 産業科学研究所では以下の5名が採択されました。

 (DC1)工学研究科 電気電子情報工学専攻 博士前期1年
 (DC1)生命機能研究科 生命機能専攻 博士(5年一貫)2年
 (DC1)理学研究科 生物科学専攻 博士前期2年
 (DC2)工学研究科 生命先端工学専攻 博士後期2年
 (DC2)工学研究科 精密科学・応用物理学専攻 博士後期1年

特別研究員制度は、日本学術振興会が日本の優れた若手研究者に対して、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与え、研究者の養成・確保を図るため、研究奨励金および研究費を支給する制度です。

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黒リン、バナジン酸ビスマス(BiVO4)のナノ材料からなる可視光応答型光触媒を開発

 真嶋哲朗教授、藤塚守准教授らの研究グループは、黒リンとバナジン酸ビスマス(BiVO4) を用いた光触媒を開発し、この光触媒を使用すると紫外光のみならず可視光の照射によっても、水から水素と酸素を同時に効率よく生成できることを世界で初めて見出しました。
 従来の光触媒では、太陽光の3-4%にすぎない紫外光を利用するため、水から水素への太陽光エネルギー変換効率が低いという問題や、犠牲剤やバイアス電位を必要とするため、実用性には程遠いなどの問題がありました。
 今回、真嶋教授、藤塚准教授らの研究グループは、紫外光のみならず可視光にも強い吸収をもつ数層からなる2次元層状構造の黒リンと、同じく数層からなる2次元層状構造のバナジン酸ビスマスとの2成分からなる複合体を合成しました。この複合体において、黒リンとバナジン酸ビスマスがともに可視光に応答して光励起されます。黒リンの光励起によって生成した電子がプロトンを還元して水素を生成し、一方、バナジン酸ビスマスの励起によって生成した正電荷が水を酸化して酸素を生成することを見出しました。波長420nm光の照射の場合、水素と酸素の生成量はそれぞれ160および102 μmol g-1 h-1でした。バナジン酸ビスマスの伝導帯から黒リンの価電子帯に電子が移動することで、水素と酸素を同時に効率よく生成する触媒反応が進行することがわかりました。
 この黒リンとバナジン酸ビスマスからなる光触媒は、犠牲剤やバイアス電位を必要とせず、可視光の照射下で水を完全分解する、画期的な光触媒であり、太陽光から可視光を利用して、水から水素と酸素を同時に生成することが可能になりました。
 本研究成果は、Angewandte Chemie International Edition に公開されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1 黒リンとバナジン酸ビスマス(BiVO4)の2成分からなる光触媒の電顕写真。HAADF-STEM (a), dark-field (b), HRTEM(c とd) 像。EDX 元素マッピング: P (e), Bi (f), O (g), V(h)。
図1 黒リンとバナジン酸ビスマス(BiVO4)の2成分からなる光触媒の電顕写真。HAADF-STEM (a), dark-field (b), HRTEM(c とd) 像。EDX 元素マッピング: P (e), Bi (f), O (g), V(h)。

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日本産ハナガサクラゲより開発!耐酸性緑色蛍光タンパク質Gamillus

 永井健治教授らの研究グループは、鶴岡市立加茂水族館から提供された日本産ハナガサクラゲから、pH4.5-9.0の細胞環境で安定して蛍光する、耐酸性の緑色蛍光タンパク質“Gamillus”の開発に成功しました。
 今回研究グループは、ハナガサクラゲの光る触手から、蛍光タンパク質をコードする遺伝子を新規に同定し、タンパク質工学を用いて遺伝子改良することで、耐酸性で単量体型、高輝度の緑色蛍光タンパク質Gamillus (Green fluorescent protein with acid-tolerance and monomeric property for illuminating soured environment の略)を開発しました(。一般によく使われる、緑色蛍光タンパク質EGFP(オワンクラゲ由来)がpH6.0以下の酸性環境で蛍光を失うのに対して、Gamillusは酸性環境でも安定した蛍光を放ち、細胞内のほぼ全てのpH環境で使用可能です(図2左)。Gamillusの立体構造をX線結晶解析法で決定したところ、一般的なGFPとは異なるトランス型の蛍光発色団を形成し、この構造が耐酸性メカニズムに寄与することを見いだしました。
 酸性細胞小器官は、2016年のノーベル医学・生理学賞受賞者の大隅良典博士が発見したオートファジーなど、多くの生命機能に密接に関わっています。しかし、既存の緑色蛍光タンパク質は、低pHで蛍光しないため、酸性細胞小器官内での使用が限られていました。Gamillusを用いることにより、マクロオートファジーにより蛍光タンパク質が細胞質から酸性細胞小器官のリソソーム輸送される過程を観察することが可能になりました(図2右)。将来的には、既存の耐酸性の青色・赤色蛍光タンパク質と組み合わせることで、複数種のタンパク質を別々の色で標識して、同時に追跡することが可能となります。Gamillusは、酸性環境中の未知の生命現象を発見するための基盤技術となり、医学・創薬研究にも大きく貢献すると期待されます。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1)Gamillus作成の概略図。ハナガサクラゲの触手より、蛍光タンパク質の遺伝子をクローニングし、タンパク質工学により明るさや単量体度を改良した。
図1)Gamillus作成の概略図。ハナガサクラゲの触手より、蛍光タンパク質の遺伝子をクローニングし、タンパク質工学により明るさや単量体度を改良した。(ハナガサクラゲは鶴岡市立加茂水族館の奥泉様よりご提供いただいた。)

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自分の腸内フローラを最大限活用できるトイレの研究開発が始動!

 生体分子制御科学研究分野の山崎聖司助教らの研究グループは、センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム※1における革新的な研究開発課題として、自らの腸内フローラ(腸内細菌叢)を判定することができるトイレと、腸内フローラを改善するためのサプリメントの開発を行います。
 近年、ヒト腸内に存在する様々な細菌の集合体である「腸内フローラ」が、ヒトの免疫力向上・抗がん作用・抗うつ作用・各種疾患の発症等に関わることが示され、当分野は非常に注目されています。
 しかしながら、一般の方が自分の腸内フローラを日常的に簡単に知る方法はなく、各々に適した食品・サプリメントを選択できていないという大きな問題があります。
 そこで当研究では、様々な生体情報を測定可能なハイスペックトイレを軸とした、「自らのもつ腸内フローラを最大限活用できる社会の実現」(図1)を最終的な目標として掲げ、基礎研究段階から実用化を目指した産学連携による研究開発を推進します。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1 ハイスペックトイレを用いた腸内フローラ活用システム
図1 ハイスペックトイレを用いた腸内フローラ活用システム

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AIが対話の流れから単語を学ぶ手法を開発

 駒谷和範教授らの研究グループは、対話システムにおいて、知らない単語に関する推定結果が正しいかどうかを対話の流れの中から判定する暗黙的確認という手法を新たに開発しました。
 近年、音声応答を行うロボットやアプリが数多く公開されていますが、その機能は基本的に事前にシステムに組み込まれた知識に基づいて、質問に答えるというものです。
 他にも、人間に質問して学ぶという手法もありますが、単純に知識を獲得しようとして、対話の最中にシステムが「××って何ですか?」のような質問ばかりを繰り返すと人間が対話を続ける意欲を削いでしまいます。
 駒谷教授らのグループは①直接的に尋ねずにその推定結果が正しいと仮定して話を続け、それに対する相手の反応も踏まえて正誤を判定する。②複数の人とのやりとりを総合して正誤判定の精度を上げる。の2つを組み合わせた手法を開発しました。①、②にはいずれも機械学習※2技術が使われています。
 この成果によって、開発者が事前に用意したり更新したりしたやりとりができるだけでなく、人間と話すにつれて自ら学んで次第に賢くなっていく対話システムの実現が期待されます。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1 暗黙的確認の例
図1 暗黙的確認の例

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プラスチックに数層の分子配向膜を形成する手法の開発とその応用に成功

 JST戦略的創造研究推進事業の一環として、東京大学の横田 知之 講師、染谷 隆夫 教授、東京工業大学の福島 孝典 教授、梶谷 孝 特任准教授、大阪大学の関谷 毅 教授らのグループは、プラスチック基板上に自己組織化単分子膜のような数層からなる分子配向膜の形成手法を開発し、有機集積回路への応用に成功しました。
 フレキシブルエレクトロニクスは、次世代のエレクトロニクスとして非常に注目を集めています。しかしながら、プラスチック基板上には金属や酸化物のように、薄い均一な分子配向膜(微細な溝のある板)を形成する技術がないために、エレクトロニクスの高性能化・高機能化が難しいという問題点がありました。本研究グループは、二次元に配向する3枚羽プロペラ状の分子であるトリプチセンを用いることで、プラスチック基板上に数層の分子配向膜を形成することに成功しました。さらに、この技術を有機集積回路に用いると、デバイスの電気特性が向上しました。今後、トリプチセンの分子設計を行うことで、新規分子デバイス創出など多様な応用展開が期待されます。
 本研究成果は、2017年12月18日(イギリス時間)に「Nature Nanotechnology」誌の オンライン速報版で公開されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1)トリプチセン分子を用いた有機トランジスタの絶縁膜表面の修飾
絶縁膜表面をトリプチセン分子で修飾することにより、有機トランジスタの移動度が大幅に向上した。
図1)トリプチセン分子を用いた有機トランジスタの絶縁膜表面の修飾 絶縁膜表面をトリプチセン分子で修飾することにより、有機トランジスタの移動度が大幅に向上した。

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多根正和准教授が、大阪大学賞を受賞しました

 先端ハード材料研究分野の多根正和准教授が、大阪大学賞を受賞しました。大阪大学賞は、今年度から新たに創設された3つの部門(大学運営・教育貢献・若手教員)からなる賞で、本学教職員のモチベーションを一層高めるとともに、いわゆる「縁の下の力持ち」的存在の教職員にもスポットを当てることを目的として実施するものです。
 八木教授らの研究グループでは、独自の深層学習モデル(図1)の適用により、歩く向きが異なる映像でも高精度の歩容認証性能を実現しました。
 多根准教授は、単結晶育成を必要としない単結晶弾性率決定法の構築に基づく生体および構造材料の研究を展開しており、2016年9月に第13回村上奨励賞、今年5月に本多記念会第38回本多記念研究奨励賞を受賞するなど、産業科学研究所において活躍する若手研究者の一人です。


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高額医療を必要とする希少難病「キャッスルマン病」が指定難病に追加されました

 生体分子制御科学研究分野の吉崎和幸特任教授がリーダーとして研究を進めている特発性多中心性キャッスルマン病が難病医療法に基づき指定難病に指定されました。
 キャッスルマン病は1956 年に米国のキャッスルマン博士によって提唱された病気で、60年経った現在も病因は不明で確固たる治療法もない希少難病です。日本の患者数は推定1,500人と言われています。
 指定難病に承認されたことにより、患者への経済負担が大いに軽減され、また、より適切な治療が可能となることが期待されます。

詳細はこちらをご覧ください。

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黒田俊一教授が開発した嗅覚受容体解析技術が大賞を受賞しました。

 黒田俊一教授が開発した嗅覚受容体解析技術の社会実装を担う大阪大学発ベンチャー㈱香味醗酵が池田泉州銀行主催「第17回ニュービジネス助成金コンペ」にて177件中1位で大賞となりました。

黒田教授の研究内容についてはこちらをご覧ください。

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「未来科学捜査」歩容鑑定 〜深層学習でどんな向きの人物も認証可能に〜

 八木康史教授らの研究グループでは、AI(人工知能)技術の中でも特に注目を集めている深層学習※1を用いた高精度歩容認証技術を開発しました。
 人の歩き方(歩容特徴)は、服装や髪型の差異では変化せず、防犯カメラ等で遠方から撮影した低解像度の映像からでも抽出可能であることから、個人認証を行う上で非常に実用的な特徴として期待されています。
 しかし、カメラに対して人の歩く向きが異なると、人の見え方が大きく異なるため、従来の技術では歩容認証が困難でした。
 八木教授らの研究グループでは、独自の深層学習モデル(図1)の適用により、歩く向きが異なる映像でも高精度の歩容認証性能を実現しました。
 本研究成果は、2017年11月8日に情報処理学会 コンピュータビジョンとイメージメディア研究会(CVIM研究会)での発表を予定しています。また、米国科学誌「IEEE Transactions on Circuits and Systems for Video Technology」に2018年1月(オンライン速報版は2017年10月9日公開済み)に公開されます。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1: 歩く向きの違いに応じた深層学習モデル
図1: 歩く向きの違いに応じた深層学習モデル

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世界初!細胞の集合状態を三次元の塊と二次元の単層状態との間で自在に制御することを可能とする新規高分子を開発

 永井健治教授、東京工業大学生命理工学研究科の丸山厚教授、嶋田直彦助教、九州大学先導物質化学研究所の木戸秋悟教授らの共同研究グループは、物質・デバイス領域共同研究拠点ならびに人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンス活動における研究成果として、培養した細胞の集合状態を三次元の塊と二次元の単層状態との間で自在に制御することを可能とする新規高分子を用いた培養技術を世界で初めて開発しました。  培養した細胞は再生医療などの近年の細胞を活用した医療技術においてますます重要な医療資源です。そしてそれらの細胞を適切に集めて培養し、三次元的な形を与えたり、その形を自在に設計する技術は、細胞からなる組織や臓器を構築する上で極めて大切な基盤技術の一つとなっています。
 一方、従来の典型的な細胞培養法では、細胞培養皿を用いた二次元的な平面培養法や、浮遊培養などを用いる三次元の塊(スフェロイド)状培養などが多用されますが、これらの間での自在な転換技術は開発されていませんでした。
 今回、永井教授らの研究グループが独自に開発した、尿素基を側鎖にもつウレイド高分子(図1)を細胞培養に応用することで、細胞の単層状態/スフェロイド状態の迅速な可逆的転換が可能となることが明らかとなりました(図2)。この技術は単層培養細胞を容易にスフェロイドへ誘導することを可能とするばかりでなく、逆にスフェロイドとしたのち適切なタイミングで二次元層状組織へと導くといった、従来にはなかった細胞集合体の構造制御法として再生医療分野への展開が期待されます。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1 ウレイド高分子の構造式
図1 ウレイド高分子の構造式

図2 ウレイド高分子の存在下において、単層培養状態であった細胞は冷却によってスフェロイドへと形態変化する。加熱によってスフェロイドは単層培養状態へと戻る。
図2 ウレイド高分子の存在下において、単層培養状態であった細胞は冷却によってスフェロイドへと形態変化する。加熱によってスフェロイドは単層培養状態へと戻る。

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高品質金属酸化物ナノワイヤの低温合成に成功 – 太陽電池、リチウムイオンバッテリー応用に期待-

 竹田精治教授・吉田秀人准教授らの研究グループと九州大学先導物質化学研究所の柳田剛教授らの研究グループは、金属酸化物ナノワイヤをVLS法により合成する際の温度を下げる手法を開発しました。  金属酸化物ナノワイヤは太陽電池、リチウムイオンバッテリー、スーパーキャパシタ、不揮発性メモリなど、様々な用途への応用が期待されています。
 VLS法は高品質な金属酸化物ナノワイヤを合成することのできる手法ですが、合成に必要な温度の高さ(600~1000℃)が問題です。
 今回、研究グループは原料の供給レートを厳密に制御することで、金属酸化物ナノワイヤを400℃以下の低温で合成することに成功しました。本手法を用いることで、様々な金属酸化物の高品質ナノワイヤを熱的に不安定な基板上にも合成することが可能となります。これにより、金属酸化物ナノワイヤの応用範囲を広げることが期待されます。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1 金属酸化物ナノワイヤのVLS法による低温合成の概略図。
原料供給レートを小さくすることで合成温度下げることができる。
図1 金属酸化物ナノワイヤのVLS法による低温合成の概略図。 原料供給レートを小さくすることで合成温度下げることができる。

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嗅覚IoTセンサーの業界標準化推進に向けた「MSSフォーラム」発足 ~香りやニオイの基準モノサシ!」実用化に向けて~

 鷲尾隆教授は、国立研究開発法人物質・材料研究機構(以下NIMS)、 京セラ株式会社、日本電気株式会社、住友精化株式会社、旭化成株式会社、NanoWorld AGの7機関と共同で、超小型センサー素子「MSS (Membrane-type Surface stress Sensor / 膜型表面応力センサー)」を用いた嗅覚IoTセンサーの業界標準化(de facto standard)推進に向けた“公募型実証実験活動”を行う「MSS(エムエスエス)フォーラム」を11月1日に発足させました。
  MSSとは、NIMS国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)の吉川元起グループリーダーを中心とした国際共同研究によって、2011年に開発されたセンサー素子です。このMSSのMembrane部分に被覆してガス分子を吸着させる「感応膜」には、有機・無機問わず様々な材料が利用可能であるため、汎用性が非常に高く、香りやニオイの元となる多様なガス分子に対応可能です。その上、超小型・超高感度であるため、食品・環境・医療・安全など様々な分野への応用が期待されています。2011年の開発後、嗅覚センサーとしての基礎研究を経て、2015年には、MSSの実用化を加速すべく、産学官共同で、要素技術の研究開発を行う「MSSアライアンス」を発足させ活動を継続してきました。
 MSSアライアンスでの研究活動を通して、センサーデバイス開発、感応膜材料の開発、精密評価システム開発、計測データ分析・解析環境の開発など、重要要素技術の研究開発において顕著な成果を得ることが出来ました。2017年4月からは、旭化成が新たに参画し、ガス分子を吸着させる感応膜材料開発および感応膜材料塗布技術開発を担当しています。さらに、これらの成果を基に招聘参加企業による10件以上の実証実験が実施されており、様々な香りやニオイに対する高い感度と識別能力が次々に実証されています。
 以上の様な共同研究活動の成果を踏まえて実用化を加速するため、そして、様々な分野からの「MSS嗅覚IoTセンサー」を実際に使用してみたいとの声にお応えするため、オープンな実証実験を行う「MSSフォーラム」を11月1日付で設置し、参画する企業を公募いたします。MSSアライアンス7機関で、引き続き要素技術の確立を目指しつつ、MSSフォーラムに参画された企業・研究機関とともに、多種多様な環境下における有効性実証実験を推進することで、「MSS嗅覚IoTセンサー」技術の業界標準化の推進を図ります。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図

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固体中で光の情報を制御する新現象を発見 -光デバイスの多機能化に期待-

 張奕勁研究員は東京大学大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センターの岩佐義宏 教授(理化学研究所創発物性科学研究センター 創発デバイス研究チーム チームリーダー兼任)、同研究科附属量子相エレクトロニクス研究センターの井手上敏也 助教、同研究科物理工学専攻の恩河大 大学院生らの研究グループと共同で、新たな二次元物質として注目される二硫化モリブデン(MoS2)の単層を用いて、入射光の偏光情報を保った励起子(れいきし)を伝達し、選択的に空間分離することが可能な新現象(励起子ホール効果)を発見しました。
 フォトダイオードやLEDを構成する半導体の受光・発光において、励起子といわれる複合粒子が主要な役割を果たします。励起子は素子の電気特性と光を結びつける概念として20世紀半ばから研究が続いてきましたが、その光のエネルギー・情報を受け取った励起子そのものを伝達・制御し、光エレクトロニクスにつなげようとする研究は極めて少なく、一方で、固体中の様々な粒子の軌道を曲げて制御するホール効果と呼ばれる現象は広く研究されてきましたが、励起子については全く報告がありませんでした。
 今回は単層二硫化モリブデン内の励起子が光の偏光情報と結合することに着目し、その特異な励起子が磁場を加えなくてもホール効果を示すことを発見しました。これは光の偏光情報を固体中で励起子として選択的に輸送できることを示しており、励起子を直接的に用いた新たな光エレクトロニクスなどの基礎となりうる結果です。
 本研究成果は、英国科学雑誌『Nature Materials』のオンライン版(平成29年10月2日版)に掲載されました。
 本研究は日本学術振興会科学研究費補助金 特別推進研究(No. 25000003)、挑戦的研究(萌芽)(No. 17K18748)、研究活動スタート支援(No. 15H06133)の支援を受けて行われました。

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図1:励起子ホール効果の観測
今回の研究で用いたサンプルの写真が左図。実線で囲まれた部分が単層MoS2サンプル。右図が測定結果で、図の上方から下方に向かって励起子が流れている。その際にゼロ磁場下でも、K励起子(赤)が右に、K’励起子(青)が左に曲がって流れていることが今回の研究で分かった。
図1:励起子ホール効果の観測 今回の研究で用いたサンプルの写真が左図。実線で囲まれた部分が単層MoS2サンプル。右図が測定結果で、図の上方から下方に向かって励起子が流れている。その際にゼロ磁場下でも、K励起子(赤)が右に、K’励起子(青)が左に曲がって流れていることが今回の研究で分かった。

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世界最高感度の電気計測システムを開発

 内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の宮田プログラム・マネージャーの研究開発プログラムの一環として、名古屋大学大学院工学研究科(研究科長:新美 智秀)生命分子工学専攻の馬場 嘉信(ばば よしのぶ)教授、安井 隆雄(やすい たかお)助教、矢崎 啓寿(やさき ひろとし)研究員らが、九州大学先導物質化学研究所柳田 剛(やなぎだ たけし)教授、大阪大学産業科学研究所川合 知二(かわい ともじ)特任教授との共同研究により、世界最高感度の電気計測システムを開発し、微粒子や微生物、DNA分子の高感度電流計測を可能としました。
 電流計測システムは、電気シグナルに応じたサイズ検出機能があるため、様々な分野において、効率良く物質のサイズ計測を実現する小型の計測システムとして期待されています。しかし、従来の電流計測システムには、計測したい物質の大きさに合わせて計測部の大きさを変更する必要があり、サイズ検出範囲が狭く、様々なサイズの微粒子・微生物・DNA分子を1つの計測部で検出するのが困難であるという問題が生じていました。
 そこで、本研究では、内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の取り組みにおいて、ブリッジ回路を用いたバックグラウンド電流抑制技術(µA(マイクロアンペア)からpA(ピコアンペア)まで)と、これまでに開発したマイクロ流体技術を用いて、従来の電流計測システムの計測部より、格段に大きい計測部でナノ粒子の検出に成功し、次世代の電流計測システムの基盤技術を確立しました。環境測定デバイス、生命科学研究、個別化医療など幅広い分野への貢献が期待できます。
 今回の研究成果は、2017年9月30日発行の米国国際学術誌『Journal of the American Chemical Society』誌(電子版)に掲載されました。

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図1 ブリッジ回路を搭載した電流計測システムの概念図とその計測システムを 用いたポリスチレン粒子、細菌細胞、がん細胞、DNA分子の検出結果
図1 ブリッジ回路を搭載した電流計測システムの概念図とその計測システムを 用いたポリスチレン粒子、細菌細胞、がん細胞、DNA分子の検出結果

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世界初!可視光・近赤外光照射により、 水から水素を高効率で生成する完全金属フリー光触媒を開発

 励起分子化学研究分野の真嶋哲朗教授、藤塚守准教授らの研究グループは、黒リンとグラファイト状窒化炭素(g-C3N4)の二成分からなる複合体を用いた光触媒を開発し、この光触媒を使用すると可視光・近赤外光の照射によっても、水から水素生成が効率よく起こることを世界で初めて見出しました。この触媒は金属を全く使用していない、環境に好ましい、完全金属フリーの触媒です。
 従来の光触媒では、太陽光に4%程度しか含まれていない紫外光を利用するため、水から水素への太陽光エネルギー変換効率は低く、実用からは遠いという問題がありました。
 今回、真嶋哲朗教授、藤塚守准教授らの研究グループは、紫外・可視光のみならず近赤外光にも強い吸収をもつ層状の黒リンと、数層からなるg-C3N4との二成分からなる複合体を合成しました(図1)。この複合体に可視光・近赤外光を照射すると、複合体の光触媒作用によって、水から水素が効率的に生成します。この複合体において、黒リンが可視光・近赤外光に応答する光増感剤として働き、また、g-C3N4が可視光に応答する光増感剤として働きます。黒リンとg-C3N4はともに層状構造のためその界面を形成しやすく界面間での電荷移動が容易になりその結果電荷分離が効率的に進行します。特に、黒リンとg-C3N4との界面にP-N結合が生成して電子捕捉部位となり、水から水素が生成することは、本研究成果により世界で初めて明らかになりました。
 この可視光・近赤外光駆動型で水から水素を生成する光触媒は、金属を全く使用しない完全金属フリー光触媒としては世界初めての例です。新しく開発した黒リンとg-C3N4の複合体を光触媒として使用することによって、太陽光からの広帯域波長光を利用して、水からの水素製造が可能になりました。
 本研究成果は、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」に、9月21日に公開されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1
黒リンとグラファイト状窒化炭素(g-C3N4)の二成分複合体からなる光触媒の透過型電子顕微鏡写真。
図1 黒リンとグラファイト状窒化炭素(g-C3N4)の二成分複合体からなる光触媒の透過型電子顕微鏡写真。

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磁性分子中の複雑な電子スピン状態の新たな高精度計算手法を開発 -分子スピントロニクス素子開発への応用に向けて-

 小口多美夫教授、三重大学大学院工学研究科の名和憲嗣大学院生と同大学の中村浩次准教授、ウィスコンシン大学のWeinert(ワイナート)教授らの研究グループは、磁性分子材料の電子及びスピン状態を高精度に解析・予測するための第一原理計算手法の開発に成功しました。磁性分子が持つ物性の起因となるd軌道やf軌道の電子スピン状態は、従来の第一原理的手法では計算精度に信頼性を欠く場合があり、高精度な磁性分子の物性予測を可能とする第一原理計算手法の開発が求められていました。本成果により、分子スピントロニクス素子開発の発展に向けた新規磁性分子素子を予測するための、重要な理論的手法が確立されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1
(a)メタロセン分子構造と配位子場分裂した遷移金属のd軌道。 (b)Mn原子を含む系(d5)における考えられる電子スピン状態の一例。
図1 (a)メタロセン分子構造と配位子場分裂した遷移金属のd軌道。 (b)Mn原子を含む系(d5)における考えられる電子スピン状態の一例。

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世界初!シリコン断崖側面構造の原子レベル観察に成功

 田中秀和教授、服部梓助教の研究グループ、及び奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科の大門寛教授、服部賢准教授、楊昊宇(大学院生)、大畑慧訓(大学院生)、竹本昌平(大学院生)のグループは共同で、原子分解能をもつ走査トンネル顕微鏡を用いて、デバイス加工後のシリコン切削側面表面を原子レベルで平坦かつ清浄にし得ることを世界で初めて明らかにしました(図1)。
 これまでデバイス加工後の側面表面の顕微評価はナノメートル程度の分解能をもつ走査電子顕微鏡でしかなされておらず、精密なデバイス加工を施しても、顕微プローブが加工構造と干渉するため、原子レベルでの評価はなされておらず、デバイス性能を十分に発揮できていませんでした。
 今回、本研究グループは、デバイス形状を顕微プローブと干渉しない加工構造に調整することにより、原子レベルでのデバイス加工側面の顕微観察に成功し、加工側面表面を平坦かつ清浄にし得ることを示しました。これにより、原子レベルでの側面加工の確度の向上、及び精密側面を利用した立体超集積回路の構築の推進が期待されます。
 本研究成果は、科学誌「Japan Journal of Applied Physics」に近日中に公開予定です。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1
シリコン基板エッチング処理・加熱処理後の切削側面の走査トンネル顕微鏡像
図1 シリコン基板エッチング処理・加熱処理後の切削側面の走査トンネル顕微鏡像

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らせん型機能分子の実用的合成法を確立

 鈴木健之准教授、周大揚助教らの研究グループは、岩手医科大学薬学部河野富一教授、辻原哲也助教との共同研究により、らせん型機能分子の実用的合成法を確立しました。
 この基盤技術を基に創製したらせん型不斉配位子は高い不斉認識能を有することが明らかとなりました。また含硫黄複素環を有するヘテロヘリセンの合成にも成功しました。
 ベンゼン環をオルト位で縮合すると6個で一周し、ヘリセンというらせん型構造をとる分子になります。このらせん構造由来の右巻き、左巻き分子は光学的に逆の性質を示します。
 このたび、本研究グループは、ヘリセンの内側に酸素官能基を含む基盤骨格である1-[6]へリセノールを世界で初めて合成し、光学活性体として数グラムスケールで合成する方法を発表しました。この技術を基に合成された、リン元素を含有するハイブリッドヘリセンは、パラジウムを用いる不斉触媒反応の不斉配位子として高い選択性を示します。また今回、硫黄元素を含むヘテロヘリセンの合成にも成功しました。(図)硫黄元素を[6]ヘリセンの内側に含む化合物は世界初の例となります。
 このようにらせん型構造を有する機能性分子の鍵化合物合成が可能になったことで、従来の不斉炭素を基盤とする機能性材料とは異なる性質を有する機能性分子が開発されると期待されます。 本研究成果は、米国科学誌「Organic Letters」に、6月7日(水)に公開されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図

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谷口 正輝教授が「分子科学国際学術賞」を受賞しました。

 「分子科学国際学術賞」にバイオナノテクノロジー研究分野の谷口正輝教授が受賞されました。この賞は、分子科学研究分野において量ではなく質的に優れた研究業績をあげ、国際的に高く評価されている分子科学会会員に授与されるものです。 表彰式は、分子科学会会期中の9月15日、東北大学川内北キャンパスで行われます。

詳細はこちらをご覧ください。

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次世代パワー半導体のCu電極に対応 -低コストで高パワー変換率電力変換器の小型化にはずみ-

 菅沼克昭教授が開発した銀粒子焼結接合は、低コストでありながら、低温、低圧、大気中の条件でダイアタッチを可能にし、しかも250℃を超える耐熱で高信頼性を実現することから、次世代パワー半導体ダイアタッチの本命として世界に普及が始まっています。
 昨年、その接続メカニズムをナノレベルで解明しましたが、技術の鍵は銀と酸素の反応にあり、このため接合電極は銀に限られていました。
 一方、Si(シリコン)やSiC(シリコンカーバイド)などの半導体、DBC基板などの電極にはニッケルや銅が用いられることが多く、これら電極への接合の実現を国内企業は強く望んでおり、さらに、シート接合ができることで適用範囲が一気に拡大します。
 これらの課題解決のために、科学技術振興機構(JST)のALCAプロジェクトの一環として株式会社ダイセルとの共同研究により銀の界面形成を活性化する溶剤の開発を進め、これまでより低温である200℃においても多種類の電極の接合を実現する無加圧焼結接合技術を可能にしました。この新ペースト(溶剤)では、銀の2倍程度の抵抗値3×10-6Ω・cmという、これまでナノ銀ペーストでしか得られない低抵抗値を得ることができます。
 また、従来のパワー半導体プロセスでは、ペーストを用いずシートをダイアタッチ接合材料として使う場合も多数あります。菅沼教授らのグループでは、銀シート表面に簡単な研削加工を施すことで表面活性化させる技術を開発しました。この加工組織導入によって、200℃から250℃の低温度域で銀シート表面にヒロック*4を多数形成することが確認され、新たなシート接合技術へ展開できることを確認しました(図1参照)。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1 加工組織導入銀シートを用いて250℃でリードフレームへ接合したSiダイアタッチの例
図1 加工組織導入銀シートを用いて250℃でリードフレームへ接合したSiダイアタッチの例

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全ての匂いを数値化する技術の社会実装開始 -新しい匂いをデザインするサービスはじまる-

 黒田俊一教授らの研究グループは、独自開発した全自動1細胞解析単離装置を駆使することで、特定の匂い分子に反応して活性化する嗅覚受容体群を網羅的に単離する唯一の方法を2016年に世界に先駆けて開発しました(Scientific Reports Vol. 6 (2016) p.19934)。
 医薬品、化粧品、香料、食品、酒類などの各業界において、任意の匂いが、どの嗅覚受容体群を活性化するかを明らかにする需要は高まってきており、社会還元の一つとして、この度、株式会社香味発酵と共同で、産業上有用な匂いを嗅覚受容体で数値化してデータベースを構築し、新しい匂いをデザインする事業展開が開始されました。
 現在、①任意の匂い(混合物でも可)による嗅覚受容体群(ヒト約400種類、マウス約1000種類)の活性化度合いを迅速測定する方法、②任意の匂いを嗅覚受容体群活性化度合いで表現する方法(右上図)、③求める匂いを他の匂い分子群で迅速に再構成する方法(右下図)を特許申請しています。
 黒田教授らの開発した嗅覚受容体を発現する細胞群から任意の匂い(混合物を含む)に反応する細胞のみを全て迅速に取り出す方法を駆使して、ニーズに即した匂いのデータベース構築を進めており、蓄積したデータを活用することにより、我々の匂いの感じ方に基づく匂いの要素分解及び再構成を行います。

詳細はプレスリリースをご覧ください。


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新機能デバイスへの応用に期待-酸化物セラミックスの3次元的立体構造作製に成功-

 田中秀和教授、神吉輝夫准教授とイタリア・ジェノバ大学の研究グループは、金属-絶縁体相転移に伴う巨大な抵抗変化を示す機能性酸化物セラミックス※2において、新たな3次元造形の開発により、単結晶酸化物フリースタンディングナノワイヤ※3の作製に成功しました(図1)。これにより、従来の100分の1の消費電力で3桁の電気抵抗スイッチングや、新しい原理に基づく高周波アクチュエータの実現に世界で初めて成功しました。
 今回、田中教授らの研究グループは、酸化マグネシウム基板上に、高品質酸化バナジウム単結晶を成長させる技術を開発し、MgO基板をエッチングにより取り除く技術の開発により、単結晶酸化物フリースタンディングナノワイヤを実現したものです。これにより、高感度センサ、強磁性や超伝導など多様な機能を示す酸化物セラミックスを利用した新機能NEMS(ナノ電気機械結合システム)デバイス※5など各種の新規デバイスの創製が期待されます。
 本研究成果は、日本科学誌「Appl. Phys. Exp. 10 (2017) 033201 (Published 22 February 2017)」に掲載され、また、ドイツ科学誌「Advanced Materials」にも7月に掲載されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1 単結晶酸化バナジウムの自立(フリースタンディング)ナノワイヤの走査型電子顕微鏡像
図1 単結晶酸化バナジウムの自立(フリースタンディング)ナノワイヤの走査型電子顕微鏡像

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単純構造のシリコン太陽電池で変換効率20%達成 -発電コスト低減に大きく寄与-

 大阪大学産業科学研究所の小林光教授と今村健太郎助教らの研究グループは、10秒~30秒の簡単な溶液処理によって、3%以下の反射率※1のシリコンウェーハを形成する方法(図1参照)を開発しました。この技術を結晶シリコン太陽電池に用いて、反射防止膜を形成しない極単純な構造の太陽電池で、20%の変換効率を達成しました。 
 従来技術では、シリコン表面にピラミッド構造※2を形成することで低反射にしていましたが(図2左図参照)、低反射処理に約20分を要し、そのうえ反射率は10%以上とあまり低くすることはできませんでした。その結果、プラズマCVD法※3等の高価な方法を用いて反射防止膜を形成する必要がありました。
今回開発した技術により、太陽電池の製造コスト低減が期待されます。
 開発した技術では、シリコンウェーハを過酸化水素水(H2O2)とフッ化水素酸水溶液(HF)の混合溶液に浸し、白金触媒体に10~30秒接触させるだけで、瞬時に表面にシリコンナノクリスタル層※4が形成され、極低反射化します。どの方向から入射する光もほとんど反射しませんので(図2右図参照)、反射防止膜を形成する必要がありません。一方、シリコンナノクリスタル層は莫大な表面積を持ちますので、効果的な表面パッシベーション※5処理を行わなければ、光生成した電子とホールが表面で再結合して消滅し、変換効率が低下します。再結合を防止するために、リン珪酸ガラス法(PSG法)という新規の方法を開発しました(図3)。PSG法を用いない場合の太陽電池の変換効率は約15%でしたが、これを用いることによって20%にまで向上しました。
本研究成果の一部は、学術誌「Solar RRL」2017年7月号に掲載されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図1 開発した溶液処理(化学的転写法)による多結晶シリコンウェーハの極低反射化
図1 開発した溶液処理(化学的転写法)による多結晶シリコンウェーハの極低反射化

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DNAは、生きた細胞の中で不規則な塊を作っていた! -遺伝子情報や細胞関連疾患の理解につながる成果-

 DNAは規則正しくらせん状に折り畳まれて細胞の核の中に収められていると、長い間考えられてきました。ところが近年、この規則正しい構造は存在せず、不規則に核のなかに収納されていることがわかってきました。しかしながら、実際の収納の様子を「生きた細胞」で捉えた決定的な証拠はありませんでした。
 このたび永井健治教授は、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所・野崎慎研究員・前島一博教授らと理化学研究所・岡田康志チームリーダーの共同グループとの共同研究において、光学顕微鏡の分解能を超える超解像蛍光顕微鏡(1)を構築することで、生きた細胞内におけるDNAの収納の様子を観察することに世界で初めて成功しました。その結果、DNAは不規則に折りたたまれ、「クロマチンドメイン」とよばれる小さな塊を形作っていることがわかりました(図1)。このクロマチンドメインは細胞増殖、細胞分裂を通じて維持されていることから、遺伝情報の検索・読み出し・維持に重要な染色体ブロック(機能単位)として働くことが示唆されます。  本研究の結果によって、遺伝情報がどのように検索され、読み出されるのかについての理解がさらに進むとともに、DNAの折りたたみの変化で起きるさまざまな細胞の異常や関連疾患の理解につながることが期待されます。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

左は従来の生細胞の顕微鏡像(DNAを染色している)。中央は今回の研究で得られた超解像のクロマチン像。より細部の構造がはっきりと分かり、つぶつぶのクロマチンの塊(クロマチンドメイン)が観察された。(右)ヌクレオソーム(研究の背景参照)が塊を作ってドメインを形成すると考えられる。
左は従来の生細胞の顕微鏡像(DNAを染色している)。中央は今回の研究で得られた超解像のクロマチン像。より細部の構造がはっきりと分かり、つぶつぶのクロマチンの塊(クロマチンドメイン)が観察された。(右)ヌクレオソーム(研究の背景参照)が塊を作ってドメインを形成すると考えられる。

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映像解析と人工知能で酪農を変える!-乳牛の歩行映像から重大疾病の予兆を発見-

 八木康史教授らの研究グループは、酪農学園大学の中田健教授と共同で、人物歩行映像解析技術を乳牛に応用し、乳牛の歩行を撮影した映像から、乳牛の重要な疾病の一つである蹄の疾病(蹄病※1)を、軽症のうちに高精度(99%以上)で発見する手法を開発しました。
 蹄病の兆候は、乳牛の背中の湾曲や歩き方に現れることが知られており。これまで、乳牛の背中の湾曲度合いを画像から検出して蹄病を検出する手法が研究されていました。しかし、この手法で検出対象となるのは中程度~重度の蹄病でした。
蹄病は予防・早期発見が重要であるとされており、蹄病の有無は跛行スコアとよばれる5段階(1:正常、5:重度)のスコアで管理されています。本グループが開発した手法では、スコア1(正常)とスコア2(軽度の蹄病)以上の乳牛を分けることができます。
 今回の研究成果は、将来的に、ロボット搾乳機や給餌ロボットなどと協調する「スマート牛舎」(図1)の実現に大きく寄与し、酪農家の省力化だけでなく、酪農家が真に牛の健康や生産物の高品質化に専念できる、新時代の酪農業を実現することが期待されます。

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図 分子一個から発生するテレグラフ雑音

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邪魔者ノイズを一分子計測に利用 ―”自然界の揺らぎ”を利用した生体模倣デバイス開発への応用に期待―

 赤井恵(大阪大学大学院工学研究科助教)及び桑原裕司(同工学研究科教授)らは、松本和彦(同産業科学研究所教授)及び小川琢治(同理学研究科教授)、葛西誠也(北海道大学量子集積エレクトロニクス研究センター教授)らの研究グループとの共同研究において、単一の単層カーボンナノチューブ素子に、あえて異物である大きな酸化還元活性を持つ有機分子を導入して素子雑音を発生させ、分子種毎に特性周波数をもつ雑音が発生することを発見しました。また、素子内の分子がたった一つであった場合、発生した雑音は2つの電流値を遷移するテレグラフ状の信号を示し、この2状態遷移が分子の酸化・還元状態の移り変わりを反映している(図)ことを明らかにしました。
 本研究成果により、これまで不可能と考えられていた一分子の電気化学反応計測が室温大気下で可能であることが示されました。また、雑音は電子デバイスの邪魔者ですが、生体内での雑音や揺らぎをうまく利用した情報の検出や伝達の仕組みが最近解明され始めており、雑音源としての分子の役割を明らかにしたことで、今後の生体機能模倣素子開発における応用が期待されます。
 本研究成果は、英国化学会誌「Nanoscale」に、2017年6月15日(木)(日本時間)に公開されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図 分子一個から発生するテレグラフ雑音
図 分子一個から発生するテレグラフ雑音

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世界初!水から水素を高効率で生成できる光触媒を開発 -太陽光広帯域利用による水素製造に期待-

 励起分子化学研究分野の真嶋哲朗教授らの研究グループは、黒リンを用いた光触媒を開発し、この光触媒を使用すると可視光・近赤外光の照射によっても、水から水素生成が効率よく起こることを世界で初めて見出しました。
 従来の光触媒では、太陽光の3-4%にすぎない紫外光を利用するため、水から水素への太陽光エネルギー変換効率は低いという問題がありました。
 今回、真嶋教授らの研究グループは、紫外・可視光のみならず近赤外光にも強い吸収をもつ層状の黒リンと、層状のチタン酸ランタン(La2Ti2O7)を数層からなる超薄膜とし、これらと数ナノメートルのサイズの可視光にも吸収をもつ金ナノ粒子との三成分からなる複合体を合成しました(図)。この複合体において、黒リンが可視光・近赤外光に応答する光増感剤として働き、また、金ナノ粒子が可視光に応答する光増感剤として働き、励起電子がチタン酸ランタンに移動し、プロトンの還元により水からの水素生成が効率よく起こることを世界で初めて明らかにしました。
 新しく開発した黒リン、金ナノ粒子、チタン酸ランタンの複合体を光触媒として使用することによって、太陽光からの広帯域波長光を利用して、水からの水素製造が可能になりました。

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図 黒リン、チタン酸ランタン、金ナノ粒子からなる光触媒の電顕写真。
図 黒リン、チタン酸ランタン、金ナノ粒子からなる光触媒の電顕写真。

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世界初!放熱から電気への変換効率を100倍以上にする理論を実証! 熱電デバイスへの応用に期待

 バイオナノテクノロジー研究分野の筒井准教授、谷口教授らの研究グループは、1分子素子の熱電変換性能における電極-分子接点構造の影響を、世界で初めて実験的に明らかにしました。平均値比で100倍以上の熱電変換性能が実証され、1分子接合の熱電デバイスへの応用が期待されます。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図 1分子接合の熱電計測の様子を表したイメージ図。
図 1分子接合の熱電計測の様子を表したイメージ図。

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永井健治教授と関谷毅教授が大阪大学栄誉教授の称号を付与されました!

 「大阪大学栄誉教授(Osaka University Distinguished Professor)」の称号付与は、本学教職員のモチベーションの向上と大学運営を支える優秀な人材の確保を図るため、平成29年度から実施する新たな表彰制度で、ノーベル賞、文化勲章、フィールズ賞、文化功労者、日本学士院賞、日本学士院エジンバラ公賞、日本芸術院賞、日本国際賞、紫綬褒章、京都賞、日本学術振興会賞その他これらに相当する著名な賞を受賞し、本学の教育、研究及び社会貢献の推進に先導的な役割を担う本学教授及び大阪大学特別教授の称号付与者に対して称号が付与されます。
 このたび、産業科学研究所では2名の教授が大阪大学栄誉教授の称号を付与されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

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水素生成量が1桁増加する光触媒の開発に成功 ―太陽光による水素製造の実現に新たな一歩―

 励起分子化学研究分野の真嶋哲朗教授は、神戸大学分子フォトサイエンス研究センターの立川貴士准教授らとの共同研究で光触媒作用による水素生成量が1桁増加する光触媒の開発に成功しました。
 水素は、再生可能エネルギーである太陽光と水から製造できる、次世代のエネルギー源として注目されており、水素を高効率に製造できる光触媒の開発が望まれています。しかしながら、従来の光触媒では、電子と同時に生成する正孔(電子が抜けた孔)のほとんどが触媒表面上で再結合して消失してしまうため、水から水素への光エネルギー変換効率が伸び悩んでいました。
 今回、電子と正孔を空間的に分離できる、光触媒の大きさ・配列の均一性をあえて崩したメソ結晶光触媒の合成方法を開発しました。その結果、従来をはるかに超える水素生成の光エネルギー変換効率(約7%)を有する光触媒の開発に成功しました。
 今後は、有用性が実証されたメソ結晶化技術を応用することで、太陽光による高効率な水素製造の実現を目指します。
 本研究成果は、平成29年4月6日(独国時間)にドイツ化学誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版で公開されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

図 80℃という低温で個体のままカドミウムを吸収する層状物質 Ti2PTe2
「図:トポタクティックエピタキシャル成長によるSrTiO3メソ結晶の合成」

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