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廃棄物から高性能リチウムイオン電池負極材料を開発

平成29年2月20日

廃棄物から高性能リチウムイオン電池負極材料を開発
-スマホ等の電池の高性能化に期待-

《研究成果のポイント》

◆ 産業廃棄物であるシリコン切粉を、高性能なリチウムイオン電池負極材料にリサイクルする方法を開発しました。
◆ 全世界でのシリコン切粉の発生量は、リチウムイオン電池負極材料の世界需要を上回っており、理想的な資源です。
◆ 今回の材料は、簡便なプロセスで大量生産が可能です。
◆ 従来の材料である黒鉛の約3.3倍に相当する高い容量を示し、充放電を800回以上繰り返してもその容量を維持できます。

【概要】

 東北大学多元物質科学研究所の西原洋知准教授、京谷隆教授、大阪大学産業科学研究所の松本健俊准教授、小林光教授らの研究グループは、産業廃棄物のシリコン切粉を高性能なリチウムイオン電池負極材料にリサイクルする方法を開発しました。半導体産業や太陽電池用に大量のシリコンウエハが生産されていますが、生産量とほぼ同量の切り屑(シリコン切粉)が発生し、産業廃棄物となっています。本研究ではこのシリコン切粉を薄いナノフレーク状に粉砕すれば、高容量でなおかつ長寿命なリチウムイオン電池の負極材料になることを見出しました。さらに、このナノフレーク状シリコンは炭素と複合化することで更に性能と寿命が向上し、従来のリチウムイオン電池に使用されている黒鉛の約3.3倍の容量(1200 mAh/g)を、充放電を800回以上繰り返しても維持できることが分かりました。全世界でのシリコン切粉の発生量は、リチウムイオン電池負極材料の世界需要を上回っており、まさに理想的な資源です。産業廃棄物を原料に用いることに加えて、シリコン切粉のナノフレークへの粉砕や、その後の炭素との複合化には大量のシリコンでも処理できる簡便な方法を用いており、リチウムイオン電池への実装に繋がると期待されます。
 本成果は、平成29年2月20日(月)午前10時(イギリス時間)にScientific Reports誌にてオンライン公開されました。

【詳細な説明】

 リチウムイオン電池はスマートフォンやノートパソコンといったモバイル電子機器に広く用いられていますが、近年ではハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車などの新型自動車にも搭載されるようになり、エネルギー密度(電力を貯められる量)の更なる向上が強く求められています。これを実現するための有効な方法は、リチウムを貯蔵する電極材料の性能向上です。リチウムイオン電池にはリチウムを貯め込むための正極材料と負極材料が内蔵されており、充電時には負極にリチウムが貯まり、放電時には負極のリチウムが正極に移動することで外部回路に電気が流れます。すなわち、正極材料と負極材料のリチウムを貯めることができる容量を大きくできれば、同じサイズ・重量の電池でより多くの電力を蓄えることが可能となります。現在、正極材料にはリチウム遷移金属酸化物、負極材料には黒鉛が利用されています。このうち、黒鉛の容量は最大でも372 mAh/gですが、シリコン(Si)はその数倍以上のリチウムを貯め込むことが可能であり、次世代の負極材料として実用化が進みつつあります。しかしながら、Siは充電時に元の4倍程度まで体積が膨張するため、電池内部の構造を破壊してしまい、充放電を繰り返すと急速に劣化してしまうことが大きな問題となっています。
 Si負極材料の劣化を防ぐ方法の1つは、図1に示すようにSiの周囲に空間を配置し、その空間内でSiが膨張・収縮できるようにするというものです。このような構造は、多孔性炭素へのシリコンの化学気相堆積(CVD)注1) 、鋳型法注2)、SiO2の還元注3)など種々の方法で作ることができますが、製造コストが高く実用化が困難でした。

図1  Si負極材料の劣化を防ぐ方法①

図1  Si負極材料の劣化を防ぐ方法①

図2  Si負極材料の劣化を防ぐ方法②

図2  Si負極材料の劣化を防ぐ方法②

 また別の方法として、充放電の最中にSiを自発的に劣化し難い構造に変化させるというものがあります(図2上段)。Si, Ge, SnO2など充放電に伴い激しく膨張・収縮を繰り返す物質において、単なる粉砕粒子の場合は図2下段に示すように急速に劣化して凝集化してしまいますが、ナノワイヤーやナノフレーク、またナノ粒子が数珠状に連結した構造体といったナノ構造体の場合、充放電を繰り返すうちにSiが自発的に多孔質の構造に変化します。この構造は、紙をくしゃくしゃに丸めたような形であることから、「シワ状構造」注4)と呼ばれています。シワ状構造はSiがネットワーク状に連結しており内部抵抗注5)が低く、またSi骨格の周囲に適度な空間が存在するため劣化し難いという特徴を持っています。しかし、シワ状構造に変化するSiを製造するにはCVD法などコストが高い方法を用いなければならず、やはり実用化が困難でした。
 このように、従来からSiを負極材料に利用するための研究は活発に行われていますが、実用化のためには原料コストおよび製造コストを大幅に抑えた、工業化可能な新たな方法を開発する必要があります。そこで、安価な原料として産業廃棄物であるSi切粉に着目しました。Si切粉は、半導体産業や太陽電池用のSiウエハを製造する際に発生するSiの切り屑です。Siウエハの製造工程を図3に示します。原料である石英砂を1900 °C以上もの高温で金属Siに還元し、精製して高純度化した後に、Si融液から単結晶インゴットを作製、最後にこれを切断することでSiウエハは製造されます。図3からわかるように、Siウエハを製造するには多段階の高温プロセスが必要であり、膨大なエネルギーを消費します。それにもかかわらず、折角作った高純度のSi単結晶インゴットは、切断の際におよそ半分もの量がSi切粉となり捨てられています。これは、投入された多くのエネルギーが無駄に捨てられていることを意味します。

図3 シリコンウエハの製造プロセス

図3 シリコンウエハの製造プロセス

 大阪大の小林光教授らのグループでは、Si切粉を高純度Siナノ粒子にリサイクルする手法の開発に成功しています。一方、東北大の京谷隆教授らのグループでは以前からSi負極材料の開発に関する検討を行ってきました。そこで2つのグループは、安価なSi切粉から高性能なSi負極材料を調製するための共同研究を実施しました。世界でのSi切粉の年間発生量は約9万トンであり、これはリチウムイオン電池負極材料の世界需要を賄うのに十分な量です。
 Si切粉を劣化させない方策として、図1に示す方法①は適用困難であるため、図2に示す方法②を検討しました。Si切粉の粉砕方法を工夫することで、厚さ約16 nmのナノフレーク状に成型したところ、粉砕粒子としては初めて、充放電によるシワ状構造の発現に成功しました。さらに、炭素との複合化や電極調製法の工夫を行った結果、図4に示すように800回の充放電を繰り返しても1200 mAh/gの容量を維持することに成功しました。この容量は、従来の材料である黒鉛の約3.3倍に相当します。

図4 Si切粉をリサイクルして調製したナノフレーク状Siの容量とクーロン効率注6)を充放電サイクル数に対してプロットした図. (CVDによる炭素被覆実施, ハーフセル(対極Li箔), 電解液:1 M LiPF6/EC+DECに10%のVC添加, 25 °C, 電流密度960 mA/g, Li挿入容量1200 mAh/gに制限.)

図4 Si切粉をリサイクルして調製したナノフレーク状Siの容量とクーロン効率注6)を充放電サイクル数に対してプロットした図. (CVDによる炭素被覆実施, ハーフセル(対極Li箔), 電解液:1 M LiPF6/EC+DECに10%のVC添加, 25 °C, 電流密度960 mA/g, Li挿入容量1200 mAh/gに制限.)

【用語解説】

注1)化学気相堆積(CVD)
 シランガスなどSiを含有するガスを高温で炭素に接触させると、炭素表面でガスが分解してSiナノ粒子が生成する。これまでに、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、多孔性炭素など様々な炭素にCVDが適用され、Siナノ粒子が担持されている。

注2)鋳型法
 鋳型になる物質を利用して空間を作る方法。例えば、Siナノ粒子の周囲に除去可能な物質(鋳型)を配置し、さらにその外側に炭素をコートした後に鋳型を除去すれば、Siナノ粒子の周囲に空間が存在するSi/炭素複合材料を調製することができる。

注3)SiO2の還元
 SiO2の還元には通常1900 °C以上の高温が必要となるが、CaCl2等の溶融塩中であれば850 °C以下であってもSiO2をSiに電気化学的に還元することができる。この方法を利用し、SiO2ナノ粒子の周囲を炭素でコートした後にSiO2を還元すれば、Siナノ粒子を生成することができる。SiO2がSiに還元されると体積が減少するので、Siナノ粒子の周囲には空間が生まれる。

注4) シワ状構造
 Si, Ge, SnO2などの充放電に伴い大きく膨張・収縮を繰り返す活物質が、ナノワイヤー、ナノフレーク、ナノ粒子が数珠状に連結した構造体といった形状を持つ場合、充放電を繰り返すうちに自然と形成される多孔質の構造。電子顕微鏡写真を下に示す。紙をくしゃくしゃに丸めたような構造であり、アモルファスSiにより構成されている。



注5) 内部抵抗
 Si骨格内部の電気抵抗のこと。

注6) クーロン効率
 充電量に対する放電量の割合。これが低いと電池が劣化する。100%が理想的。

【研究について】

 本研究は、「人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンス」の一環として行ったものです。



人・異分野を動的に取り込んで濃密に展開する新たな共同研究
ダイナミック・アライアンスは、北海道大学電子科学研究所(電子研)、東北大学多元物質科学研究所(多元研)、東京工業大学化学生命科学研究所(化生研)、大阪大学産業科学研究所(産研)、九州大学先導物質化学研究所(先導研)の5附置研究所がアライアンス連携して実施する平成28年度から6年間のプロジェクトとして発足したものである。5附置研究所間共同研究による成果をさらに進展・深化させ、幅広い分野の研究資源を動的(ダイナミック)かつ濃密(コバレント)に集約した共同研究を展開することで、明確なターゲットを指向した人と環境と物質とを繋ぐイノベーション実現を目指す。このため、「エレクトロニクス(G1)」、「環境エネルギー(G2)」および「生命機能(G3)」の3領域で研究所横断型共同研究グループを組織して実効的な研究を実施し、さらに、戦略的で且つ異分野間の交流を動的かつ濃密に実施する卓越した融合研究を推進するために、グループ・分野横断的な横串型共同研究を実施する。

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廃棄物から高性能リチウムイオン電池負極材料を開発

平成29年2月20日

廃棄物から高性能リチウムイオン電池負極材料を開発
-スマホ等の電池の高性能化に期待-

《研究成果のポイント》

◆ 産業廃棄物であるシリコン切粉を、高性能なリチウムイオン電池負極材料にリサイクルする方法を開発しました。
◆ 全世界でのシリコン切粉の発生量は、リチウムイオン電池負極材料の世界需要を上回っており、理想的な資源です。
◆ 今回の材料は、簡便なプロセスで大量生産が可能です。
◆ 従来の材料である黒鉛の約3.3倍に相当する高い容量を示し、充放電を800回以上繰り返してもその容量を維持できます。

【概要】

 東北大学多元物質科学研究所の西原洋知准教授、京谷隆教授、大阪大学産業科学研究所の松本健俊准教授、小林光教授らの研究グループは、産業廃棄物のシリコン切粉を高性能なリチウムイオン電池負極材料にリサイクルする方法を開発しました。半導体産業や太陽電池用に大量のシリコンウエハが生産されていますが、生産量とほぼ同量の切り屑(シリコン切粉)が発生し、産業廃棄物となっています。本研究ではこのシリコン切粉を薄いナノフレーク状に粉砕すれば、高容量でなおかつ長寿命なリチウムイオン電池の負極材料になることを見出しました。さらに、このナノフレーク状シリコンは炭素と複合化することで更に性能と寿命が向上し、従来のリチウムイオン電池に使用されている黒鉛の約3.3倍の容量(1200 mAh/g)を、充放電を800回以上繰り返しても維持できることが分かりました。全世界でのシリコン切粉の発生量は、リチウムイオン電池負極材料の世界需要を上回っており、まさに理想的な資源です。産業廃棄物を原料に用いることに加えて、シリコン切粉のナノフレークへの粉砕や、その後の炭素との複合化には大量のシリコンでも処理できる簡便な方法を用いており、リチウムイオン電池への実装に繋がると期待されます。
 本成果は、平成29年2月20日(月)午前10時(イギリス時間)にScientific Reports誌にてオンライン公開されました。

【詳細な説明】

 リチウムイオン電池はスマートフォンやノートパソコンといったモバイル電子機器に広く用いられていますが、近年ではハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車などの新型自動車にも搭載されるようになり、エネルギー密度(電力を貯められる量)の更なる向上が強く求められています。これを実現するための有効な方法は、リチウムを貯蔵する電極材料の性能向上です。リチウムイオン電池にはリチウムを貯め込むための正極材料と負極材料が内蔵されており、充電時には負極にリチウムが貯まり、放電時には負極のリチウムが正極に移動することで外部回路に電気が流れます。すなわち、正極材料と負極材料のリチウムを貯めることができる容量を大きくできれば、同じサイズ・重量の電池でより多くの電力を蓄えることが可能となります。現在、正極材料にはリチウム遷移金属酸化物、負極材料には黒鉛が利用されています。このうち、黒鉛の容量は最大でも372 mAh/gですが、シリコン(Si)はその数倍以上のリチウムを貯め込むことが可能であり、次世代の負極材料として実用化が進みつつあります。しかしながら、Siは充電時に元の4倍程度まで体積が膨張するため、電池内部の構造を破壊してしまい、充放電を繰り返すと急速に劣化してしまうことが大きな問題となっています。
 Si負極材料の劣化を防ぐ方法の1つは、図1に示すようにSiの周囲に空間を配置し、その空間内でSiが膨張・収縮できるようにするというものです。このような構造は、多孔性炭素へのシリコンの化学気相堆積(CVD)注1) 、鋳型法注2)、SiO2の還元注3)など種々の方法で作ることができますが、製造コストが高く実用化が困難でした。

図1  Si負極材料の劣化を防ぐ方法①

図1  Si負極材料の劣化を防ぐ方法①

図2  Si負極材料の劣化を防ぐ方法②

図2  Si負極材料の劣化を防ぐ方法②

 また別の方法として、充放電の最中にSiを自発的に劣化し難い構造に変化させるというものがあります(図2上段)。Si, Ge, SnO2など充放電に伴い激しく膨張・収縮を繰り返す物質において、単なる粉砕粒子の場合は図2下段に示すように急速に劣化して凝集化してしまいますが、ナノワイヤーやナノフレーク、またナノ粒子が数珠状に連結した構造体といったナノ構造体の場合、充放電を繰り返すうちにSiが自発的に多孔質の構造に変化します。この構造は、紙をくしゃくしゃに丸めたような形であることから、「シワ状構造」注4)と呼ばれています。シワ状構造はSiがネットワーク状に連結しており内部抵抗注5)が低く、またSi骨格の周囲に適度な空間が存在するため劣化し難いという特徴を持っています。しかし、シワ状構造に変化するSiを製造するにはCVD法などコストが高い方法を用いなければならず、やはり実用化が困難でした。
 このように、従来からSiを負極材料に利用するための研究は活発に行われていますが、実用化のためには原料コストおよび製造コストを大幅に抑えた、工業化可能な新たな方法を開発する必要があります。そこで、安価な原料として産業廃棄物であるSi切粉に着目しました。Si切粉は、半導体産業や太陽電池用のSiウエハを製造する際に発生するSiの切り屑です。Siウエハの製造工程を図3に示します。原料である石英砂を1900 °C以上もの高温で金属Siに還元し、精製して高純度化した後に、Si融液から単結晶インゴットを作製、最後にこれを切断することでSiウエハは製造されます。図3からわかるように、Siウエハを製造するには多段階の高温プロセスが必要であり、膨大なエネルギーを消費します。それにもかかわらず、折角作った高純度のSi単結晶インゴットは、切断の際におよそ半分もの量がSi切粉となり捨てられています。これは、投入された多くのエネルギーが無駄に捨てられていることを意味します。

図3 シリコンウエハの製造プロセス

図3 シリコンウエハの製造プロセス

 大阪大の小林光教授らのグループでは、Si切粉を高純度Siナノ粒子にリサイクルする手法の開発に成功しています。一方、東北大の京谷隆教授らのグループでは以前からSi負極材料の開発に関する検討を行ってきました。そこで2つのグループは、安価なSi切粉から高性能なSi負極材料を調製するための共同研究を実施しました。世界でのSi切粉の年間発生量は約9万トンであり、これはリチウムイオン電池負極材料の世界需要を賄うのに十分な量です。
 Si切粉を劣化させない方策として、図1に示す方法①は適用困難であるため、図2に示す方法②を検討しました。Si切粉の粉砕方法を工夫することで、厚さ約16 nmのナノフレーク状に成型したところ、粉砕粒子としては初めて、充放電によるシワ状構造の発現に成功しました。さらに、炭素との複合化や電極調製法の工夫を行った結果、図4に示すように800回の充放電を繰り返しても1200 mAh/gの容量を維持することに成功しました。この容量は、従来の材料である黒鉛の約3.3倍に相当します。

図4 Si切粉をリサイクルして調製したナノフレーク状Siの容量とクーロン効率注6)を充放電サイクル数に対してプロットした図. (CVDによる炭素被覆実施, ハーフセル(対極Li箔), 電解液:1 M LiPF6/EC+DECに10%のVC添加, 25 °C, 電流密度960 mA/g, Li挿入容量1200 mAh/gに制限.)

図4 Si切粉をリサイクルして調製したナノフレーク状Siの容量とクーロン効率注6)を充放電サイクル数に対してプロットした図. (CVDによる炭素被覆実施, ハーフセル(対極Li箔), 電解液:1 M LiPF6/EC+DECに10%のVC添加, 25 °C, 電流密度960 mA/g, Li挿入容量1200 mAh/gに制限.)

【用語解説】

注1)化学気相堆積(CVD)
 シランガスなどSiを含有するガスを高温で炭素に接触させると、炭素表面でガスが分解してSiナノ粒子が生成する。これまでに、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、多孔性炭素など様々な炭素にCVDが適用され、Siナノ粒子が担持されている。

注2)鋳型法
 鋳型になる物質を利用して空間を作る方法。例えば、Siナノ粒子の周囲に除去可能な物質(鋳型)を配置し、さらにその外側に炭素をコートした後に鋳型を除去すれば、Siナノ粒子の周囲に空間が存在するSi/炭素複合材料を調製することができる。

注3)SiO2の還元
 SiO2の還元には通常1900 °C以上の高温が必要となるが、CaCl2等の溶融塩中であれば850 °C以下であってもSiO2をSiに電気化学的に還元することができる。この方法を利用し、SiO2ナノ粒子の周囲を炭素でコートした後にSiO2を還元すれば、Siナノ粒子を生成することができる。SiO2がSiに還元されると体積が減少するので、Siナノ粒子の周囲には空間が生まれる。

注4) シワ状構造
 Si, Ge, SnO2などの充放電に伴い大きく膨張・収縮を繰り返す活物質が、ナノワイヤー、ナノフレーク、ナノ粒子が数珠状に連結した構造体といった形状を持つ場合、充放電を繰り返すうちに自然と形成される多孔質の構造。電子顕微鏡写真を下に示す。紙をくしゃくしゃに丸めたような構造であり、アモルファスSiにより構成されている。



注5) 内部抵抗
 Si骨格内部の電気抵抗のこと。

注6) クーロン効率
 充電量に対する放電量の割合。これが低いと電池が劣化する。100%が理想的。

【研究について】

 本研究は、「人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンス」の一環として行ったものです。



人・異分野を動的に取り込んで濃密に展開する新たな共同研究
ダイナミック・アライアンスは、北海道大学電子科学研究所(電子研)、東北大学多元物質科学研究所(多元研)、東京工業大学化学生命科学研究所(化生研)、大阪大学産業科学研究所(産研)、九州大学先導物質化学研究所(先導研)の5附置研究所がアライアンス連携して実施する平成28年度から6年間のプロジェクトとして発足したものである。5附置研究所間共同研究による成果をさらに進展・深化させ、幅広い分野の研究資源を動的(ダイナミック)かつ濃密(コバレント)に集約した共同研究を展開することで、明確なターゲットを指向した人と環境と物質とを繋ぐイノベーション実現を目指す。このため、「エレクトロニクス(G1)」、「環境エネルギー(G2)」および「生命機能(G3)」の3領域で研究所横断型共同研究グループを組織して実効的な研究を実施し、さらに、戦略的で且つ異分野間の交流を動的かつ濃密に実施する卓越した融合研究を推進するために、グループ・分野横断的な横串型共同研究を実施する。