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映像解析と人工知能で酪農を変える!-乳牛の歩行映像から重大疾病の予兆を発見-

平成29年6月27日

映像解析と人工知能で酪農を変える!
-乳牛の歩行映像から重大疾病の予兆を発見-

【成果のポイント】

◆ 乳牛の歩行映像から、乳牛の重要な疾病の一つである蹄の疾病(蹄病)を、軽症のうちに高精度(99%以上)で発見する手法を開発。
◆ これまでの検出方法では早期発見が困難であったが、本成果では、乳牛の歩行の様子からいち早く蹄病を発見することが可能となった。
◆ 従事者の減少と高齢化が続く酪農業において、酪農家の省力化は急務。人工知能と映像解析によるモニタリング技術によって、酪農家の目の行き届かない細部まで乳牛を観察し、酪農家の省力化と生産物の高品質化を両立することで、酪農業を変革することが期待される。

【概要】

 大阪大学産業科学研究所の八木康史教授らの研究グループは、酪農学園大学の中田健教授と共同で、人物歩行映像解析技術を乳牛に応用し、乳牛の歩行を撮影した映像から、乳牛の重要な疾病の一つである蹄の疾病(蹄病※1)を、軽症のうちに高精度(99%以上)で発見する手法を開発しました。
 蹄病の兆候は、乳牛の背中の湾曲や歩き方に現れることが知られており。これまで、乳牛の背中の湾曲度合いを画像から検出して蹄病を検出する手法が研究されていました。しかし、この手法で検出対象となるのは中程度~重度の蹄病でした。
 蹄病は予防・早期発見が重要であるとされており、蹄病の有無は跛行スコアとよばれる5段階(1:正常、5:重度)のスコアで管理されています。本グループが開発した手法では、スコア1(正常)とスコア2(軽度の蹄病)以上の乳牛を分けることができます。
 今回の研究成果は、将来的に、ロボット搾乳機や給餌ロボットなどと協調する「スマート牛舎」(図1)の実現に大きく寄与し、酪農家の省力化だけでなく、酪農家が真に牛の健康や生産物の高品質化に専念できる、新時代の酪農業を実現することが期待されます。

図1
図1 スマート牛舎のイメージ

【研究の背景】

 酪農業は、近年従事者の減少と高齢化が続いており、省力化が喫緊の課題です。酪農家は牛舎の掃除、搾乳、給餌など日々の作業に追われるため、牛一頭一頭の日々の健康状態を把握することが非常に難しく、このままでは、日本の酪農家のゆとりある生活、牛乳や乳製品の生産量・品質を守ることは困難です。本研究グループでは、カメラと人工知能技術を活用し、乳牛の健康状態を酪農家の代わりに、人の目よりも高頻度・高精度にモニタリングする酪農センシング技術を開発し、「スマート牛舎」の実現を目指しています。

図1
図2 牛舎に設置された三次元形状計測用カメラと、撮影される画像例

 乳牛において重要な健康状態の一つに、蹄に関するものがあります。蹄の怪我や病気は蹄病と呼ばれ、生産物の質・量の低下につながるのみならず、放置すると乳牛の命に関わる、早期発見が重要な疾病です。蹄病の兆候は、乳牛の背中の曲がり具合や歩き方に現れることが知られています。
 これまで、乳牛の背中の曲がり方を画像から検出して蹄病を検出する手法が研究されていました。しかし、この手法で検出対象となるのは中程度~重度の蹄病でした。

 八木教授らの研究グループでは、同グループで培ってきた人物歩行映像解析技術を乳牛に応用し、乳牛の歩行映像から蹄病を軽度のうちに99%以上の精度で発見する手法を開発しました。具体的には、物体までの距離を計測可能なカメラである距離画像センサ(Microsoft Kinect; 図2)に防水・防塵加工を施し、研究協力機関である酪農学園大学の牛舎に設置しました。撮影された大量の乳牛の歩行映像をもとに歩行の様子を特徴化(図3)し、機械学習により蹄病個体を検出します。

図1
図3 特徴化された歩行の様子の例

【本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)】

 本研究成果は、人工知能による映像解析を応用した乳牛のモニタリング技術のさきがけとなります。将来的には、一部の酪農家への導入が始まっている自動搾乳機や給餌ロボット、現在も研究が進む乳牛取り付け型のウェアラブルセンサなどと協調する「スマート牛舎」の実現に大きく寄与します。
 牛の様々な健康状態を自動解析し、搾乳量や給餌量をきめ細かく調整するとともに、酪農家に牛の状態を「見える化」することで、酪農家が真に牛の健康や生産物の高品質化に専念できる、新時代の酪農業を実現することが期待されます。

【特記事項】

 本研究成果は、2017年3月10~11日の情報処理学会CVIM研究会で発表されました。
 タイトル:“乳牛の歩行映像解析による軽度蹄病の検出”
 著者名:砂川翔哉, 大倉史生, 生熊沙絢, 中田健, 八木康史
 また、本研究の内容および、その他の健康指標を推定する技術は、以下の内容で特許出願済みです。
 発明の名称:健康状態推定装置
 出願番号:特願2016-090680
 発明者:八木康史, 大倉史生, 槇原靖, 村松大吾
 なお、本研究の一部は日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金(若手研究B 課題番号17K12715)により行われました。また、本研究は酪農学園大学獣医学群 中田健教授の協力を得て行われました。

【用語解説】

※1 蹄病
 牛の蹄におきる炎症による症状を指し、乳房炎、繁殖障害とあわせて乳牛の3大疾病の一つとも呼ばれます。環境、遺伝、病気、栄養、削蹄技術など多くの要因が関与し発生します。軽度のうちは小さな歩行の変化が現れ、症状が進むと大きな変化(跛行、背中の湾曲)として現れ、痛みや苦痛などから食欲減退や乳量減少につながります。

【研究者のコメント】

 本研究にあわせ酪農学園大学の牛舎に設置した距離画像センサは、設置から1年半経過した現在も牛の映像を撮影し続けています。現在まで、述べ20,000以上の映像が取得され、情報学的・畜産学的に大変貴重なデータが蓄積され続けています。

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映像解析と人工知能で酪農を変える!-乳牛の歩行映像から重大疾病の予兆を発見-

平成29年6月27日

映像解析と人工知能で酪農を変える!
-乳牛の歩行映像から重大疾病の予兆を発見-

【成果のポイント】

◆ 乳牛の歩行映像から、乳牛の重要な疾病の一つである蹄の疾病(蹄病)を、軽症のうちに高精度(99%以上)で発見する手法を開発。
◆ これまでの検出方法では早期発見が困難であったが、本成果では、乳牛の歩行の様子からいち早く蹄病を発見することが可能となった。
◆ 従事者の減少と高齢化が続く酪農業において、酪農家の省力化は急務。人工知能と映像解析によるモニタリング技術によって、酪農家の目の行き届かない細部まで乳牛を観察し、酪農家の省力化と生産物の高品質化を両立することで、酪農業を変革することが期待される。

【概要】

 大阪大学産業科学研究所の八木康史教授らの研究グループは、酪農学園大学の中田健教授と共同で、人物歩行映像解析技術を乳牛に応用し、乳牛の歩行を撮影した映像から、乳牛の重要な疾病の一つである蹄の疾病(蹄病※1)を、軽症のうちに高精度(99%以上)で発見する手法を開発しました。
 蹄病の兆候は、乳牛の背中の湾曲や歩き方に現れることが知られており。これまで、乳牛の背中の湾曲度合いを画像から検出して蹄病を検出する手法が研究されていました。しかし、この手法で検出対象となるのは中程度~重度の蹄病でした。
 蹄病は予防・早期発見が重要であるとされており、蹄病の有無は跛行スコアとよばれる5段階(1:正常、5:重度)のスコアで管理されています。本グループが開発した手法では、スコア1(正常)とスコア2(軽度の蹄病)以上の乳牛を分けることができます。
 今回の研究成果は、将来的に、ロボット搾乳機や給餌ロボットなどと協調する「スマート牛舎」(図1)の実現に大きく寄与し、酪農家の省力化だけでなく、酪農家が真に牛の健康や生産物の高品質化に専念できる、新時代の酪農業を実現することが期待されます。

図1
図1 スマート牛舎のイメージ

【研究の背景】

 酪農業は、近年従事者の減少と高齢化が続いており、省力化が喫緊の課題です。酪農家は牛舎の掃除、搾乳、給餌など日々の作業に追われるため、牛一頭一頭の日々の健康状態を把握することが非常に難しく、このままでは、日本の酪農家のゆとりある生活、牛乳や乳製品の生産量・品質を守ることは困難です。本研究グループでは、カメラと人工知能技術を活用し、乳牛の健康状態を酪農家の代わりに、人の目よりも高頻度・高精度にモニタリングする酪農センシング技術を開発し、「スマート牛舎」の実現を目指しています。

図1
図2 牛舎に設置された三次元形状計測用カメラと、撮影される画像例

 乳牛において重要な健康状態の一つに、蹄に関するものがあります。蹄の怪我や病気は蹄病と呼ばれ、生産物の質・量の低下につながるのみならず、放置すると乳牛の命に関わる、早期発見が重要な疾病です。蹄病の兆候は、乳牛の背中の曲がり具合や歩き方に現れることが知られています。
 これまで、乳牛の背中の曲がり方を画像から検出して蹄病を検出する手法が研究されていました。しかし、この手法で検出対象となるのは中程度~重度の蹄病でした。

 八木教授らの研究グループでは、同グループで培ってきた人物歩行映像解析技術を乳牛に応用し、乳牛の歩行映像から蹄病を軽度のうちに99%以上の精度で発見する手法を開発しました。具体的には、物体までの距離を計測可能なカメラである距離画像センサ(Microsoft Kinect; 図2)に防水・防塵加工を施し、研究協力機関である酪農学園大学の牛舎に設置しました。撮影された大量の乳牛の歩行映像をもとに歩行の様子を特徴化(図3)し、機械学習により蹄病個体を検出します。

図1
図3 特徴化された歩行の様子の例

【本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)】

 本研究成果は、人工知能による映像解析を応用した乳牛のモニタリング技術のさきがけとなります。将来的には、一部の酪農家への導入が始まっている自動搾乳機や給餌ロボット、現在も研究が進む乳牛取り付け型のウェアラブルセンサなどと協調する「スマート牛舎」の実現に大きく寄与します。
 牛の様々な健康状態を自動解析し、搾乳量や給餌量をきめ細かく調整するとともに、酪農家に牛の状態を「見える化」することで、酪農家が真に牛の健康や生産物の高品質化に専念できる、新時代の酪農業を実現することが期待されます。

【特記事項】

 本研究成果は、2017年3月10~11日の情報処理学会CVIM研究会で発表されました。
 タイトル:“乳牛の歩行映像解析による軽度蹄病の検出”
 著者名:砂川翔哉, 大倉史生, 生熊沙絢, 中田健, 八木康史
 また、本研究の内容および、その他の健康指標を推定する技術は、以下の内容で特許出願済みです。
 発明の名称:健康状態推定装置
 出願番号:特願2016-090680
 発明者:八木康史, 大倉史生, 槇原靖, 村松大吾
 なお、本研究の一部は日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金(若手研究B 課題番号17K12715)により行われました。また、本研究は酪農学園大学獣医学群 中田健教授の協力を得て行われました。

【用語解説】

※1 蹄病
 牛の蹄におきる炎症による症状を指し、乳房炎、繁殖障害とあわせて乳牛の3大疾病の一つとも呼ばれます。環境、遺伝、病気、栄養、削蹄技術など多くの要因が関与し発生します。軽度のうちは小さな歩行の変化が現れ、症状が進むと大きな変化(跛行、背中の湾曲)として現れ、痛みや苦痛などから食欲減退や乳量減少につながります。

【研究者のコメント】

 本研究にあわせ酪農学園大学の牛舎に設置した距離画像センサは、設置から1年半経過した現在も牛の映像を撮影し続けています。現在まで、述べ20,000以上の映像が取得され、情報学的・畜産学的に大変貴重なデータが蓄積され続けています。