大阪大学 産業科学研究所

contact
home
english
HOME > HotTopics > 次世代パワー半導体のCu電極に対応 -低コストで高パワー変換率電力変換器の小型化にはずみ- 

次世代パワー半導体のCu電極に対応 -低コストで高パワー変換率電力変換器の小型化にはずみ- 

平成29年8月31日

次世代パワー半導体のCu電極に対応
-低コストで高パワー変換率電力変換器の小型化にはずみ-

【成果のポイント】

◆ 銀粒子焼結接合*1は次世代パワー半導体接続技術として世界に拡大しているが、その課題はメタライズ面が銀に限られることであった。
◆ 銀粒子焼結ペースト改善で、低温・無加圧化に加え、電極を選ばないダイアタッチ*2を実現。
◆ 上記に加え、銀シート接合技術を開発し、一気に汎用性を拡大。

【概要】

 大阪大学産業科学研究所の菅沼克昭教授が開発した銀粒子焼結接合は、低コストでありながら、低温、低圧、大気中の条件でダイアタッチを可能にし、しかも250℃を超える耐熱で高信頼性を実現することから、次世代パワー半導体ダイアタッチの本命として世界に普及が始まっています。
 昨年、その接続メカニズムをナノレベルで解明しましたが、技術の鍵は銀と酸素の反応にあり、このため接合電極は銀に限られていました。
 一方、Si(シリコン)やSiC(シリコンカーバイド)などの半導体、DBC基板などの電極にはニッケルや銅が用いられることが多く、これら電極への接合の実現を国内企業は強く望んでおり、さらに、シート接合ができることで適用範囲が一気に拡大します。
 これらの課題解決のために、科学技術振興機構(JST)のALCA*3プロジェクトの一環として株式会社ダイセルとの共同研究により銀の界面形成を活性化する溶剤の開発を進め、これまでより低温である200℃においても多種類の電極の接合を実現する無加圧焼結接合技術を可能にしました。この新ペースト(溶剤)では、銀の2倍程度の抵抗値3×10-6Ω・cmという、これまでナノ銀ペーストでしか得られない低抵抗値を得ることができます。
 また、従来のパワー半導体プロセスでは、ペーストを用いずシートをダイアタッチ接合材料として使う場合も多数あります。菅沼教授らのグループでは、銀シート表面に簡単な研削加工を施すことで表面活性化させる技術を開発しました。この加工組織導入によって、200℃から250℃の低温度域で銀シート表面にヒロック*4を多数形成することが確認され、新たなシート接合技術へ展開できることを確認しました(図1参照)。

図1
図1 加工組織導入銀シートを用いて250℃でリードフレームへ接合したSiダイアタッチの例

【研究の背景】

 これまで、菅沼教授らのグループが提案した銀粒子焼結技術は、低温で優れた接合を実現することが知られ、次世代パワー半導体のダイアタッチ材料として世界で開発が進んでいました。既に欧州では実用化が始まるほどですが、菅沼教授らのグループはそのメカニズムが『ナノ噴火現象』であることを解明し、200℃程度で大気中の酸素と反応しながらAg-O液体噴火することで金属焼結が進むことを示しました。これは、銀のみで生じる現象で、他の金属では金でも銅でも不可能です。このため従来電極に多用されるNiやCuへの接合は高圧を掛けねばなりませんでした。今回の技術開発により、安価な従来電極構造を変えること無くダイアタッチやシート接合が可能になり、低コストで現実的な理想の実装技術が生まれました。

【本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)】

 本研究成果により、次世代パワー半導体のSiCやGaN(ガリウムナイトライド)の高性能ダイアタッチが可能になるだけでなく、課題となる耐熱配線に、低温で無負荷、しかも、低ノイズの3次元配線を実現します。これによって、SiCやGaNパワー半導体の本来の性能である低損失大パワー変換が実現し、さらに、電力変換器の超小型化が可能になり、世界の省エネルギー化、CO2ガス削減へ大きく貢献します。

【特記事項】

 本研究は、JST委託によるALCA「高周波化を実現するGaNパワーモジュール実装技術開発」研究の一環で、株式会社ダイセルとの共同開発として行われました。

【用語解説】

※1 銀粒子焼結接合技術
 焼結接合技術は、1983年に菅沼教授が開発した粉末を接合層とする異種材料接合技術。2005年ごろに、銀粒子を用いた、大気中、無加圧、250℃の接合技術としてパワー半導体実装技術として提案しました。

※2 ダイアタッチ(die-attach)
 半導体ダイを回路基板や冷却基板へ接合すること。パワー半導体の機能と信頼性へ最も大きな影響を持つ。SiやSiCなどの縦型パワー半導体の場合は、熱と大電流を流す必要がありますが、パワーLEDや平面型GaNの場合は絶縁でよい。

※3 ALCA(科学技術振興機構の「先端的低炭素化技術開発」の総称)
 平成28年11月に開始し、「高周波化を実現するGaNパワーモジュール実装技術開発」(ガリウムナイトライド)のテーマの元で、GaNの耐圧の高さやスイッチング特性に優れることから、高温動作、高周波動作を実現し、電力変換器の電力ロスの低減、機器の小型化を実現するための実装技術開発を推進しています。

※4 ヒロック(hillock)
 金属表面から生じる瘤状の微細な突起。半導体のAl電極などでショートを起こす故障原因として知られています。

大阪大学 産業科学研究所

contact home english
HOME > HotTopics > 次世代パワー半導体のCu電極に対応 -低コストで高パワー変換率電力変換器の小型化にはずみ- 

次世代パワー半導体のCu電極に対応 -低コストで高パワー変換率電力変換器の小型化にはずみ- 

平成29年8月31日

次世代パワー半導体のCu電極に対応
-低コストで高パワー変換率電力変換器の小型化にはずみ-

【成果のポイント】

◆ 銀粒子焼結接合*1は次世代パワー半導体接続技術として世界に拡大しているが、その課題はメタライズ面が銀に限られることであった。
◆ 銀粒子焼結ペースト改善で、低温・無加圧化に加え、電極を選ばないダイアタッチ*2を実現。
◆ 上記に加え、銀シート接合技術を開発し、一気に汎用性を拡大。

【概要】

 大阪大学産業科学研究所の菅沼克昭教授が開発した銀粒子焼結接合は、低コストでありながら、低温、低圧、大気中の条件でダイアタッチを可能にし、しかも250℃を超える耐熱で高信頼性を実現することから、次世代パワー半導体ダイアタッチの本命として世界に普及が始まっています。
 昨年、その接続メカニズムをナノレベルで解明しましたが、技術の鍵は銀と酸素の反応にあり、このため接合電極は銀に限られていました。
 一方、Si(シリコン)やSiC(シリコンカーバイド)などの半導体、DBC基板などの電極にはニッケルや銅が用いられることが多く、これら電極への接合の実現を国内企業は強く望んでおり、さらに、シート接合ができることで適用範囲が一気に拡大します。
 これらの課題解決のために、科学技術振興機構(JST)のALCA*3プロジェクトの一環として株式会社ダイセルとの共同研究により銀の界面形成を活性化する溶剤の開発を進め、これまでより低温である200℃においても多種類の電極の接合を実現する無加圧焼結接合技術を可能にしました。この新ペースト(溶剤)では、銀の2倍程度の抵抗値3×10-6Ω・cmという、これまでナノ銀ペーストでしか得られない低抵抗値を得ることができます。
 また、従来のパワー半導体プロセスでは、ペーストを用いずシートをダイアタッチ接合材料として使う場合も多数あります。菅沼教授らのグループでは、銀シート表面に簡単な研削加工を施すことで表面活性化させる技術を開発しました。この加工組織導入によって、200℃から250℃の低温度域で銀シート表面にヒロック*4を多数形成することが確認され、新たなシート接合技術へ展開できることを確認しました(図1参照)。

図1
図1 加工組織導入銀シートを用いて250℃でリードフレームへ接合したSiダイアタッチの例

【研究の背景】

 これまで、菅沼教授らのグループが提案した銀粒子焼結技術は、低温で優れた接合を実現することが知られ、次世代パワー半導体のダイアタッチ材料として世界で開発が進んでいました。既に欧州では実用化が始まるほどですが、菅沼教授らのグループはそのメカニズムが『ナノ噴火現象』であることを解明し、200℃程度で大気中の酸素と反応しながらAg-O液体噴火することで金属焼結が進むことを示しました。これは、銀のみで生じる現象で、他の金属では金でも銅でも不可能です。このため従来電極に多用されるNiやCuへの接合は高圧を掛けねばなりませんでした。今回の技術開発により、安価な従来電極構造を変えること無くダイアタッチやシート接合が可能になり、低コストで現実的な理想の実装技術が生まれました。

【本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)】

 本研究成果により、次世代パワー半導体のSiCやGaN(ガリウムナイトライド)の高性能ダイアタッチが可能になるだけでなく、課題となる耐熱配線に、低温で無負荷、しかも、低ノイズの3次元配線を実現します。これによって、SiCやGaNパワー半導体の本来の性能である低損失大パワー変換が実現し、さらに、電力変換器の超小型化が可能になり、世界の省エネルギー化、CO2ガス削減へ大きく貢献します。

【特記事項】

 本研究は、JST委託によるALCA「高周波化を実現するGaNパワーモジュール実装技術開発」研究の一環で、株式会社ダイセルとの共同開発として行われました。

【用語解説】

※1 銀粒子焼結接合技術
 焼結接合技術は、1983年に菅沼教授が開発した粉末を接合層とする異種材料接合技術。2005年ごろに、銀粒子を用いた、大気中、無加圧、250℃の接合技術としてパワー半導体実装技術として提案しました。

※2 ダイアタッチ(die-attach)
 半導体ダイを回路基板や冷却基板へ接合すること。パワー半導体の機能と信頼性へ最も大きな影響を持つ。SiやSiCなどの縦型パワー半導体の場合は、熱と大電流を流す必要がありますが、パワーLEDや平面型GaNの場合は絶縁でよい。

※3 ALCA(科学技術振興機構の「先端的低炭素化技術開発」の総称)
 平成28年11月に開始し、「高周波化を実現するGaNパワーモジュール実装技術開発」(ガリウムナイトライド)のテーマの元で、GaNの耐圧の高さやスイッチング特性に優れることから、高温動作、高周波動作を実現し、電力変換器の電力ロスの低減、機器の小型化を実現するための実装技術開発を推進しています。

※4 ヒロック(hillock)
 金属表面から生じる瘤状の微細な突起。半導体のAl電極などでショートを起こす故障原因として知られています。