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世界初!シリコン断崖側面構造の原子レベル観察に成功

平成29年9月20日

世界初!シリコン断崖側面構造の原子レベル観察に成功

【成果のポイント】

◆ 原子レベルで平坦・清浄化したシリコン断崖側面構造の直接顕微観察に成功。
◆ 独自のデバイス加工技術と表面科学技術の3次元展開により、これまで実現していなかった加工立体構造の形状を工夫することで可能に。
◆ 原子レベルで制御された側面を利用した立体超集積回路の構築の推進に期待。

【概要】

 大阪大学産業科学研究所の田中秀和教授、服部梓助教の研究グループ、及び奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科の大門寛教授、服部賢准教授、楊昊宇(大学院生)、大畑慧訓(大学院生)、竹本昌平(大学院生)のグループは共同で、原子分解能をもつ走査トンネル顕微鏡*1を用いて、デバイス加工後のシリコン切削側面*2表面を原子レベルで平坦かつ清浄にし得ることを世界で初めて明らかにしました(図1)。
 これまでデバイス加工後の側面表面の顕微評価はナノメートル程度の分解能をもつ走査電子顕微鏡でしかなされておらず、精密なデバイス加工を施しても、顕微プローブが加工構造と干渉するため、原子レベルでの評価はなされておらず、デバイス性能を十分に発揮できていませんでした。
 今回、本研究グループは、デバイス形状を顕微プローブと干渉しない加工構造に調整することにより、原子レベルでのデバイス加工側面の顕微観察に成功し、加工側面表面を平坦かつ清浄にし得ることを示しました。これにより、原子レベルでの側面加工の確度の向上、及び精密側面を利用した立体超集積回路の構築の推進が期待されます。
 本研究成果は、科学誌「Japan Journal of Applied Physics」に近日中に公開予定です。

図1
図1
シリコン基板エッチング処理・加熱処理後の切削側面の走査トンネル顕微鏡像

【研究の背景】

 シリコンテクノロジーの一端であるエッチング技術を用いたデバイスの三次元立体加工では、加工後の側面表面への配線を利用したムーアの法則*3の先を目指す超高密度化が期待されています。加工後の側面表面の平坦性や清浄度の確保はデバイス構築で重要な要素技術であるものの、今まで原子レベルでの直接的な顕微観察はなされておらず、側面表面に構築するヘテロ構造界面での伝導特性の向上を目指した側面調整の基盤は整っていませんでした。
 一般的に使用される走査電子顕微鏡はナノメートル程度の分解能しかないため微細な評価はできません。また原子分解能をもつ透過電子顕微鏡は正面から側面表面を観察できないため適切な評価方法ではありません。原子分解能をもつ走査トンネル顕微鏡は正面から側面表面から観察する有用な評価法ですが、通常の三次元立体加工側面では、その幾何学的配置関係から顕微プローブは下地基板と干渉するため、顕微観察は不可能でした。
 研究グループは、これまでに共同で構築してきた側面表面の原子レベルでの加工調整技術、及び電子ビーム回折*4測定による広域側面の平均的な原子配列評価技術を発展させ、今回、三次元立体加工にサブミリメートルの深堀技術を併用することにより顕微プローブの干渉問題を回避し、走査トンネル顕微鏡を用いたシリコン側面表面の原子スケールでの評価を実現しました。その結果、良く調整された三次元エッチング加工条件においては、シリコン側面表面が原子レベルで平坦・清浄なステップ・テラス構造*5をもつこと(図1)を解明しました。

【本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)】

 本研究成果により、ムーアの法則の先を目指す立体超集積回路の構築の推進、即ちエッチング技術を用いたデバイス三次元立体加工の原子レベルでの側面構造作製技術の発展、更には側面表面を土台にしたトランジスタ構造の基礎となるヘテロ構造界面での伝導特性の向上が期待されます。

【特記事項】

 本研究成果は、近日中に科学誌「Japan Journal of Applied Physics」(オンライン)に掲載されます。
タイトル:“Direct observation for atomically flat and ordered vertical {111} side-surfaces on three-dimensionally figured Si(110) substrate using scanning tunneling microscopy ”
著者名:Haoyu Yang, Azusa N. Hattori, Akinori Ohata, Shohei Takemoto, Ken Hattori, Hiroshi Daimon, and Hidekazu Tanaka

 なお、本研究は物質・デバイス領域共同研究拠点:人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンスにおける次世代若手共同研究(代表:竹本)の一環として遂行されました。

【用語解説】

※1 走査トンネル顕微鏡
 導電性を有する試料表面に、先の尖った金属探針を原子間距離程度まで近づけた時に流れるトンネル電流を利用して、試料表面に沿った凹凸を原子分解能で顕微観察する装置。空間分解能は表面水平方向が約10 pm(ピコメートル:1兆分の1メートル)以下、垂直方向が約1 pm以下。原子の大きさは100 pm = 0.1 nm(ナノメートル:10億の1メートル)程度。

※2 切削側面
 シリコン基板表面にレジストをパターン化し、エッチングガスを用いて未レジスト部を基板下方向に切削する。レジスト部・未レジスト部の境界が、切削側面として基板表面垂直に切り出される。エッチング条件を調整しない限り、この切削側面の凹凸は粗い。

※3 ムーアの法則
 集積回路上のトランジスタ数は18か月毎に2倍に増えるという経験則。1960年代から提唱され現在までおよそこのトレンド(2017年で細線幅が10 nm程度)にある。しかし細線幅自身の原子サイズでの限界、リーク電流や揺らぎなど種々の問題のため、二次元構造を維持した微細化には限界が見え始めている。

※4 電子ビーム回折
 電子ビームのもつ波動性を利用して、結晶表面の原子配列の周期性を測定する方法。測定範囲は電子ビーム径。

※5 ステップ・テラス構造
 現実の表面は結晶面からわずかに傾いており、原子一層分の段差(ステップ)と原子レベルで平坦な領域(テラス)の繰り返しで構成される。図1の顕微鏡像はまさにこのステップ・テラス構造を表している。

【研究者のコメント】

 原子レベルで平坦で清浄な切削側面を広範囲に作り出すエッチング条件の調整に苦労しました。この研究が三次元加工した任意の全側面を制御した夢の立体デバイスの礎となることを確信しています。

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世界初!シリコン断崖側面構造の原子レベル観察に成功

平成29年9月20日

世界初!シリコン断崖側面構造の原子レベル観察に成功

【成果のポイント】

◆ 原子レベルで平坦・清浄化したシリコン断崖側面構造の直接顕微観察に成功。
◆ 独自のデバイス加工技術と表面科学技術の3次元展開により、これまで実現していなかった加工立体構造の形状を工夫することで可能に。
◆ 原子レベルで制御された側面を利用した立体超集積回路の構築の推進に期待。

【概要】

 大阪大学産業科学研究所の田中秀和教授、服部梓助教の研究グループ、及び奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科の大門寛教授、服部賢准教授、楊昊宇(大学院生)、大畑慧訓(大学院生)、竹本昌平(大学院生)のグループは共同で、原子分解能をもつ走査トンネル顕微鏡*1を用いて、デバイス加工後のシリコン切削側面*2表面を原子レベルで平坦かつ清浄にし得ることを世界で初めて明らかにしました(図1)。
 これまでデバイス加工後の側面表面の顕微評価はナノメートル程度の分解能をもつ走査電子顕微鏡でしかなされておらず、精密なデバイス加工を施しても、顕微プローブが加工構造と干渉するため、原子レベルでの評価はなされておらず、デバイス性能を十分に発揮できていませんでした。
 今回、本研究グループは、デバイス形状を顕微プローブと干渉しない加工構造に調整することにより、原子レベルでのデバイス加工側面の顕微観察に成功し、加工側面表面を平坦かつ清浄にし得ることを示しました。これにより、原子レベルでの側面加工の確度の向上、及び精密側面を利用した立体超集積回路の構築の推進が期待されます。
 本研究成果は、科学誌「Japan Journal of Applied Physics」に近日中に公開予定です。

図1
図1
シリコン基板エッチング処理・加熱処理後の切削側面の走査トンネル顕微鏡像

【研究の背景】

 シリコンテクノロジーの一端であるエッチング技術を用いたデバイスの三次元立体加工では、加工後の側面表面への配線を利用したムーアの法則*3の先を目指す超高密度化が期待されています。加工後の側面表面の平坦性や清浄度の確保はデバイス構築で重要な要素技術であるものの、今まで原子レベルでの直接的な顕微観察はなされておらず、側面表面に構築するヘテロ構造界面での伝導特性の向上を目指した側面調整の基盤は整っていませんでした。
 一般的に使用される走査電子顕微鏡はナノメートル程度の分解能しかないため微細な評価はできません。また原子分解能をもつ透過電子顕微鏡は正面から側面表面を観察できないため適切な評価方法ではありません。原子分解能をもつ走査トンネル顕微鏡は正面から側面表面から観察する有用な評価法ですが、通常の三次元立体加工側面では、その幾何学的配置関係から顕微プローブは下地基板と干渉するため、顕微観察は不可能でした。
 研究グループは、これまでに共同で構築してきた側面表面の原子レベルでの加工調整技術、及び電子ビーム回折*4測定による広域側面の平均的な原子配列評価技術を発展させ、今回、三次元立体加工にサブミリメートルの深堀技術を併用することにより顕微プローブの干渉問題を回避し、走査トンネル顕微鏡を用いたシリコン側面表面の原子スケールでの評価を実現しました。その結果、良く調整された三次元エッチング加工条件においては、シリコン側面表面が原子レベルで平坦・清浄なステップ・テラス構造*5をもつこと(図1)を解明しました。

【本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)】

 本研究成果により、ムーアの法則の先を目指す立体超集積回路の構築の推進、即ちエッチング技術を用いたデバイス三次元立体加工の原子レベルでの側面構造作製技術の発展、更には側面表面を土台にしたトランジスタ構造の基礎となるヘテロ構造界面での伝導特性の向上が期待されます。

【特記事項】

 本研究成果は、近日中に科学誌「Japan Journal of Applied Physics」(オンライン)に掲載されます。
タイトル:“Direct observation for atomically flat and ordered vertical {111} side-surfaces on three-dimensionally figured Si(110) substrate using scanning tunneling microscopy ”
著者名:Haoyu Yang, Azusa N. Hattori, Akinori Ohata, Shohei Takemoto, Ken Hattori, Hiroshi Daimon, and Hidekazu Tanaka

 なお、本研究は物質・デバイス領域共同研究拠点:人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンスにおける次世代若手共同研究(代表:竹本)の一環として遂行されました。

【用語解説】

※1 走査トンネル顕微鏡
 導電性を有する試料表面に、先の尖った金属探針を原子間距離程度まで近づけた時に流れるトンネル電流を利用して、試料表面に沿った凹凸を原子分解能で顕微観察する装置。空間分解能は表面水平方向が約10 pm(ピコメートル:1兆分の1メートル)以下、垂直方向が約1 pm以下。原子の大きさは100 pm = 0.1 nm(ナノメートル:10億の1メートル)程度。

※2 切削側面
 シリコン基板表面にレジストをパターン化し、エッチングガスを用いて未レジスト部を基板下方向に切削する。レジスト部・未レジスト部の境界が、切削側面として基板表面垂直に切り出される。エッチング条件を調整しない限り、この切削側面の凹凸は粗い。

※3 ムーアの法則
 集積回路上のトランジスタ数は18か月毎に2倍に増えるという経験則。1960年代から提唱され現在までおよそこのトレンド(2017年で細線幅が10 nm程度)にある。しかし細線幅自身の原子サイズでの限界、リーク電流や揺らぎなど種々の問題のため、二次元構造を維持した微細化には限界が見え始めている。

※4 電子ビーム回折
 電子ビームのもつ波動性を利用して、結晶表面の原子配列の周期性を測定する方法。測定範囲は電子ビーム径。

※5 ステップ・テラス構造
 現実の表面は結晶面からわずかに傾いており、原子一層分の段差(ステップ)と原子レベルで平坦な領域(テラス)の繰り返しで構成される。図1の顕微鏡像はまさにこのステップ・テラス構造を表している。

【研究者のコメント】

 原子レベルで平坦で清浄な切削側面を広範囲に作り出すエッチング条件の調整に苦労しました。この研究が三次元加工した任意の全側面を制御した夢の立体デバイスの礎となることを確信しています。