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世界初!細胞の集合状態を三次元の塊と二次元の単層状態との間で自在に制御することを可能とする新規高分子を開発

平成29年10月31日

世界初!細胞の集合状態を三次元の塊と二次元の単層状態との間で自在に制御することを可能とする新規高分子を開発

【成果のポイント】

◆ 細胞集団の三次元的な形を自在に制御することは困難であった。
◆ 温度感受性高分子が培養細胞の集合状態を三次元の塊と二次元の単層状態との間で自在に可逆的に制御しうることを発見。
◆ 細胞生物学分野のみならず再生医療分野への貢献に期待。

【概要】

 大阪大学産業科学研究所永井健治教授、東京工業大学生命理工学研究科の丸山厚教授、嶋田直彦助教、九州大学先導物質化学研究所の木戸秋悟教授らの共同研究グループは、物質・デバイス領域共同研究拠点ならびに人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンス活動における研究成果として、培養した細胞の集合状態を三次元の塊と二次元の単層状態との間で自在に制御することを可能とする新規高分子を用いた培養技術を世界で初めて開発しました。
 培養した細胞は再生医療などの近年の細胞を活用した医療技術においてますます重要な医療資源です。そしてそれらの細胞を適切に集めて培養し、三次元的な形を与えたり、その形を自在に設計する技術は、細胞からなる組織や臓器を構築する上で極めて大切な基盤技術の一つとなっています。
 一方、従来の典型的な細胞培養法では、細胞培養皿を用いた二次元的な平面培養法や、浮遊培養※1などを用いる三次元の塊(スフェロイド※2)状培養などが多用されますが、これらの間での自在な転換技術は開発されていませんでした。
 今回、永井教授らの研究グループが独自に開発した、尿素基を側鎖にもつウレイド高分子※3(図1)を細胞培養に応用することで、細胞の単層状態/スフェロイド状態の迅速な可逆的転換が可能となることが明らかとなりました(図2)。この技術は単層培養細胞を容易にスフェロイドへ誘導することを可能とするばかりでなく、逆にスフェロイドとしたのち適切なタイミングで二次元層状組織へと導くといった、従来にはなかった細胞集合体の構造制御法として再生医療分野への展開が期待されます。

画像1

図1 ウレイド高分子の構造式

画像2

図2 ウレイド高分子の存在下において、単層培養状態であった細胞は冷却によってスフェロイドへと形態変化する。加熱によってスフェロイドは単層培養状態へと戻る。

【研究内容】

 永井教授らの研究グループはこれまでに、尿素基を側鎖にもつウレイド高分子を独自に開発し、これが生理的pH並びに塩濃度条件下において、加熱によって溶解し、冷却によって非溶解状態になる非常に珍しい高分子であることを明らかにしてきました。今回、ウレイド高分子を細胞培養培地に添加しておき、培養温度をコントロールすることで培養細胞を単層培養状態からスフェロイド培養状態へと切り替えることに成功しています。37度の培養温度ではウレイド高分子は培地中で溶解しており、培養細胞は一般的な単層培養状態を保ちます。また、培養温度を25度にすると、ウレイド高分子は非溶解状態となり、単層培養状態からスフェロイドへと形態変化しました。さらに、培養温度を再度37度にすると、単層培養状態へと戻りました(図2)。つまり、本手法を用いることで培養細胞の形態と機能を可逆的に制御しうることが示されました。

【本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)】

 本研究成果により、培養細胞の形態と機能を可逆的に制御しうる新たな手法として、細胞生物学分野のみならず再生医療分野への貢献が期待されます。

【特記事項】

本研究成果は、アメリカ化学会のACS Applied Materials Interfacesに掲載されました。
タイトル:“Reversible monolayer/spheroid cell culture switching by UCST-type thermoresponsive ureido polymers”
著者名:Naohiko Shimada, Minako Saito, Sayaka Shukuri, Sotaro Kuroyanagi, Thasaneeya Kuboki, Satoru Kidoaki, Takeharu Nagai, and Atsushi Maruyama*
なお、本研究は「物質・デバイス領域共同研究拠点」・「人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンス」の一環として行われました。また、新学術領域研究「分子機械」、新学術領域研究「ナノメディシン分子科学」の支援を受けています。

【用語解説】

※1 浮遊培養
培地内で細胞を浮遊状態で増殖させる培養法のこと。継代の際には培地交換は行わず、希釈培養を行う。


※2 スフェロイド
複数個の細胞が球状の塊となった細胞凝集塊。単層状態の培養細胞と比べ、より生体の組織の状態に近いと考えられている。


※3 ウレイド高分子
ウレイドとは尿素(H2N)2COの水素原子をアシル基RCO-で置換した化合物の総称である。ウレイド基を有するポリマー型高分子のこと。

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世界初!細胞の集合状態を三次元の塊と二次元の単層状態との間で自在に制御することを可能とする新規高分子を開発

平成29年10月31日

世界初!細胞の集合状態を三次元の塊と二次元の単層状態との間で自在に制御することを可能とする新規高分子を開発

【成果のポイント】

◆ 細胞集団の三次元的な形を自在に制御することは困難であった。
◆ 温度感受性高分子が培養細胞の集合状態を三次元の塊と二次元の単層状態との間で自在に可逆的に制御しうることを発見。
◆ 細胞生物学分野のみならず再生医療分野への貢献に期待。

【概要】

 大阪大学産業科学研究所永井健治教授、東京工業大学生命理工学研究科の丸山厚教授、嶋田直彦助教、九州大学先導物質化学研究所の木戸秋悟教授らの共同研究グループは、物質・デバイス領域共同研究拠点ならびに人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンス活動における研究成果として、培養した細胞の集合状態を三次元の塊と二次元の単層状態との間で自在に制御することを可能とする新規高分子を用いた培養技術を世界で初めて開発しました。
 培養した細胞は再生医療などの近年の細胞を活用した医療技術においてますます重要な医療資源です。そしてそれらの細胞を適切に集めて培養し、三次元的な形を与えたり、その形を自在に設計する技術は、細胞からなる組織や臓器を構築する上で極めて大切な基盤技術の一つとなっています。
 一方、従来の典型的な細胞培養法では、細胞培養皿を用いた二次元的な平面培養法や、浮遊培養※1などを用いる三次元の塊(スフェロイド※2)状培養などが多用されますが、これらの間での自在な転換技術は開発されていませんでした。
 今回、永井教授らの研究グループが独自に開発した、尿素基を側鎖にもつウレイド高分子※3(図1)を細胞培養に応用することで、細胞の単層状態/スフェロイド状態の迅速な可逆的転換が可能となることが明らかとなりました(図2)。この技術は単層培養細胞を容易にスフェロイドへ誘導することを可能とするばかりでなく、逆にスフェロイドとしたのち適切なタイミングで二次元層状組織へと導くといった、従来にはなかった細胞集合体の構造制御法として再生医療分野への展開が期待されます。

画像1

図1 ウレイド高分子の構造式

画像2

図2 ウレイド高分子の存在下において、単層培養状態であった細胞は冷却によってスフェロイドへと形態変化する。加熱によってスフェロイドは単層培養状態へと戻る。

【研究内容】

 永井教授らの研究グループはこれまでに、尿素基を側鎖にもつウレイド高分子を独自に開発し、これが生理的pH並びに塩濃度条件下において、加熱によって溶解し、冷却によって非溶解状態になる非常に珍しい高分子であることを明らかにしてきました。今回、ウレイド高分子を細胞培養培地に添加しておき、培養温度をコントロールすることで培養細胞を単層培養状態からスフェロイド培養状態へと切り替えることに成功しています。37度の培養温度ではウレイド高分子は培地中で溶解しており、培養細胞は一般的な単層培養状態を保ちます。また、培養温度を25度にすると、ウレイド高分子は非溶解状態となり、単層培養状態からスフェロイドへと形態変化しました。さらに、培養温度を再度37度にすると、単層培養状態へと戻りました(図2)。つまり、本手法を用いることで培養細胞の形態と機能を可逆的に制御しうることが示されました。

【本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)】

 本研究成果により、培養細胞の形態と機能を可逆的に制御しうる新たな手法として、細胞生物学分野のみならず再生医療分野への貢献が期待されます。

【特記事項】

本研究成果は、アメリカ化学会のACS Applied Materials Interfacesに掲載されました。
タイトル:“Reversible monolayer/spheroid cell culture switching by UCST-type thermoresponsive ureido polymers”
著者名:Naohiko Shimada, Minako Saito, Sayaka Shukuri, Sotaro Kuroyanagi, Thasaneeya Kuboki, Satoru Kidoaki, Takeharu Nagai, and Atsushi Maruyama*
なお、本研究は「物質・デバイス領域共同研究拠点」・「人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンス」の一環として行われました。また、新学術領域研究「分子機械」、新学術領域研究「ナノメディシン分子科学」の支援を受けています。

【用語解説】

※1 浮遊培養
培地内で細胞を浮遊状態で増殖させる培養法のこと。継代の際には培地交換は行わず、希釈培養を行う。


※2 スフェロイド
複数個の細胞が球状の塊となった細胞凝集塊。単層状態の培養細胞と比べ、より生体の組織の状態に近いと考えられている。


※3 ウレイド高分子
ウレイドとは尿素(H2N)2COの水素原子をアシル基RCO-で置換した化合物の総称である。ウレイド基を有するポリマー型高分子のこと。