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新機能デバイスへの応用に期待 -酸化物セラミックスの3次元的立体構造作製に成功- 

平成29年7月21日

新機能デバイスへの応用に期待
-酸化物セラミックスの3次元的立体構造作製に成功-

【成果のポイント】

◆ 機能性酸化物セラミックスにおいて、単結晶三次元立体マイクロ・ナノ構造の作製に成功し、超省電力スイッチング、新型高周波アクチュエータの開発に成功
◆ 酸化物セラミックスは、硬く脆いため超微細加工が困難であったが、高品質単結晶薄膜成長の実現、新規エッチング技術の開発により、超微細加工を実現
◆ 高性能温度・赤外線センサ、超省電力スイッチングデバイス、新型アクチュエータなど新規エレクトロニクスへの応用に期待

【概要】

 大阪大学産業科学研究所の田中秀和教授、神吉輝夫准教授とイタリア・ジェノバ大学の研究グループは、金属-絶縁体相転移※1に伴う巨大な抵抗変化を示す機能性酸化物セラミックス※2において、新たな3次元造形の開発により、単結晶酸化物フリースタンディングナノワイヤ※3の作製に成功しました(図1)。これにより、従来の100分の1の消費電力で3桁の電気抵抗スイッチングや、新しい原理に基づく高周波アクチュエータ※4の実現に世界で初めて成功しました。
 今回、田中教授らの研究グループは、酸化マグネシウム基板上に、高品質酸化バナジウム単結晶を成長させる技術を開発し、MgO基板をエッチングにより取り除く技術の開発により、単結晶酸化物フリースタンディングナノワイヤを実現したものです。これにより、高感度センサ、強磁性や超伝導など多様な機能を示す酸化物セラミックスを利用した新機能NEMS(ナノ電気機械結合システム)デバイス※5など各種の新規デバイスの創製が期待されます。
 本研究成果は、日本科学誌「Appl. Phys. Exp. 10 (2017) 033201 (Published 22 February 2017)」に掲載され、また、ドイツ科学誌「Advanced Materials」にも7月に掲載されました。

図1
図1 単結晶酸化バナジウムの自立(フリースタンディング)ナノワイヤの走査型電子顕微鏡像

【研究の背景】

 これまで、機能性酸化物は、巨大な電気抵抗変化を伴う金属-絶縁体転移現象や、強磁性、超伝導など多彩な機能を示し、薄膜デバイスの研究が世界中で活発に行われています。しかし、3次元的な立体構造を作製することは、酸化物ならではの硬さ、脆さにより非常に困難でした。
 田中教授らの研究グループでは、酸化マグネシウム(MgO)基板上に、高品質酸化バナジウム単結晶を成長させる技術を開発し、MgO基板をエッチングにより取り除く技術の開発により、単結晶酸化バナジウムフリースタンディングナノワイヤを実現しました。
 これにより、従来の100分の1の消費電力で3桁の電気抵抗スイッチングを実現、また、新しい原理に基づく高周波アクチュエータの作製に成功しました。

【本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)】

 本研究成果により、フリースタンディング構造による高度な熱管理による高性能温度・赤外線センサ、超省電力スイッチングデバイスや、MEMS/NEMS(マイクロ/ナノ電気機械結合システム)による新型アクチュエータなどへの応用展開が期待されます。

【特記事項】

 本研究成果は、2017年2月22日(日本時間)に日本科学誌Appl. Phys. Exp. 10 (2017) 033201 (1-4) (Published 22 February 2017)」(オンライン)に【タイトル:“Joule-heat-driven high-efficiency electronic-phase switching in freestanding VO2/TiO2 nanowires”著者名:Y. Higuchi, T. Kanki and H. Tanaka】として掲載されました。また、ドイツ科学誌「Advanced Materials」(オンライン)に、【タイトル:“Selective High-Frequency Mechanical Actuation Driven by the VO2 Electronic Instability”著者名:N. Manca, L. Pellegrino,T. Kanki, W. J. Venstra, G. Mattoni, Y. Higuchi, H. Tanaka, A.D. Caviglia, and D. Marre】として2017年7月に掲載されました。なお、本研究はJenova大学物理学科 Daniele Marre教授グループの協力を得て行われました。

【用語解説】

※1 金属-絶縁体相転移
ある温度において、電気抵抗の高い絶縁体状態から、電気抵抗の低い金属状態へ急激に変化をする現象。酸化バナジウムなどにおいては、その変化率は1000%から10000%にも及び、スイッチングデバイス、メモリ、センサへの応用が期待されている。

※2 機能性酸化物セラミックス
金属イオンと酸素イオンからなる物質群で、金属伝導、半導体性に加え、シリコンデバイスには無い、高温超伝導、強磁性、強誘電性などの非常に多彩で巨大な物性を示すセラミックス。

※3 フリースタンディングナノワイヤ
基板から浮き上がって離れて自立できる構造。空中に浮き化がっていることにより、通常の薄膜デバイスと異なり、機械的振動や熱移動のコントロールが実現できる。

※4 アクチュエータ
入力されたエネルギーを物理的な運動へと変換する機構またはデバイス。アクチュエータはモーター、家電、人工筋肉の研究などに広く用いられている。

※5  MEMS/NEMS(マイクロ/ナノ電気機械結合システム) 
Micro(Nano) Electro Mechanical Systemsの略で、半導体製造技術やレーザー加工技術等、各種の微細加工技術を応用し、微小な電気要素と機械要素を一つの基板上に組み込んだセンサ、アクチュエータ等のデバイス/システムのことを指す。

【研究者のコメント】

 シリコンを利用した MEMSデバイスはその作製法が確立され、産業展開が期待されています。機能性酸化物セラミックスは非常に硬く難加工性ですが、シリコンに無い巨大物性(金属・絶縁体転移、高温超伝導、強磁性)を多く有するため、この材料でMEMSデバイス、さらに小さいNEMSデバイスが実現できれば、新規エレクトロニクスが展開でき、その波及効果は非常に大きいと期待しています。

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新機能デバイスへの応用に期待 -酸化物セラミックスの3次元的立体構造作製に成功- 

平成29年7月21日

新機能デバイスへの応用に期待
-酸化物セラミックスの3次元的立体構造作製に成功-

【成果のポイント】

◆ 機能性酸化物セラミックスにおいて、単結晶三次元立体マイクロ・ナノ構造の作製に成功し、超省電力スイッチング、新型高周波アクチュエータの開発に成功
◆ 酸化物セラミックスは、硬く脆いため超微細加工が困難であったが、高品質単結晶薄膜成長の実現、新規エッチング技術の開発により、超微細加工を実現
◆ 高性能温度・赤外線センサ、超省電力スイッチングデバイス、新型アクチュエータなど新規エレクトロニクスへの応用に期待

【概要】

 大阪大学産業科学研究所の田中秀和教授、神吉輝夫准教授とイタリア・ジェノバ大学の研究グループは、金属-絶縁体相転移※1に伴う巨大な抵抗変化を示す機能性酸化物セラミックス※2において、新たな3次元造形の開発により、単結晶酸化物フリースタンディングナノワイヤ※3の作製に成功しました(図1)。これにより、従来の100分の1の消費電力で3桁の電気抵抗スイッチングや、新しい原理に基づく高周波アクチュエータ※4の実現に世界で初めて成功しました。
 今回、田中教授らの研究グループは、酸化マグネシウム基板上に、高品質酸化バナジウム単結晶を成長させる技術を開発し、MgO基板をエッチングにより取り除く技術の開発により、単結晶酸化物フリースタンディングナノワイヤを実現したものです。これにより、高感度センサ、強磁性や超伝導など多様な機能を示す酸化物セラミックスを利用した新機能NEMS(ナノ電気機械結合システム)デバイス※5など各種の新規デバイスの創製が期待されます。
 本研究成果は、日本科学誌「Appl. Phys. Exp. 10 (2017) 033201 (Published 22 February 2017)」に掲載され、また、ドイツ科学誌「Advanced Materials」にも7月に掲載されました。

図1
図1 単結晶酸化バナジウムの自立(フリースタンディング)ナノワイヤの走査型電子顕微鏡像

【研究の背景】

 これまで、機能性酸化物は、巨大な電気抵抗変化を伴う金属-絶縁体転移現象や、強磁性、超伝導など多彩な機能を示し、薄膜デバイスの研究が世界中で活発に行われています。しかし、3次元的な立体構造を作製することは、酸化物ならではの硬さ、脆さにより非常に困難でした。
 田中教授らの研究グループでは、酸化マグネシウム(MgO)基板上に、高品質酸化バナジウム単結晶を成長させる技術を開発し、MgO基板をエッチングにより取り除く技術の開発により、単結晶酸化バナジウムフリースタンディングナノワイヤを実現しました。
 これにより、従来の100分の1の消費電力で3桁の電気抵抗スイッチングを実現、また、新しい原理に基づく高周波アクチュエータの作製に成功しました。

【本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)】

 本研究成果により、フリースタンディング構造による高度な熱管理による高性能温度・赤外線センサ、超省電力スイッチングデバイスや、MEMS/NEMS(マイクロ/ナノ電気機械結合システム)による新型アクチュエータなどへの応用展開が期待されます。

【特記事項】

 本研究成果は、2017年2月22日(日本時間)に日本科学誌Appl. Phys. Exp. 10 (2017) 033201 (1-4) (Published 22 February 2017)」(オンライン)に【タイトル:“Joule-heat-driven high-efficiency electronic-phase switching in freestanding VO2/TiO2 nanowires”著者名:Y. Higuchi, T. Kanki and H. Tanaka】として掲載されました。また、ドイツ科学誌「Advanced Materials」(オンライン)に、【タイトル:“Selective High-Frequency Mechanical Actuation Driven by the VO2 Electronic Instability”著者名:N. Manca, L. Pellegrino,T. Kanki, W. J. Venstra, G. Mattoni, Y. Higuchi, H. Tanaka, A.D. Caviglia, and D. Marre】として2017年7月に掲載されました。なお、本研究はJenova大学物理学科 Daniele Marre教授グループの協力を得て行われました。

【用語解説】

※1 金属-絶縁体相転移
ある温度において、電気抵抗の高い絶縁体状態から、電気抵抗の低い金属状態へ急激に変化をする現象。酸化バナジウムなどにおいては、その変化率は1000%から10000%にも及び、スイッチングデバイス、メモリ、センサへの応用が期待されている。

※2 機能性酸化物セラミックス
金属イオンと酸素イオンからなる物質群で、金属伝導、半導体性に加え、シリコンデバイスには無い、高温超伝導、強磁性、強誘電性などの非常に多彩で巨大な物性を示すセラミックス。

※3 フリースタンディングナノワイヤ
基板から浮き上がって離れて自立できる構造。空中に浮き化がっていることにより、通常の薄膜デバイスと異なり、機械的振動や熱移動のコントロールが実現できる。

※4 アクチュエータ
入力されたエネルギーを物理的な運動へと変換する機構またはデバイス。アクチュエータはモーター、家電、人工筋肉の研究などに広く用いられている。

※5  MEMS/NEMS(マイクロ/ナノ電気機械結合システム) 
Micro(Nano) Electro Mechanical Systemsの略で、半導体製造技術やレーザー加工技術等、各種の微細加工技術を応用し、微小な電気要素と機械要素を一つの基板上に組み込んだセンサ、アクチュエータ等のデバイス/システムのことを指す。

【研究者のコメント】

 シリコンを利用した MEMSデバイスはその作製法が確立され、産業展開が期待されています。機能性酸化物セラミックスは非常に硬く難加工性ですが、シリコンに無い巨大物性(金属・絶縁体転移、高温超伝導、強磁性)を多く有するため、この材料でMEMSデバイス、さらに小さいNEMSデバイスが実現できれば、新規エレクトロニクスが展開でき、その波及効果は非常に大きいと期待しています。