北海道大学・東北大学・東京工業大学・大阪大学・九州大学の共同研究ネットワーク

人・環境と物質をつなぐイノベーション創出 ダイナミック・アライアンス

展開共同研究B

20164026 制御放出可能な高分子電解質複合体カプセルの創製

遊佐真一(兵庫県立大学工学研究科)、高原淳(九大・先導研)、陣内浩司(東北大・多元研)

親水性ベタイン構造のホスホリルコリン基を側鎖結合したモノマーのMPCは、ラジカル重合可能なので、さまざまな機能性モノマーと組み合わせてブロック共重合体などの合成を容易に行える。またホスホリルコリン基は生体膜を構成するリン脂質の親水性部位と同じ化学構造なので、MPCを含むポリマーは生体適合性が高い。制御ラジカル重合法により構造の制御された水溶性MPCブロックと反対電荷を持つイオン性ブロックからなるジブロック共重合は、静電相互作用を駆動力としたナノメータースケールのベシクルを形成する。このベシクル周囲は、MPCポリマー鎖が覆った形になるため、生体適合性が高い。 本研究では、pHに応答して内包ゲスト分子を制御放出可能な生体適合性ベシクルを作製する(図1)。制御ラジカル重合法でMPCブロックと、側鎖に4級アンモニウム塩を含むブロックからなるカチオン性ジブロック共重合体を合成する。同様にMPCブロックと、側鎖に脂肪酸を含むブロックからなるアニオン性ジブロック共重合体を合成する。脂肪酸は中性でアニオン性だが、酸性でプロトン化してノニオン性に変化する。純水中で反対電荷を持つジブロック共重合体を混合することで、静電相互作用でベシクルを形成する。水溶液のpHを酸性に変化させることで、ベシクルが崩壊すると予想される。このような外部刺激により内包分子を制御放出可能なベシクルは、環境浄化、農薬散布、化粧品、医薬品などさまざまな方面への応用が期待される。