第10回ホームカミングデー:ご挨拶

  真夏の異常高温が通常となり、激しい降雨が頻発する日本の亜熱帯化、いつ来るかわからない大地震など我々を取り巻く自然環境は厳しさを増しています。しかし、今までも人類は様々な科学技術を用いて生活の快適化を実現してきました。また、我々の体を健全に保ち、不具合が起きれば解決する医療も着実に発展し、健康で長生きすることができるようになりました。自然環境の改善、健康増進・維持への科学技術の役割は今ますます大きくなっています。産業科学研究所もこれら地球規模の問題解決と人類の健康に大きく寄与できればと思います。  今回の産研ホームカミングデイ特別講演には、大阪大学医学系研究科長・医学部長、大阪大学生命機能研究科教授の 石井優先生に” IN VIVO VERITAS~生体を見て分かる生命現象の時空間組織多様性の解明”と題してお話しいただけることになりました。「生きた細胞」を、「生きた組織」「生きた個体」の中で観察する生体イメージングと、その可視化情報に基づいた組織生化学的解析の実際を紹介していただけます。先生のお話を聞いて、産業科学研究所の皆さんがどのような寄与をしていけるか、ヒントをつかめれば幸いです。

(会長:川合 知二)

ホームカミング・特別講演

 

「IN VIVO VERITAS~生体を見て分かる生命現象の時空間組織多様性の解明」

大阪大学大学院医学系研究科長・医学部長
大阪大学大学院生命機能研究科 教授
石井 優

 私たち「動物」にとって、その「動き」は重要です。私たちの体の中でも多種多様な細胞の動きは時空間的に精緻にコントロールされています。このようなシステムの研究には、動物から細胞・組織を取り出して行う従来の解析法では不十分です。固定・薄切した組織観察では、細胞の「形態」や「分子発現」などを解析することはできますが、細胞の「動き」を解析することはできません。細胞の動きを見るためには、「生きた細胞」を、「生きた組織」「生きた個体」の中で観察する必要があります。本講演では、私がこれまで行ってきた様々な組織における生体イメージングと、その可視化情報に基づいた組織生化学的解析の実際を紹介し、見ることによって初めて分かった様々な細胞の巧妙な動きや、生体を見ることによって初めて見つけることができた新たな細胞について紹介します。特に、最近演者らが発見した肝臓局所における免疫抑制機構とその病態生理的意義について、その発見に至る経緯から経過まで、詳しく述べたいと思います。

 

 

学術講演会:ご挨拶

医療のための産業科学

   大阪大学産業科学研究所は、情報・量子科学、材料・ビーム科学、生体・分子科学、ナノテクノロジー・ナノサイエンスの4つの研究部門と、学際的研究の推進を目的とする産業科学AIセンターから構成され、新たな産業科学イノベーションの創出を目指して、研究・教育活動に取り組んでいます。さらに、産業界や海外研究機関との連携強化、5附置研究所間の共同研究拠点事業などを通じて、科学技術イノベーションエコシステムの強化に努めています。  人生100年時代において、Society 5.0が掲げる「誰もが豊かで健康に暮らせる社会」を実現するためには、予防医療・健康管理から、個別化医療・非侵襲医療・遠隔医療、ロボット介護やリハビリ支援に至るまで、幅広い医療分野における技術革新が不可欠です。本講演会では、広範な最先端科学技術の医療応用および社会実装が必要であるとの認識のもと、「医療のための産業科学」をテーマとして企画しました。独自の合成ペプチド開発プラットフォームという革新的な科学技術を基盤に、難病や希少疾患に対する治療薬の開発で世界を牽引するペプチドリーム株式会社を創業された東京大学大学院理学系研究科の菅裕明先生をお招きし、特別講演を賜ります。また、研究所内の各研究部門・センターの教授による学術講演に加え、すべての研究グループによるポスター発表から成るプログラムを構成しました。

(世話人代表:山口 哲志)

学外講演

 

「特殊ペプチド創薬とネオバイオロジクス創薬」

東京大学大学院理学系研究科
教授 菅 裕明

 RaPIDシステムは、菅らが独自に開発した人工RNA酵素「フレキシザイム」と大腸菌再構築無細胞リボソーム翻訳系を組み合わせたFITシステムに、mRNAディスプレイ技術を取り込んで構築された。本システムは、mRNAを鋳型として、特殊ペプチドを自在かつ簡便に翻訳合成し、活性種を迅速にスクリーニングする技術である。この技術を駆使することで、特殊ペプチドのライブラリー化も極めて容易に達成でき、様々な疾患原因タンパク質に対する特殊ペプチドの薬剤探索が可能となった。また近年、新たな創薬モダリティーとして、特殊環状ペプチドのファーマコフォア配列をタンパク質に導入することで、簡便にマルチ特異性を有するタンパク質、ネオバイオロジクスの創製に成功した。本講演では、技術開発から応用事例まで、特殊ペプチド創薬とネオバイオロジクス創薬を紹介する。

 

学術講演

植村 隆文

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第1研究部門
(情報・量子科学系)▶▶Click

細貝 知直

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第2研究部門
(材料・ビーム科学系)▶▶Click

山口 哲志

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第3研究部門
(生体・分子科学系)▶▶Click

谷口 正輝

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産業科学ナノテクノロジーセンター▶▶Click

スケジュール

●ホームカミングデイ
13:00 挨  拶  産研同窓会会長 川合 知二

13:10 特別講演  大阪大学大学院医学系研究科長/大阪大学大学院生命機能研究科 教授 石井 優
「IN VIVO VERITAS~生体を見て分かる生命現象の時空間組織多様性の解明」


14:10 休  憩


●学術講演会
14:20 開会挨拶  産業科学研究所 所長 黒田 俊一

14:30 学外講演  東京大学大学院理学系研究科 教授 菅 裕明
「特殊ペプチド創薬とネオバイオロジクス創薬」

15:30 休  憩


15:40 学術講演  第1研究部門 産業科学研究所 准教授 植村 隆文
「持続可能な社会の実現に貢献する機能性有機材料の開発」

16:10 学術講演  第2研究部門 産業科学研究所 教授 細貝 知直
「次世代加速器技術の創薬への展開」

16:40 休  憩


16:50 学術講演  第3研究部門 産業科学研究所 教授 山口 哲志
「1細胞解析のための光材料化学」

17:20 学術講演  第1研究部門 産業科学研究所 教授 谷口 正輝
「AIナノポア検査法からウイルス物質工学へ」

17:50 閉会挨拶 産業科学研究所 副所長 駒谷 和範



●ポスターセッション
13:00~ 掲示、 18:00~ 討論



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