大阪大学 産業科学研究所

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2018.10.16
生命におけるシンギュラリティ現象の解明を目指した新学術領域研究の発足!

《研究成果のポイント》

◆ 生命現象において臨界をもたらす「シンギュラリティ※1細胞※2」の検出
◆ ノからマクロに至るスケール横断的なイメージングを可能にする「観察・操作・分析」統合顕微鏡ユニットAMATERAS の開発
◆ シンギュラリティ現象の生物学的意義の解明
◆ 国際的な研究者コミュニティをリードするための、国際トレーニングコースの開催
◆ 平成31年度の公募研究を約20件募集中

【概要】

 大阪大学産業科学研究所の永井健治教授(大阪大学栄誉教授)を領域代表者とする研究領域「シンギュラリティ生物学」が平成30年度科学研究費助成事業「新学術領域研究(領域提案型)」に採択されました。
今回の結果により、有機薄膜太陽電池も含めて様々な有機半導体材料の高性能化に繋がる材料開発が加速的に進展すると期待されます。
 ビッグバンのように「無から有が創出される特異点」や、人工知能がヒトの知能を凌駕する技術的特異点はシンギュラリティ(臨界)と呼ばれています。有機スープからの生命誕生、進化、感染爆発など生物科学においても、不連続な臨界現象は広く存在します。ここでは極めて稀にしか起こらない少数要素のイベントが核となり、多要素システム全体の働きに不連続な変化をもたらす可能性が示唆されているものの、シンギュラリティ現象が生起される作用機序はほとんど明らかにされていません。本領域では、生命現象において臨界をもたらす「シンギュラリティ細胞」にアプローチするため、稀なイベントを見逃さない、超広視野と高解像度、高速と長時間撮影を両立したイメージングプラットフォームと対応する情報解析手法を構築し、シンギュラリティ細胞が生成される作用機序、ならびにそれが果たす生物学的な役割を解明する新しい学術の開拓を目指します。
 また、このために本研究領域では、趣旨を理解し、研究領域メンバーとの密接な連携により相乗的な展開が期待できる平成31年度の公募研究を現在、20件募集しています。

【研究の背景】

 永井教授は平成23~27年度においても同事業にて「少数性生物学」の領域代表を努めており、今回はその成果を基盤にした新たな領域提案となります。

【本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)】

 世界的にも類例のない計測・解析統合デバイスAMATERASを開発し、共同利用体制を確立します。その効果的な運用は、光学、分子工学、数理生物学、情報科学、生物学、医学研究者による大規模な異分野連携研究を加速させ、革新的なデバイスの開発、新たな情報処理理論の構築、疾患の超早期診断・介入法といった成果をもたらすことが期待されます。また、AMATERASを核としたアライアンスネットワークを構築することで、産学連携を推進するとともに、トランススケールイメージング※3に特化した国際トレーニングコースや国際シンポジウムの開催を通じ、異分野連携に精通した次世代の若手リーダーを排出するなど、人材育成においても大きな貢献が期待されます。

【用語解説】

※1 シンギュラリティ
  人工知能がヒトの知能を凌駕する技術的特異点。

※2 シンギュラリティ細胞
  臓器や個体など膨大な数の細胞から構成される多細胞社会において、システム全体の動態が不連続かつ劇的に変化するきっかけとなる少数の重要な細胞。

※3 トランススケールイメージング
  「分子~細胞~臓器」をスケール横断的に可視化するイメージング