大阪大学 産業科学研究所

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2019.08.27
産業科学研究所と大阪産業技術研究所の 研究連携協力に関する協定締結について -AIを活用した香り・におい解析技術の確立を目指して-

概要

大阪大学産業科学研究所と、大阪産業技術研究所(ORIST)は、AIを活用した香り・におい解析技術の確立を目的として、研究連携協力に関する協定を8月27日(火)に締結いたしました。

研究の背景

大阪大学産業科学研究所は、広範な研究領域(情報科学領域を含む)をunder-one-roof(一つ屋根の下)に擁するメリットを活用して、各研究分野にデータ駆動型研究手法を効率よく導入するために、「産業科学AIセンター(5研究分野とビッグデータファクトリーから構成:黒田俊一センター長)」を2019年4月1日に発足させました。同センターは、従来のAI研究者が各研究分野向けにAI導入プロトコルを開発するのではなく、各研究分野の若手研究者がAI教育を受けてAI導入プロトコルを開発する「研究現場主導型AI導入(ボトムアップ型AI導入)」を行うことを特徴としています(8月1日産研定例記者会見にて発表済)。現在、大阪大学産業科学研究所では、ヒトの五感の中で最も解析が遅れている嗅覚について、少なくとも5研究室が様々な「嗅覚センサー」を開発し、「香り・におい情報のデジタル化」に取り組んでいます。上記の産業科学AIセンターでは、各嗅覚センサーで得られる複雑なシグナルをAI解析し、数十万種類存在する香り・におい成分を精密に分析することを目指しています。

一方、大阪産業技術研究所は、嗅覚に関して高分子機能材料研究部を中心に、国内の大学および公的機関と香り・においの分析・解析技術を活用した共同研究を実施してきました。また、企業との様々な香り・におい関連製品(芳香・消臭・脱臭・防臭剤)の共同開発による製品化を長年行ってきており、その経験とノウハウは大阪大学産業科学研究所の「嗅覚センサー開発」および「香り・におい情報のデジタル化」に大きく貢献すると考えられます。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

両研究所が保有する「香り・におい解析技術」を融合、発展させ、さらにAI導入を図れば、「嗅覚センサー開発」および「香り・におい情報のデジタル化」が大きく進展し、ヒトの嗅覚に完全に依存していた香り・においに関係する研究やビジネスを大きく変革し、さらに、新たな社会的価値が創造できると考えています。

具体的な例として、大学、公的機関、企業などが有する消臭剤設計、悪臭対策、香料設計、嗅覚情報に基づいたアロマセラピー開発、香り・においデータベース開発など複雑な"におい"課題に対し、高度な解決策を迅速かつ安価に提供できるようになります。両研究所間で勉強会(悪臭やにおいで関係する企業も含めて)を通じたネットワーク形成も行い、新たな起業なども期待できます。将来的には、香り・におい情報のデジタル機器への搭載、さらには、香り・においプロジェクタのようなものを開発してバーチャル・リアリティ的な再現を行うことも可能になります。

香り・においの課題を契機に、広範囲な研究領域で相互の連携協力により実用につながる学術研究の振興と得られた研究成果の社会還元を図ることで、ものづくり産業の競争力の強化および地域社会の発展に貢献します。