大阪大学 産業科学研究所

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2023.12.15
地産品の最適な保存方法確立に向けた研究成果報告および 鮮度保持コンサルティングサービスの開始 ~地産品に応じた保存レシピのコンサルティングにより生鮮品流通の課題を解決、 コールドチェーンの価値向上を実現~

概要

 大阪大学 産業科学研究所(以下、大阪大学)と東日本電信電話株式会社(以下、NTT 東日本)、株式会社NTTアグリテクノロジー(以下、NTTアグリテクノロジー)は、2022年12月より、地産品の最適な保存方法確立に向けて共同研究を進めてまいりました。本研究で取り組んできたイチゴの長期品質保持に成功したことから、NTTアグリテクノロジーが本成果を活用し、地産品の最適な保存レシピの開発に向けた「鮮度保持コンサルティングサービス」を開始いたします。本サービスを通じ、地産品の品質保持や生鮮流通に関するさまざまな課題解決に取り組み、コールドチェーン※1の価値向上をめざします。

取り組みの背景・目的

 日本各地には、美味しくて魅力ある地産品がありますが、品質を保持したまま消費地に届けられないものが多く存在します。また、食料自給率向上が求められる一方で、収量や気候変動で需給バランスが崩れ、流通各所でのフードロスが課題になっています。さらに物流業界では2024年より時間外労働の上限規制が始まることで、生鮮流通が一層困難になっていきます。これら生鮮流通に関わる各種課題の解決に向けては、地産品の品質を保持しながら生産地と消費地をつなぐ、コールドチェーンに期待が寄せられています。

 本研究では、ICTを活用し、温度・湿度等の環境データや、水分量等の品質データに基づき、複数の鮮度保持技術を組み合わせた最適な保存方法確立をめざして取り組みました。本研究成果で得たノウハウを活用した鮮度保持コンサルティングサービスを通じて、コールドチェーンの価値向上を実現し、魅力ある地産品の消費地への流通による地域経済の活性化、地産品の長期品質保持によるフードロス削減、出荷調整によるトラックの積載効率改善を通じた物流業界における"2024年問題"への寄与等、生鮮流通に関する社会課題の解決をめざしてまいります。

共同研究成果

 本研究は、地産品の鮮度劣化メカニズムやICTセンサーで取得した温度・湿度等の環境因子が、研究対象としたイチゴや桃の品質に与える因果関係を解明し、電気エネルギーや包装資材等の複数の鮮度保持技術を組み合わせた最適な保存方法開発を目的に取り組みました。研究成果として、イチゴが通常の冷蔵保存4日間と比較し、プラス10日間の品質保持を実現することができました。

<研究内容>
・鮮度保持技術の組み合わせをパターン化し比較検証
・環境因子や品質の各種データを取得・解析
・劣化メカニズムや環境因子が与える因果関係の解明

<研究対象>
・イチゴ(品種 とちおとめ、さちのか、越後姫、章姫、サマーリリカル、夏のしずく)
・桃(品種 さくら)

<研究における各者の役割>

大阪大学取得データの解析・学術的根拠に基づいた提言
NTT東日本共同研究プロジェクト管理・保存環境の各種データ取得

コンサルティングサービス概要

 NTTアグリテクノロジーは、今回得られた研究成果を活用し、地産品を取り扱う生産者や流通事業者等のお客さまに、「鮮度保持コンサルティングサービス」として最適な保存方法をご提案いたします。具体的には、お客さまの取り扱う地産品に最適な保存レシピの開発をはじめ、保存設備の運用方法などをトータルにコンサルティングいたします。本サービスを通じて、地産品の出荷調整や長期販売・ブランディング等に貢献してまいります。なお、保存技術を気軽にお試しいただける地産品お預かりプランや保存設備レンタルプランもご用意しておりますのでお気軽にお問い合わせください。

<コンサルティングにおける各者の役割>

大阪大学学術的根拠に基づいた提言
NTT東日本保存環境のデータを取得するICTサービスの開発・提供
NTTアグリテクノロジー生鮮流通等の課題を持つお客さまに対するコンサルティングサービスとソリューションの展開


<お客様からのお問い合わせ先>
 NTTアグリテクノロジー
 Mail:contact@ntt-agritechnology.com
 Web:https://www.ntt-agritechnology.com/ 
 事業内容:自社ファームにおける農作物の生産・販売、IoT/AI等による次世代施設園芸関連ソリューションの提供、一次産業の生産性向上や省力化等データ駆動型農業の地域実装

図1

図1 コンサルティングサービスのイメージ

今後の展望

 今後は、お客さまのご要望に応じ、本研究で得られた成果を他の野菜、肉、魚、花卉等の一次産品、酒、加工品等の二次産品にも応用し、最適な保存レシピの鮮度保持コンサルティングサービスを検討してまいります。また、物流工程にも地産品に応じた最適な鮮度保持技術を活用することで、輸送時の品質確保や、品質を保持したまま輸送可能なエリアの拡大を実現し、さらには海外輸出での活用も見据え、コールドチェーンの価値向上をめざします。これらの取り組みを通じ、フードバリューチェーン全体の支援を手掛けていくことで日本の食と農業の持続的な発展をめざします。

期待する声

 これまでロスの発生や繁忙期の仕入れ調整、旬の短さなどに課題があり、思い通りに生産者のこだわりの果物を届けられていない現状がありました。しかし、鮮度保持技術の効果は見た目だけですぐに確認できました。消費者に採れたての最高鮮度のものを味や品質を落とすことなく、安定して届けられるようになり、かつロス削減や仕入れ調整が期待できます。(宮城県・株式会社いたがき様)

 佐久穂町では生食用プルーンのブランド化を進めていますが、常温では3~4日、冷蔵庫でも1週間程度しか日持ちしません。さらに、気候変動の影響で収穫量が安定せず、消費者の皆様からの購入希望に対して十分対応することが難しく、生産者側でもPRイベント等に必要量のプルーンを確保することがかなり負担になっている状況がありました。しかし、鮮度保持技術を活用したところ、1ヶ月の保存が実現し、イベントに合わせた出荷調整も可能となりました。生産者の皆様からは、出荷調整により負担軽減できたと大変好評で、提供させていただいている「新宿高野様」からは、「甘味が強くその分コクがあるように感じた」「追熟したプルーンの美味しさがある」と高評価をいただきました。今後はさらに、ブランド力向上や販路拡大、生産量の増加も図っていきたいと考えています。(長野県・佐久穂町役場様)

 私たちは山形県を中心に東北6県の地産品をお客さまにお届けしている地域商社です。鮮度保持技術を活用することで東北の魅力的な生鮮品や日本酒等の加工品を、鮮度の問題でこれまで届けられていなかったさらに多くの全国の方に届けられることを期待しています。また長期間の鮮度保持を実現することで、これまで季節ごとに限定的だったラインナップのバリエーションを増やし、多様なニーズへ対応した魅力的な商品を拡充・提供していきたいと考えています。(山形県・やまがた物産振興機構様)

用語説明

※1 コールドチェーン:
生鮮食品や冷凍食品など低温管理が必要な商品を生産地から消費地まで、所定の温度(冷蔵・冷凍)に保ったまま流通させる仕組み