Research Details

  • Research Name : レーザー航跡場加速機構の研究

概要

レーザー光を1018W/cm2を超える集光強度でガス標的に照射すると、その光電場は標的原子の束縛電子をトンネル効果により完全電離するのに十分な電場強度(〜109V/cm程度)となり、ガス標的は10フェムト秒以下の短時間のうちにプラズマ化します。このプラズマ中では、レーザーの空間的なパルス幅がプラズマ振動の波長程度になるとレーザーパルスのポンデロモーティブ力(動重力)により大振幅のプラズマ波がレーザーパルスの後方に励起されます。それは、まるで水面を進む船の後方に立つ航跡のようであることからレーザー航跡場 (レーザーウエークフィールド)と呼ばれます。このレーザー航跡場振動の位相速度は、レーザーパルスの群速度に等しい縦波で、その電場強度は従来高周波加速器が作り出す加速電場の1000倍を超える〜100GV/mにも達します。レーザー航跡場加速はこの縦波中の超高電場で電子を加速することから(図参照)、数百メートルのGeV(ギガ電子ボルト)級加速器を卓上サイズで実現できる加速方式と期待されています。レーザー光のチャープパルス増幅法が発明され(注1)、パルス幅サブピコ秒の100TW(テラワット)を超える高強度超短パルスレーザが出現したことによって実験による検証が可能となりました。

(注1)2018年、チャープパルス増幅法の発明の功績によりG. Morou博士(仏)がノーベル物理学賞を受賞しています。

 

①レーザーの持つポンデロモーティブ力(動重力)により、電子を押しのける。

②イオンは重くて動けないので、電子とイオンの荷電分離が起こり、レーザーのパルス長とプラズマ波長が同程度であればプラズマ波(航跡場)が励起される。

③プラズマの中をほぼ光速cで進行するレーザー航跡場に捕獲されたプラズマ中の電子がレーザー航跡場中の超高電場で進行方向に加速される。

 

 

これまでに当研究室を含め世界各国のレーザー航跡場加速実験によって当初目標のGeV級の加速や準単色ビーム発生の原理実証は既に成され、加速機構としての高いポテンシャルが確認されています。しかしながら、ビームの安定性/再現性、品質、制御性等の粒子加速器としての性能指標の現状は、その加速媒質となるプラズマの制御の難しさから従来加速器に遠く及ばず、これらの確立がレーザー航跡場加速器実現の喫緊の課題となっています。当研究室は、レーザー航跡場加速のGeV級電子ビームをドライバーとする超小型X線自由電子レーザーの実現を究極目標に掲げた研究プロジェクト「未来社会創造事業LPA」に参加し、いくつかの国立研究機関とも連携しレーザー航跡場加速器の実現に向けた研究開発を実施しています。

 

開発目標とするステージングレーザー航跡場加速駆動のFEL(概略)

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