カーボンナノチューブ(CNT)はグラファイトの一枚面(グラフェンシートと呼ばれます)を巻いた筒状の形状をしており、直径は数ナノメートル(ナノメートル:10億分の1メートル)、長さは数ミクロンの炭素材料です。このように長さと直径の比が1000以上あるため、理想的な一次元物質として扱うこともでき、金属材料よりも一桁以上多い電流密度を流すことができることから、物性評価、デバイス応用の両面から研究されています。我々の研究室ではこのCNTを用いた、室温で動作可能なデバイス作製を目指し、研究開発を行ってます。以下は簡単なCNTの説明です。
図1はカーボンナノチューブの性質を決めるカイラリティ(Chilarity:螺旋度)を示したものです。CNTは青色で示した六角形格子でできたグラフェンシートを丸めることでできるため、たとえば一枚の紙を縦から巻いた場合、横から巻いた場合、斜めから巻いた場合でそれぞれできあがったCNTの性質が変わります。図1で、(0,0)と書かれた格子点をどこと重ねて巻くかでCNTは半導体になったり金属になったりします。たとえば(0,0)と(9,0)を重ねるように巻いた場合は金属的な性質を持つCNTができますし、(0,0)と(9,1)を重ねて巻いた場合は半導体的な性質を持つCNT が作製されます。特に(n,0)のCNTをジグザグ型、(n,n)のCNTをアームチェア型と呼びます。現在までに発見されているCNTの中で最も直径の小さなものは、カイラリティが(5,0)、(4,2)、(3,3)であると考えられている直径約0.4ナノメートルのものです。
図1:CNTのカイラリティ
CNTを我々は「熱CVD法」と呼ばれる方法で作製しています。これは基板(シリコンや石英)上に鉄を含んだ触媒を塗布ないしはフォトリソグラフィー法でパターニングして炉の中に入れ、900度で炭素源となるアルコールを流すことで作製しています。図2に我々の研究室で作製されたCNTの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示します。見えている繊維状の物はほとんどすべてがCNTです。
図2:我々の研究室で作製しているCNTのSEM画像