大阪大学 産業科学研究所
先進電子デバイス研究分野では、有機材料の優れた機械的特性(フレキシビリティ)と電気的特性を利用した次世代デバイス、“フレキシブルエレクトロニクス・フォトニクス”の研究に取り組んでいる。有機材料を含む機能性ソフト材料を用いた電子デバイス、光デバイスを基盤技術とし、情報通信技術から医療・福祉・バイオ分野など広範な領域において新しい科学を創出する。さらに、その具体的応用例を実証し、社会実装することを目標にしている。
より具体的には、有機材料の「優れた電気的・機械的特性」に加えて、「自己組織化現象(有機超分子構造形成)」、「低エネルギー加工性」を応用したフレキシブルエレクトロニクスの基礎材料・物性研究および応用研究を行っている。特に、有機ナノ分子積層技術、有機半導体/絶縁体界面制御技術、有機分子材料物性制御技術、分析技術、有機回路設計技術といった有機材料特有の技術開発を広範な領域において行うことで、有機トランジスタの高度集積化を実現している。
我々のグループではこれまでに「フレキシブル有機トランジスタ(TFT)作製の基盤技術の確立」[Nature Materials 9 (2010) 1015、 Science 326 (2009) 1516、 Nature Materials 6 (2007) 413]と「機械的特性に優れたウルトラフレキシブルエレクトロニクス、ストレッチャブルエレクトロニクスの実現」[Nature 499 (2013) 458)、 Nature Materials 8 (2009) 494、 Science 321 (2008) 1468]に成功し、その有用性を世界に先駆けて実証してきた。
さらに電子デバイスのみならず、共役系高分子型の超薄膜有機電界発光デバイス(OLED)[Nature Photonics 7 (2013) 811]、バルクヘテロ型の有機光電変換デバイス(太陽電池、フォトディテクタ:OPD)[Nature Communications 3 (2012) 770]を1ミクロン厚みのプラスティックフィルム上に作製することで、装着感のない次世代ヒューマンインターフェース「Imperceptible Electronics」を創出し、次世代医療・福祉を含むあらゆる社会実装へ向けた応用研究を進めている。
これらの応用研究は、微細構造形成技術、ナノ構造解析技術、最先端材料科学に支えられています。我々のグループでは、軌道放射光を用いた一分子層(1~2nm)の高分解能解析技術、および空間制御技術[Nature Communications 3 (2012) 723]を有しています。単一有機分子では現れない集団的有機分子が見せる機能“有機超分子技術”を用いることでこれまでに画期的な電子デバイス・光デバイスを開発している。
さらに固体材料の表面・界面のナノスケール構造を制御可能とする新しいプロセス技術の開発を通して、結晶成長や薄膜形成など様々な非平衡過程における表面・界面形態形成のメカニズムについて研究しています。走査トンネル顕微鏡や原子間力顕微鏡などを用いた観察とモデル解析により、表面・界面における原子や分子の振舞いを調べている。