産業科学研究所学術講演会

ホームカミング特別講演会

ご挨拶

産研同窓会長 山口 明人

 人類の歴史で経験したことのない高齢化時代を迎えています。そろそろ定年という慣習をやめたらどうでしょう?年齢に関係なく人は働く。働けなくなったら初めて年金を支給する。年金問題はいっぺんに解決しますよ。 産研の現役とOB/OGが交流する場を設けたいとホームカミングデイを設けて今年は3年目です。これまでお話をしてくださった坂田祥光先生、福井俊郎先生、権田俊一先生、川合知二先生、いずれも趣味に、お仕事に現役顔負けの働きをされており、大変刺激を受けました。

今年お話しいただくのは溝口理一郎先生です。溝口先生は私と同い年で、定年は一緒のはずでしたが、定年を待たず北陸先端科学技術大学院大学教授として華麗に転身され、今も同大の特任教授としてバリバリの活躍をされています。今最先端のAIの先達、オントロジー工学の日本の第一人者ですが、実は私、産研時代の先生のご講演を拝聴しても、身近な例を挙げてやさしくお話されているのですが、一体何の研究なのかさっぱりわかりませんでした。今回の演題は「因果とは何か?」です。またわかんなそうだな。そんな高踏的学問を専門とされている溝口先生ですが、スキーが大好きなスポーツマンです。私は苗場国際の日本最長のリフトのくだりに乗ったというスキーできない人間なので、溝口先生のスキー会には一度もご一緒しませんでしたが、現在でも多くの現役産研教授の方とご一緒に溝口スキー会は盛大に続いていると伺っています。文武両道の溝口先生の颯爽としたお姿からまた活力をもらえそうです。どうか皆様ふるってご聴講ください。

   

13:10 ~ 14:10

特別講演:「因果とは何か?」

溝口 理一郎
大阪大学名誉教授
北陸先端科学技術大学院大学サービスサイエンス研究センター 特任教授

 1972年大阪大学基礎工学部卒業、1977年同大学大学院基礎工学研究科博士課程修了。工学博士。同年、大阪電気通信大学工学部講師。1978年大阪大学産業科学研究所助手、1987年同研究所助教授、1990年同研究所教授を経て、2012年10月より北陸先端科学技術大学院大学サービスサイエンス研究センター教授。2014年4月より同特任教授、現在に至る。専門は、オントロジー基礎理論、上位オントロジー、医療オントロジーや学習支援システム、サステナビリティー科学などの各種オントロジーの開発、およびオントロジーの応用システムの開発・研究を行っている。趣味は、テニス、スキー。趣味も研究も全力で、オントロジー工学の研究を牽引されている。

学術講演会

「産業に活かす基礎科学」

世話人代表 教授 小口 多美夫

  産業科学研究所は、設立時に掲げられた「産業に必要な自然科学の基礎と応用」の使命の下、第1研究部門(情報・量子科学系)、第2研究部門(材料・ビーム科学系)、第3研究部門(生体・分子科学系)の3研究部門、および産業科学ナノテクノロジーセンターにより構成され、我が国屈指の高等教育機関である大阪大学の附置研究所として、世界最高水準の教育・研究を実施する責任を負うと同時に、その科学研究を産業に資するべく展開することが求められています。本年度の学術講演会は、改めてその産研の使命を認識するべく、「産業に活かす基礎科学」と主題テーマを決め、5附置研究所間ダイナミック・アライアンス事業、物質・デバイス領域共同研究拠点事業によりコバレントな共同研究を実現されている東北大学多元物質科学研究所の本間格先生による学外講演、各部門・センターから4教授による学術講演、そして、全研究分野によるポスター発表によりプログラムを構成しました。

 

14:30 ~ 15:30

学外講演:
「高容量・高出力型蓄電デバイスを指向したナノ材料プロセッシングの新展開」

本間 格
東北大学 多元物質科学研究所 金属資源プロセス研究センター長・教授

 ポストリチウムイオン電池と目されている全固体電池、多価イオン電池、空気電池など現行リチウムイオン電池に比較して数倍の蓄電エネルギー密度を有する革新的電池の研究開発が世界中で活発化している。このような開発競争で優位に立つには高機能エネルギー材料の開発がキーポイントである。この目的に対しては近年、急速に基礎研究が進んでいるナノサイエンス、ナノテクノロジーの知見を活用するのが有効である。ナノ粒子、ナノポーラス物質、単原子層シート物質、クラスター物質などバルクには無い優れたエネルギー変換・貯蔵機能を有するナノマテリアル群が数多くある。本講演ではこれらのナノ機能材料創製に湿式プロセッシングを効果的に適用した研究例を紹介する。ナノ機能材料を応用して電池デバイスの高性能化が実現すれば低炭素化社会に貢献するエネルギー基盤技術の構築が期待できる。

1984年東京大学工学部金属材料学科卒業。1985年東京大学工学部化学工学科助手、講師、1995年工業技術院電子技術総合研究所エネルギー部・主任研究官、(独)産業技術総合研究所エネルギー技術研究部門・研究グループ長を経て2010年より現職、2017年(独)科学技術振興機構 研究開発戦略センター特任フェローを兼務。


15:40 ~ 16:10

学術講演:「シミュレーションと機械学習の融合による希少・特殊・極限状態の探索」

鷲尾 隆
第1研究部門(情報・量子科学系) 教授

 シミュレーション技術及び機械学習技術の発展に伴い、大規模シミュレーションと機械学習を融合させることにより、新しい知識を創出する技術開発が活発化している。ここではシミュレーションに学習・探索アルゴリズムを組み合わせ、科学的ないし工学的なシステムにおいて極めて低確率、あるいは特殊、極限の条件でないと発生しない状態やそれに至るシナリオを効率的に見つけ出すシミュレーションを実現した具体例を紹介する。このような融合技術は、マテリアルインフォマティクスをはじめ、科学や工学におけるシミュレーションの適用問題領域を飛躍的に拡大する可能性がある。この研究は、講演者がクロスアポイントによって勤務する産業総合研究所人工知能研究センターNEC-産総研連携研究室の成果である。


16:10 ~ 16:40

学術講演:「シリコンの科学と応用」

小林 光
第2研究部門(材料・ビーム科学系) 教授

 半導体としてのシリコンの利用は、LSIや太陽電池等、盛んに行われている。一方、医薬応用の研究はほとんど皆無である。本講演では、シリコンの半導体としての利用、特に太陽電池と、医薬応用について紹介する。シリコンを原料として創製したシリコン成分剤は、中性の水と反応して多量の水素が発生する。体内では、呼吸や代謝によって酸化力の強いヒドロキシルラジカルが常時生成している。ヒドロキシルラジカルは、細胞を酸化・破壊し、アルツハイマー認知症、パーキンソン病、慢性腎不全等の数々の疾病の原因となっている。シリコン成分剤は、腸内で水素を発生し続けヒドロキシルラジカルを効果的に消滅でき、数々の疾病を防止できる。本講演では、シリコン成分剤による疾病防止の原理とその具体例について紹介する。


16:50 ~ 17:20

学術講演:「キラルテクノロジーの基礎」

笹井 宏明
第3研究部門(生体・分子科学系) 教授

 右手と左手のような、鏡に映した像のような関係の鏡像異性体が存在する化合物をキラル化合物という。生体を構成するアミノ酸や糖類の多くはキラル化合物であり、アミノ酸や糖によって構成される酵素やDNA等もキラル化合物である。したがって、これらの生体高分子に働く医薬品を鏡像異性体の混合物(ラセミ体)として用いると重篤な副作用を引き起こすことがある。このため、キラル化合物は、片方の鏡像異性体のみで構成される「シングルエナンチオマー」として用いることが望ましい。身の回りのキラル化合物の表記法と、少量のキラル源から大量のシングルエナンチオマーを合成可能な触媒的不斉合成の現状について紹介する。


17:20 ~ 17:50

学術講演:「触媒による化学反応のリアルタイム原子スケール可視化に向けて」

竹田 精治
産業科学ナノテクノロジーセンター 教授

 固体触媒による気体の化学反応は、本質的に電子的な現象であり高速(フェムト秒からアト秒領域)である。一方で、一回の化学反応が生じるのは、空間的には固体触媒表面の一点である。一点とは、表面の原子1個から数10個程度のスケールである。反応環境下で固体触媒表面を原子スケール観察可能な透過電子顕微鏡をいち早く開発した。この装置の時間分解能をミリ秒オーダーまで上げていくと、反応環境下において、固体触媒の表面の一点で、原子が激しく運動する現象が可視化された。固体触媒研究の常識を覆すような結果だが、この現象を、電子励起による原子移動と位置づければ学術的に理解することが可能である。化学反応を文字通り、原子スケールで解明できる新たな可能性が切り拓かれた。


ポスターセッション

掲示13:00~ 討論18:00~


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