家 裕隆
産業科学ナノテクノロジーセンター
日本の科学技術競争力が長期低下傾向にある中、基礎的部分を担う大学の重要性が指摘され続けています。また、大学での基礎的な発明や発見を新しい産業創造へとつなげることも日本は苦手と評されています。大阪大学産業科学研究所は“ 基礎的学問である科学” と“ 産業”をつなげるという、ある意味めずらしい名称を持ち歴史的に発展してきました。深い科学的理解に基づいた技術を将来の大きなインパクトを持つ産業へ発展させる” ディープテック(Deep Tech)が現在注目を集めていますが、“ 産業科学研究所” こそがその代表と言えるかもしれません。この産業科学研究所を産研同窓会は様々な企画で応援しています。今年度はフェイスブックとインスタグラムを開設し、産研の活動を伝えています。皆様ご覧ください。
今回の産研ホームカミングデイ特別講演には、大阪大学理事・副学長の尾上孝雄先生に「社会に供する大阪大学の研究をめざして」と題してお話をしていただけることになりました。大阪大学の研究、国際[ 研究]、情報推進、図書館担当理事として大学全体を発展させていただいているだけでなく、情報システム構成学講座の教授として研究を指導し、国内外の企業や研究機関と連携しながら社会実装に向けた実証実験を進められています。ご講演では、“ 大阪大学の研究推進で行っている各種活動を紹介し、今後の方向性について述べられる” とのこと、ご講演を楽しみにしています。
(会長:川合 知二)
初代所長 眞島利行先生の産研所記にあるように、産業科学研究所は創設以来、卓越した基礎科学研究の推進による産業の発展、ひいては国力充実に向けた活動を念頭に運営頂いている。社会課題が複雑化し、社会のなかで「大学」の役割が問われる昨今、大阪大学の研究活動や人材育成活動も、これに倣って変革していく必要があり、そのための支援体制も充実化しなければならない。本講演では、現在、大阪大学の研究推進で行っている各種活動をご紹介し、今後の方向性について皆様からもご意見を頂戴したい。
大阪大学産業科学研究所は、新産業創出の源泉となる基礎科学を探求し、その成果に立脚した最先端科学技術の社会実装に大きく貢献してきました。情報・量子科学、材料・ビーム科学、生体・分子科学とナノテクノロジー・ナノサイエンスを推進する4研究部門と、研究領域を横断的に融合した学際的研究を推進する産業科学AI センターの体制で、先端科学の社会・産業への実装による新たな産業科学イノベーションを目指しています。さらに、産業界や海外研究機関との連携強化、5附置研究所間クロスオーバーアライアンス事業および物質・デバイス領域共同研究拠点事業等による共同研究体制の強化にも取り組んでいます。
持続可能な社会を実現するためには、研究開発が不可欠です。再生可能エネルギーや効率的な資源利用は環境保護に寄与し、デジタル技術はヘルスケアや教育、スマートシティといった社会インフラを充実させ、サーキュラーエコノミーやエネルギー貯蔵技術は経済的な持続的発展を実現します。本講演会では、持続可能性を考慮した研究開発を推進することが将来の世代にとって重要な取り組みとの認識から、テーマを「持続可能な産業科学」としました。日本の国土は、その7割が森林を占めています。その森林資源から得られるセルロースナノファイバーという新たな木質材料研究を牽引してこられた京都大学生存圏研究所の矢野先生に学外講演を賜ります。学外講演と各研究部門・センターの教授による学術講演、そして、すべての研究グループによるポスター発表から成るプログラムを構成しました。
(世話人代表:能木 雅也)
樹木は重力に負けず、何十メートルもの高さにまで成長します。それを可能にする構造的特徴の一つが、10 億年以上も前に海の中で生物が獲得したセルロースの伸びきり鎖結晶です。また、植物が陸上に上がってからの5 億年という長い時間は植物を栄養源とする生物の誕生を可能にし、植物は地球上の炭素循環に取り込まれた生分解性の物質になりました。伸びきり鎖結晶と生分解性。この2 つのキーワードをベースに持続可能でカーボンニュートラルな環境素材、木材の魅力について、バイオリンやピアノに使われる木材の特徴やセルロースナノファイバーで作った自動車、ナノセルロースヴィークルの開発を通して紹介します。
スケジュール
●ホームカミングデイ
13:00 挨 拶 産研同窓会会長 川合 知二
13:10 特別講演 大阪大学 理事・副学長 尾上 孝雄
「社会に供する大阪大学の研究をめざして」
14:10 休 憩
●学術講演会
14:20 開会挨拶 産業科学研究所 所長 黒田 俊一
14:30 学外講演 京都大学生存圏研究所(生物機能材料分野) 名誉教授/特任教授 矢野 浩之
「木材の魅力 ~楽器から自動車まで~」
15:30 休 憩
15:40 学術講演 産業科学ナノテクノロジーセンター 産業科学研究所 教授 家 裕隆
「持続可能な社会の実現に貢献する機能性有機材料の開発」
16:10 学術講演 第2研究部門 産業科学研究所 教授 坂本 雅典
「見えないエネルギー、赤外光のエネルギー資源化への挑戦」
16:40 休 憩
16:50 学術講演 第3研究部門 産業科学研究所 教授 永井 健治
「自発光植物による持続可能な社会の実現に向けて」
17:20 学術講演 第1研究部門 産業科学研究所 教授 八木 康史
「歩容映像解析の深化 -本人鑑定から健康活用まで-」
17:50 閉会挨拶 産業科学研究所 副所長 駒谷 和範
●ポスターセッション
13:00~ 掲示、 18:00~ 討論