SrTiO3表面の原子ステップの形態と運動
1.はじめに
結晶表面のメゾスコピックスケール形態は、平坦な低指数面(特異面)の方位を持つテラスと
原子ステップによってその構造が特徴づけられる。荒れた結晶表面をラフニング温度と呼ばれる
温度よりも十分に低い温度で加熱すれば、表面はどんどん平坦化して行く。ステップの全長を
短くすることによって、表面自由エネルギーを減少させようとする傾向が、この平坦化の
駆動力となっている。図は、SrTiO3(001)表面の表面のSTM像である。
加熱を続けることにより、小さな穴や島が消失し、さらにステップが平坦化して行くことが
分かる。
このようなメゾスコピックスケールでの結晶表面の形態や運動は、原子ステップを構成単位と
したモデルを用いて定量的に議論することが出来る。われわれは、エピタキシャル成長用の基板
としてよく用いられているSrTiO3(001)表面をモデルケースとして、ステップの熱平衡
状態における形態と緩和のダイナミクスについてSTMを用いて調べている。
2.ステップ分布のテラス幅依存性
傾斜角度(ステップ密度)の異なるSrTiO3(001)微斜面におけるステップの分布の様子を
STMを使って調べてみた。図は、傾斜角度が(a)0.8度,(b)1.4度,(c)2.9度,(d)3.6度のSTO(001)基板を
800℃で15〜30分真空中で間加熱した表面の様子である。傾斜角度が小さい場合には、ステップは比較的
均一に分布しているのに比べ、傾斜角度が大きい表面ではステップが部分的に凝集していることが
分かる。このように、ステップの分布がステップ密度に依存して変化する様子は、
ステップ間に働く相互作用の距離依存性に基づいて議論することが出来る。
詳しい内容については、以下の論文をごらん下さい。
"Step Distribution on Vicinal SrTiO3(001) Surfaces"
K. Sudoh, and H. Iwasaki, Surf. Sci. 557 (2004) L151-L155.