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科学研究費補助金 特別推進研究 - 光誘起構造相転移動力学の研究

光で構造相転移を引き起こし、非平衡動力学を通じて未知の物質相へ

構造相転移は物質自然界が示す代表的な事象であり、物質構造と電子状態が協同的に相互作用しつつ劇的な巨視的秩序の変化を引き起こします。熱平衡的に発生する相転移では、系のすべての自由度が、全く同時無差別に励起され、転移が「渾然一体」として進展するため、転移過程に含まれている多様な相互作用の役割や個々の素過程の分離・抽出やその制御が全く不可能でした。
本研究では、この限界を突破する事を目的とします。そのため、超短光パルスを外部刺激源として用い、それによって発生する構造相転移(光誘起構造相転移)を研究対象とします。超短パルスレーザーを用いれば、物質構造の変化が始まるよりも十分に短い時間内に、電子系の状態変化のみを制御的に誘起でき、相転移の初期要因を明確にした下での物質構造の多体系動力学を、超高速で実時間追跡できます。さらに、光誘起相転移では、熱エネルギーよりも遥かにに高いエネル ギー状態を高密度に発生させる事が可能ですから、熱力学的相転移では到達できない、隠された未知の構造相にも到達できます。これによって、凝縮物質系の更なる多様性を顕在化できるとともに、その多様性を統一的に把握するより高い学問的視点を開拓し、さらには、新物質相を創製する新たな手法開拓にも直結して行きます。
本研究においては、電荷移動有機錯体結晶の中性・イオン性相転移、炭素凝縮相のグラファイト・ダイヤモンド相転移など、イオン性と中性、共有結合におけるsp2とsp3という、典型的凝縮機構の変換を伴う重要な現象を研究対象として選定し、フェムト秒光パルスで構造相転移を発生させ、フェムト秒の時間分解能を有する電子線回折構造解析法を開発して、時々刻々進展する相転移の各段階の構造をスナップショット的に直接観測します。これによって、構造相転移動力学研究を画期的に進展させます。
本研究の推進によって、熱平衡的に出現する物質の諸相のみならず、「非平衡相をも包含した凝縮系科学」、という新たな学術が形成されます。それにとどまらず、本研究によって得られる構造相転移に関する新たな概念的発展は、他の多くの相転移動力学研究へブレークスルーを開き、かつ、励起状態を介した新物質相創製への指針を確立して、材料科学やナノテクノロジーの進展にも大きく寄与します。