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03. 嵩高いケージング技術

 タンパク質や細胞を光や超音波といった外部刺激に応答するように変換できれば、望みのタイミングに望みの場所でだけその機能を発揮させることができます。その結果、タンパク質や細胞の時間的・空間的な役割を明らかにできるとともに、タンパク質や細胞から成るバイオ医薬の薬効を外部制御でき、安心安全に利用できるようになると期待されます。同様に、低酸素環境や弱酸性環境、還元環境といった生体内の局所環境に応答するように変換できれば、狙った環境でだけタンパク質や細胞を働くようにできます。そこで、我々のグループでは、どんなタンパク質や細胞も簡単に光応答性に変換できる「嵩高いケージング」技術を開発してきました。この技術では、嵩高い光分解性の材料を用いてタンパク質や細胞の表面を化学的に覆って一時的に不活性化します。この被覆されたタンパク質や細胞は、光を照射した時だけコーティングが分解するため、光に応答してその機能を発揮するようになります。

 この「嵩高いケージング」技術の原理は汎用性が高いと考えられ、コーティングの分解性を変えることで、様々な刺激や環境に応答するように技術を拡張できると考えて研究を進めています。また、このプラットフォーム技術を用いて、遺伝子編集酵素や治療用免疫細胞などの新しいモダリティの機能を制御し、次世代医療において安全・安心に利活用できるようにするための研究を行っています。

 我々の「ケージド細胞」が遺伝子操作をせずに細胞を光操作できるユニークな技術として欧州化学会のポータルサイトで紹介されました(こちら)。