iPS細胞の発見以来、望みの機能を持つ細胞を薬や人工組織として投与する再生医療が盛んに研究され、これまで治療できなかった病気に対しての実用化が始まっています。より安心・安全で、より効果的な細胞医薬品を開発するには、望みの機能を持つデザインされた細胞や組織を確実に生産する技術が不可欠です。ここで、細胞は培養皿などの固相の表面で培養することで、増殖させたり、組織化させたりします。従って、固相表面で細胞の付着や配置を自在に操作できれば、増殖した細胞の中から望みの機能の細胞だけを回収したり、複数種類の細胞から成る緻密な組織を構築したりすることが可能になります。そこで、我々のグループでは、光化学を活用して設計・合成した独自の高分子材料を基材に修飾して、光に応答してどんな細胞も瞬時に付着したり脱離したりする培養表面を開発し、細胞を自在に配置する技術や選択的に取り外す技術を開発しています。
これまでに幾つかの新しい機能を持った細胞培養表面の開発に成功し、その中の以下の3つの表面が先行して特許登録されています。
(1)光分解性細胞付着表面:光を照射したところだけ細胞が付着しない(特許7205910号)
(2)光活性化型細胞付着表面:光を照射したところだけ細胞が付着する(特許7205910号)
(3)光スイッチ型細胞付着表面:光に波長に応じて細胞を付着したり脱離したりする(特許7236126号)
技術のデモンストレーションとして、多色で染色した生きた細胞を光で配置して、EXPO2025大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」を描写してみました。
こちらの動画について、読売新聞(2025年2月22日朝刊)やフジテレビ「めざまし8」(2025年2月26日放送)で取り上げて頂きました。
青色蛍光と赤色蛍光を発するタンパク質を発現する
正常腎臓上皮細胞を光配置し、培養した際の動画。
(配置した細胞は接着伸展後、互いに結合し、最終的に組織化します)
現在、これらの光応答性細胞付着表面を用いて、国内外の研究者と幅広い分野で共同研究を行っております。また、企業との共同研究も始まっています。我々の技術を用いた共同研究について、是非気軽にご提案下さい。
特定の匂い成分に応答して蛍光を発する細胞を
光配置した蛍光センサー
(東京大学の神崎亮平教授、光野秀文准教授との共同研究開発)
匂い成分の種類に応じて対応する細胞パターンが蛍光を発する。
(2成分の同時検出も可能)