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産業科学研究所 小林研究室は、表面化学・半導体化学を専門とする研究室です。

研究内容RESEARCH THEMES

バナースペース

大阪大学産業科学研究所小林研究室

〒567-0047
大阪府茨木市美穂ヶ丘8-1
第二研究棟5階

TEL 06-6879-8451
FAX 06-6879-8454

2.シリコンナノ粒子の創製と水素発生の研究


(図1 シリコンウェーハの製造時に大量生成するシリコン切粉)

 太陽電池用のシリコンウェーハを製造するには、図1のようにシリコンインゴットをダイアモンドワイヤーで切断します。その際、多量のシリコン切粉(切屑)が生成します。太陽電池用のシリコンウェーハはコストダウンするためにその厚みがどんどん薄くなり、現在200μm以下の厚さになっており、約50%のシリコン材料が切粉として失われます。(シリコン切粉は現在産業廃棄物として処理されています。)全世界中で年間約10万トンのシリコン切粉が排出されています。小林研究室では、シリコン切粉からシリコンナノ粒子を形成して、それを有効利用する研究を行っています。


(図2 シリコン切粉から、シリコンナノ粒子を創製する新規技術)

 シリコン切粉はミクロンオーダーのサイズがあります。これを粉砕し、場合によっては光照射下で薬液によってエッチングして10nm程度以下のサイズにします(図2参照)。 

 図3に、小林研究室でシリコン切粉を原料に形成したシリコンナノ粒子のサイズ分布を示します。個数分布では1.5nmに、体積分布では5.2nmにサイズの最大分布があります。体積分布のメジアン径(図3中面積Aと面積Bが等しくなるところ)は、7.9nmとなっています。このように、シリコン切粉から大量生産に適用できる簡単な方法で、10nm以下のサイズのシリコンナノ粒子を形成することができます。


(図3 シリコン切粉から形成したシリコンナノ粒子のサイズ分布)

 現在、水素が新しいエネルギー源として注目されています。水素を製造するには、メタンと水蒸気を反応させる水蒸気改質法や、水を電気分解する方法が実用化されています。どちらの方法も、地球の温暖化の原因となっている炭酸ガスを排出するという問題があります。(水の電気分解では、電気を生産する際に炭酸ガスが排出されます。)一方、産業廃棄物であるシリコン切粉を原料にして水素を生産した場合、新たな炭酸ガスの発生はないといえます。シリコンナノ粒子のサイズがナノメートルオーダーになると反応性が増大して、容易に水と反応して水素が発生します。シリコンナノ粒子1gから、約1600mLの水素が発生することがわかります。水素発生速度は、最大400mL/分に達します。酸化チタンなどの光触媒を用いる水の分解による水素発生が盛んに研究されていますが、1600mLの水素を得るためには、光照射を1年以上続ける必要があると計算されます。シリコンナノ粒子による水素発生は非可逆反応ですが、光触媒反応に比較して1万倍以上の水素発生速度を有しています。



(図4 シリコン切粉から形成したシリコンナノ粒子と水との反応による水素発生)
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