RFガン電子ライナック
RF-Gun Electron Linac

電子ライナックで加速された電子は光速と同程度の速度を持つ高エネルギー加速粒子です。相対論的エネルギーを持つ電子とも表現され、量子ビームの1つです。
Electron LINAC accelerates electrons up to almost the same velocity with the speed of light in vacuum, and therefore, the accelerated electrons are high energy charged particles which called relativistic high energy electrons. 

RF-Gun
Linac
RF-gun

フォトカソード高周波(RF)電子銃:高品質な電子ビームを発生できる電子銃(電子を発生させる部分)です。「高品質な」とは、電子ビームを構成するそれぞれの電子のエネルギー(または速度)と向きが揃っていることを表しています。このような性質は短いパルス状の電子ビームを発生させるのに重要です。一般に物質はある一定以上のエネルギーを持つ光を照射されると、電子が飛び出す性質を持っています。この電子は「光電子」と呼ばれフォトカソードRF電子銃は、この性質を利用して、加速する電子を作り出しています。「カソード」とは陰極のことで、つまり、負の電圧が印加された電極です。電子銃では電子を発生させる部分をマイナスの電位として、発生した電子をもう片方のプラスの電位で引っ張りだす、ということをしています。レーザーパルスをフォトカソード(主に金属や半導体、本装置では無酸素銅)に入射し発生した光電子を、レーザーパルスの入射タイミングに合わせてフォトカソード上に作りした高周波の加速電場(マイクロ波)により電子ビームとして加速します。RFを用いた方法は、静電場では作り出せないほど高電界のため、たった15 cm程度の1.6セルのRFガンはエネルギー 4 MeVの電子ビームを発生することができます。4MeVの電子ビームは光速の99%程度の速度を持ち、電離放射線としての性質を持つようになります。
Photo-cathode RF (radio frequency) -gun: A photo-cathode RF electron gun is a new type of electron gun which feeds high quality electron pulses. A laser pulse is irradiated on the photo cathode and photoelectrons are used for electron beam. At the same time, electric field generated by the RF pulls out and accelerates the electron pulses. Because of the high electric field, low-emittance electron beam with energy of 4 MeV can be generated.

ピコ秒・フェムト秒レーザー:電子ビーム発生には、ピコ(10の-12乗)秒Nd:YLFレーザー、もしくは、フェムト(10の-15乗)秒Ti:Sapphireレーザーを使用します。フェムト秒レーザーはパルスラジオリシスの分析光源としても使用します。フォトカソード高周波電子銃では、2.856 GHz(S-バンド帯)のマイクロ波使って高周波電場を作り出しています。電磁波の1周期は周波数の逆数なので、このマイクロ波の波長は約350 ps毎に周期的に電圧が入れ替わっています。光電子を加速して電子ビームにするためには、この電場を使います。効率的に加速するには、この350 psの内の、電場の大きな時間で光電子を発生させる必要があり、従って、ピコ秒・フェムト秒レーザーが必要になります。本装置のピコ秒レーザーのパルス幅は5 ps程度、フェムト秒レーザーは100 fs程度です。また、このレーザー光の照射タイミングと、マイクロ波の周期が十分に精度よく、安定に同期していることは、とても重要です。 
Lasers to generate electron beam: A pico-second Nd:YLF laser or a femto-second Ti:Sapphire laser is used for electron beam generation. The femto-second laser is also used for probe light in pulse radiolysis.

Lasers
Beamports

3つのビームポート(電子ビームが出てくる場所):電子銃で発生した電子ビームは2 mの加速管で最大35 MeVまでさらに加速されます。加速管その後、電子ビームをいずれかのビームポートへ輸送し実験を行います。3つのビームポート(電子ビーム取り出し口)までは、管の中は10の-9乗 Torr(~1x10の-7乗 Pa)以下の高真空に保たれています。出口はチタン箔で大気と隔てられており、通常の実験では、このチタン箔を突き抜けた電子ビームを実験に使います。加速された電子、電子ビームは物質の透過力が高いのが特徴です。放射性核種から発生するベータ線なら2~4 mm程度のアルミ板で止めることができますが、本装置の発生する35 MeVの高エネルギー電子ビームの場合、アルミなら70 mm程度の厚みが止めるのに必要です。
Bend to 3 ports: Electron beam generated in the gun is accelerated up to 35 MeV. Electron beam is transported to one of the 3 beamports for experiments.

磁気パルス圧縮器:本装置の特徴の1つは、磁気パルス圧縮器による電子ビームパルス幅を圧縮し、より短い電子ビームパルスを作り出すことができることです。この磁気パルス圧縮器はアクロマティックアークとしてデザインされています。「アクロマティック(achromatic)」とは、色に依存しない光学系のことで、つまり、電子ビームのエネルギーが多少違っても、同じ点に収束するデザインになっています。また、「アーク(arc)」とは円弧のことで、磁気パルス圧縮器の配置が弓形であることを表しています。この磁気パルス圧縮器は2つの偏向電磁石(ビーム軌道45度を曲げる電磁石)、4つの四極電磁石(電子ビームを発散・収束させる電磁石)、2つの六極電磁石(電子ビームを発散・収束させる電磁石)により構成されています。これらの四極・六極電磁石の発生する磁場が電子ビームにとってはレンズとして働きます。偏光電磁石は分散プリズムのような働きをしています。電子ビームと磁場の相互作用は、ローレンツ力(磁場中で移動する荷電粒子が受ける力)によるものです。 
Magnetic bunch compressor: An achromatic arc of magnetic bunch compressor is used for electron bunch compression. This compressor is composed of 2 bending magnets, 4 quadrupole magnets, and 2 sextupole magnets.

Magnetic bunch compressor
Experiments

RFガン電子ライナックを使って、超短パルス電子ビームの発生や、この電子ビームを放射線源として用いたパルスラジオリシスによる放射線化学反応の解明、電子ビームの超短パルス化により起こると考えられる新奇現象、集団イオン化の実験的証明等、超短パルス電子ビームを鍵とした実験を行っています。
Ultra short electron beam brings new atlas!  

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