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ミスマッチ塩基対とは?
ミスマッチを認識する意味はあるのですか? 
ミスマッチ塩基対を調べる技術と個人治療の関係は? 
どうやってミスマッチ塩基対を認識するのですか? 
ミスマッチを認識する有機分子をどうやって使うのですか? 
   
ミスマッチ塩基対とは?

G−G,G−T,G−A,A−A,A−C,C−C,C−T,T−Tの8種類の塩基対のことです。

DNAはG−C(グアニン−シトシン)とA−T(アデニン−チミン)の塩基対から構成されています。この二つの塩基対をDNA二重鎖構造を発見したJames WatsonとFrancis Crickにちなんで、ワトソン−クリック塩基対と呼びます。塩基の組み合わせとしてはこの二つ以外にさらに8種類あります。G−G,G−T,G−A,A−A,A−C,C−C,C−T,T−Tです。これらの塩基対を水素結合表面が完全に相補的でない(マッチしていない)ことから、「ミスマッチ塩基対」と呼ばれます。

生物のゲノムDNAでは、DNAの複製過程でのエラーや塩基の損傷によりミスマッチ塩基対は頻繁に生成しています。そのまま放っておくと、遺伝子の配列が変ってしまいます。そのため、ミスマッチ塩基対を取り除いて、元に戻す酵素(修復酵素)が機能しています。ですので、生物のゲノムには、ミスマッチ塩基対はほとんど存在しません。(RNAにはミスマッチ塩基対がいっぱいです)

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ミスマッチを認識する意味はあるのですか?

はい、大変重要な意味があります。近未来に実現する「個人治療」に必須の技術です。

我々ヒトを含めて多くの生物は両親から遺伝子を一本ずつもらい、同じ遺伝子を2本持っています。(2倍体といいます)両親からもらった遺伝子の配列が同じ場合もありますが、違う場合もあります。遺伝子の数は2万2千個位(2004年10月時点)あるといわれていますから、人によってその組み合わせは膨大になります。町を歩いていても、まったく同じ顔、肌の色、髪質の人がいないのはこのためです。

すなわち、その人が持っている遺伝子の組み合わせは、個性そのものといえるでしょう。 お酒に強いかどうか、薬が効くかどうかも、この遺伝子の組み合わせで決まります。ヒトのゲノム配列が判ったので、その人に薬が効くかどうかを遺伝子レベルで調べてから治療に使おうという「個人治療」が近未来に実現します。その時にはミスマッチ塩基対を調べる技術が必要になります。

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ミスマッチ塩基対を調べる技術と個人治療の関係は?

遺伝子の違い(一塩基多型)をミスマッチ塩基対が形成するかどうかで調べます。

一塩基多型は、文字通り遺伝子の一塩基だけの違いです。一方の遺伝子がG−C塩基対を持つところが、もう一方の遺伝子では他のワトソン−クリック塩基対に変っている遺伝子の変異を指します。種全体で1%以上の変異を多型、1%以下を突然変異として区別されます。

例えばG−C塩基対がA−T塩基対に変っている一塩基多型では、二つの遺伝子を混ぜて、熱をかけて一本鎖にしてから、もう一度二重鎖を組ませると、変異がある場所がミスマッチとして浮き上がります。この操作でミスマッチ塩基対が生成すれば、元の二つの遺伝子には一塩基多型があることが判り(ヘテロ接合対)、ミスマッチ塩基対が出来なければ二つの遺伝子は同じ(ホモ接合対)であることが判ります。ホモ接合対には、野生型の遺伝子同士の組み合わせ(野生型ホモ)と変異型遺伝子同士の組み合わせ(変異型ホモ)があります。

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どうやってミスマッチ塩基対を認識するのですか?

ミスマッチ塩基対だけに結合する有機分子を、世界で初めて作り出すことに成功しました。

ミスマッチ塩基対は、水素結合表面が完全に一致していないので、ワトソン−クリック塩基対より「弱い」塩基対です。この弱い塩基対の両方の塩基に一致する水素結合表面を持った有機分子をつないだミスマッチ結合分子を有機化学的に作り出しました。

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ミスマッチを認識する有機分子をどうやって使うのですか?

金膜表面に固定化したミスマッチ検出センサーやミスマッチ分離クロマトグラフィーに使います。表面プラズモン共鳴に使われるセンサー表面に、ミスマッチ結合分子を固定化しています。

 

(1) Nakatani, K.; Sando, S.; Saito, I. Nat. Biotechnol. 2001, 19, 51−55. (2) Nakatani, K.; Sando, S.; Kumasawa, H.; Kikuchi, J.; Saito, I. J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 12650−12657. (3) Kobori, A.; Horie, S.; Suda, H.; Saito, I.; Nakatani, K. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 557−562. (4) Hagihara, S.; Kumasawa, H.; Goto, Y.; Hayashi, G.; Kobori, A.; Saito, I.; Nakatani, K. Nucleic Acids Res. 2004, 32, 278−286.

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