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G−G,G−T,G−A,A−A,A−C,C−C,C−T,T−Tの8種類の塩基対のことです。
DNAはG−C(グアニン−シトシン)とA−T(アデニン−チミン)の塩基対から構成されています。この二つの塩基対をDNA二重鎖構造を発見したJames WatsonとFrancis Crickにちなんで、ワトソン−クリック塩基対と呼びます。塩基の組み合わせとしてはこの二つ以外にさらに8種類あります。G−G,G−T,G−A,A−A,A−C,C−C,C−T,T−Tです。これらの塩基対を水素結合表面が完全に相補的でない(マッチしていない)ことから、「ミスマッチ塩基対」と呼ばれます。
生物のゲノムDNAでは、DNAの複製過程でのエラーや塩基の損傷によりミスマッチ塩基対は頻繁に生成しています。そのまま放っておくと、遺伝子の配列が変ってしまいます。そのため、ミスマッチ塩基対を取り除いて、元に戻す酵素(修復酵素)が機能しています。ですので、生物のゲノムには、ミスマッチ塩基対はほとんど存在しません。(RNAにはミスマッチ塩基対がいっぱいです) |
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遺伝子の違い(一塩基多型)をミスマッチ塩基対が形成するかどうかで調べます。
一塩基多型は、文字通り遺伝子の一塩基だけの違いです。一方の遺伝子がG−C塩基対を持つところが、もう一方の遺伝子では他のワトソン−クリック塩基対に変っている遺伝子の変異を指します。種全体で1%以上の変異を多型、1%以下を突然変異として区別されます。
例えばG−C塩基対がA−T塩基対に変っている一塩基多型では、二つの遺伝子を混ぜて、熱をかけて一本鎖にしてから、もう一度二重鎖を組ませると、変異がある場所がミスマッチとして浮き上がります。この操作でミスマッチ塩基対が生成すれば、元の二つの遺伝子には一塩基多型があることが判り(ヘテロ接合対)、ミスマッチ塩基対が出来なければ二つの遺伝子は同じ(ホモ接合対)であることが判ります。ホモ接合対には、野生型の遺伝子同士の組み合わせ(野生型ホモ)と変異型遺伝子同士の組み合わせ(変異型ホモ)があります。 |
(1) Nakatani, K.; Sando, S.; Saito, I. Nat. Biotechnol. 2001, 19, 51−55. (2) Nakatani, K.; Sando, S.; Kumasawa, H.; Kikuchi, J.; Saito, I. J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 12650−12657. (3) Kobori, A.; Horie, S.; Suda, H.; Saito, I.; Nakatani, K. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 557−562. (4) Hagihara, S.; Kumasawa, H.; Goto, Y.; Hayashi, G.; Kobori, A.; Saito, I.; Nakatani, K. Nucleic Acids Res. 2004, 32, 278−286. |