強力極超短時間パルス放射線発生装置
(Lバンド電子ライナック)
Lバンドライナックは、高い電荷量(91ナノクーロン(約5.7X1011乗個の電子))をもつパルス幅約20ピコ秒の単バンチ高エネルギー電子線を発生させることが可能な加速器です。
電子線パルスの時間幅を変化させることで、ナノ秒からピコ秒の時間領域(後述する磁気パルス圧縮を行うことでフェムト秒まで可能)における各種化学反応素過程の解明や照射効果の研究等に利用されています。一方、高電荷密度の電子線パルスが発生可能であることを利用し、THz領域の自由電子レーザーの発振にも利用されています。
当該加速器では、熱陰極電子銃よりナノ秒域からマイクロ秒域で引き出された電子がクライストロン(周波数1.3GHz、ピーク電力30MW)により生成されるマイクロ波により30MeV程度まで加速され利用されています。
例えば単バンチビーム発生時には、電子銃から入射されたパルス幅5ナノ秒の電子ビームは108MHzと216MHzの周波数で励振される3台のサブハーモニックプリバンチャー(SHPB)で速度変調を受け、電子の数を減らすことなくパルス幅500ピコ秒以下に圧縮されてプリバンチャー(PB)の入り口に到着します。このビームがプリバンチャー、バンチャー(B)を通過すると、約20ピコ秒にパルス幅が圧縮され、加速管(ACC)で所定のエネルギーに加速されて高エネルギーのピコ秒単バンチビームが得られます。
さらに、短パルスが必要な場合は磁気パルス圧縮と呼ばれる方法を用いることにより、1 ピコ秒以下(最短125フェムト秒)の単バンチビームを発生させることが可能です。 この装置で発生する単バンチビームの電荷量は、設置当初は7ナノクーロンでしたが、電子銃やマイクロ波系の改良により、現在では世界最高の91ナノクーロンが得られています。 |