2024年11月13日(水)、産業科学研究所 家裕隆教授らの研究グループから、岡山県立真庭高等学校、岡山県真庭市、株式会社MORESCOとの共同プロジェクトに関するプレスリリースを行いましたので、ご報告させていただきます。
本プロジェクトの詳細は、11月20日(水)に行われる産研・工学研究科 定例記者発表会にて説明を行います。
ポイント
- 岡山県立真庭高等学校と連携し、同校の食農生産科が有する農業用ハウスに「緑色光波長選択型有機太陽電池(OSC)」を設置する実証プロジェクトを12月より開始予定
- OSCは、太陽光を選択利用しながら発電と栽培の両立を実現する、次世代型の有機太陽電池
- 国内トップシェアのシリコン系太陽電池に代わり、エネルギー地産地消の新しい営農型太陽光発電技術として、農業用ハウスへの実用化に期待
概要
大阪大学産業科学研究所 家裕隆教授らの研究グループは、研究開発を進める「緑色光波長選択型有機太陽電池(以下OSC)」※について、岡山県立真庭高等学校と連携し、同校の食農生産科が有する農業用ハウスでの実証実験を12月より開始します。
※ 本研究成果は、2024年8月20日にElsevier誌 『Materials Today Energy』 に公開されました。(2024年8月28日プレスリリース)
<スマート農業のさらなる発展を目指して>
日本国内の食料における安全保障は、食料の生産のみならず農業機械の燃料である化石燃料の対外依存度が高く、国際情勢の不安定化や災害による供給途絶のリスクが存在しています。
また、「化石燃料漬け」の国内農業エネルギーの現状も、資源の持続可能性や環境保護の観点から大きな問題を抱えています。食料の安定供給・国産化の推進に向けて農業生産力の増大を図ることは急務であり、スマート農業など先端技術による生産性向上、再生可能エネルギーの活用など、新たな農業システムの確立が不可欠です。
家教授らが研究を進めるOSCは、農作物の生育に必要な青色光と赤色光を透過し、光合成への寄与が少ない緑色光を発電に用いるため、発電と栽培が同時にできる次世代型太陽電池です。
現在国内シェアの約8割を占めるシリコン系の太陽電池は重量が大きく、また光を遮るという難点のために、農業用途で活用するには周辺の農地への悪影響が懸念されています。OSCはこれらの欠点が解消された軽量かつ柔軟な薄いフィルム型で、農業用ハウスへの設置により農地面積を確保しながら農作物栽培および電力供給が可能であり、エネルギー地産地消の新しい営農型太陽光発電技術としての実用化が期待されています。
<真庭高校、真庭市との連携について>
今回のプロジェクトの目的はOSCの実証実験のみならず、最先端農業の導入により真庭高校の独自性や魅力の向上にもつながること、また、環境に配慮した持続可能な農業生産について、未来の「食」と「農」を支える若年層の理解を、実践を通して深める契機となることが期待されます。
研究グループはこれまでにも、株式会社Awaji Nature Farm(兵庫県淡路市)の運営する農業用ハウスにてパソナ農援隊と共同でOSCの実証実験を行ってきました。
そして今回、OSCを製造する株式会社MORESCOの協力のもと、新たに食農生産科のある真庭高校、岡山県真庭市と連携し、同校の農業用ハウスにてOSCの生育実証を行う準備を進めています。実証期間は12月より約3か月間を想定しており、真庭高校食農生産科の生徒らを中心に農作物の栽培を行い、発電量をはじめ、作物の生育に関して量や味、色や栄養成分など様々な観点からOSCの評価を行う予定です。