2025年8月4日(月)、産業科学研究所講堂にて、ジョージア工科大学のChristopher E. Carr准教授を招き、「Seeking Evidence of an Organic Carbon Cycle in the Clouds of Venus: Preparing for the Rocket Lab Mission to Venus and Follow-on Missions」の講演が行われました。
Carr准教授は、宇宙工学と地球・大気科学を融合した研究で国際的に高い評価を受けている研究者であり、とりわけアストロバイオロジー(生命の起源と存続可能性)分野を先導しています。講演では、金星の大気探査法における最先端の研究成果と、NASAの惑星探査計画などが紹介されました。
本講演は、惑星探査が地球社会に還元される可能性を示すだけでなく、産業科学研究所の新たな挑戦とも深く響き合うものです。産研では、2025年5月より「月面都市開発研究センター」を設置し、日本の宇宙産業が直面する課題に対応し、国際的競争力を取り戻す取り組みを開始しています。本センターは、産研が培ってきた計測技術やデバイス・マテリアルの知見を活かし、大阪大学の各部局と連携しながら、宇宙や月面における限られた資源を最大限に再利用した持続可能な生活の実現を目指しています。Carr准教授の研究が示す「宇宙における生命体の探究」は、このセンターの理念と共鳴し、宇宙環境における生命維持技術や持続可能な居住基盤の構築に直結するものです。
Carr准教授は、宇宙生物学とナノテクノロジーを結ぶ学際的研究の最前線を示すとともに、産業科学研究所の広範な学術的貢献と社会的使命を改めて浮き彫りにした講演となりました。引き続き産研は、月面都市開発研究センターを核として、宇宙探査と地球社会を結ぶ革新的研究を推進してまいります。
(産業科学研究所 教授:谷口 正輝)