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動きのビッグデータから人工知能技術を使って運動技能の獲得を支援する ~コンピュータで技を伝承する基礎技術を開発~

国立大学法人 筑波大学
国立大学法人 大阪大学
ミズノ株式会社

国立大学法人筑波大学 システム情報系 山際伸一准教授らの研究グループは、国立大学法人大阪大学 産業科学研究所 河原吉伸 准教授とミズノ株式会社(大阪)と共同で、スポーツの技を獲得するためのヒントを、動きを捉えたセンサーや映像のデータを多数収めた、いわゆる「動きビッグデータ」から、目標とする理想の動きへの道筋を教示してくれる技術を開発しました(特許出願中)。

本研究グループは、ミズノ株式会社(以下、ミズノ)が所有するおよそ2000人のランニングの動きデータを、人工知能技術をつかって数値的なスキルの「距離」として表現することにより、マラソン上位者と初心者の間には、肘、膝、足首の動きに差があることを発見しました。これをもとに、影響度を得点としてわかりやすく表すことでスキル獲得を支援する「スキルグルーピング」と呼ばれる技術を開発しました。

さらに、野球のバッティングの動きデータにもスキルグルーピングを適用することで、道具の差を数値的「距離」として表せることも発見しました。道具の差が動きに与える影響を数値化できるようになりました。

また、スキルグルーピングを、スキーのパラレルターンをモーションセンサで計測したデータにも応用したところ、これまで見た目でしか判定されない競技でも、運動能力差を数値化することに成功しました。上級者は複数回の試行でも動きの数値的「距離」が小さく、いつも同じ動作をしていることを数値的に表現できることも発見しました。

キルグルーピングを、毎日の運動の中で使用することで、コンディショニングやリハビリテーションといった時系列での運動能力管理や健康管理に利用することができるようになります。また、これまで、「健康とは何か?」といった人工的な基準を設けるしかなく、汎用化が難しかった情報機器を、スキルグルーピングを用いて開発することができ、IoT注1)時代の健康管理のためのツールとなることが期待されます。さらに、スキルグルーピングを伝統芸能や意匠技術の伝承に利用すると、世界的にも喫緊の課題である「技の伝承」を人工知能で支援する新しいシステムが実現できます。

本研究の成果は、2015年10月29日からサンノゼで開催される国際会議「IEEE BigData 2015」のワークショップで発表される予定です。

* 本研究の一部は、日本学術振興会 科学研究費補助金 挑戦的萌芽研究「動きビッグデータからスキルの予測は可能か?」(研究期間:平成27~29年度)によって実施されました。


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