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大阪大学と富山市、IoT技術を用いたインフラ管理技術の研究開発を開始! ~橋梁・橋脚の高効率状態管理にシート型IoTセンサを活用~

【発表のポイント】

・大阪大学と富山市が中心となり、橋梁や橋脚などの効率的な点検・管理手法の研究開発を開始した。
・本研究では、シート型のワイヤレス構造物センサシステムを用いて、貼り付けるだけで構造物の状態を正確に計測できることを実証し、橋梁のトリアージ(補修の優先順位付け)に資する基盤技術開発への発展を目指す。
・劣化する大規模構造物の高効率管理技術、人手に頼らない社会インフラ管理技術の開発は超少子高齢社会を迎えた我が国において極めて重要な取り組みである。

【概要】

 大阪大学産業科学研究所の関谷毅教授らの研究グループは、富山市(植野芳彦 建設技術統括監)と連携して、IoTセンサシステムを活用した橋梁、橋脚の効率的点検・管理手法の研究開発を開始しました。

 IoT技術を活用した社会インフラの保全、老朽化対策の研究開発は様々なところで進められています。本研究では大阪大学の関谷教授らが開発してきた多チャンネルのシート型センサシステムと富山市の持つ先進的な構造物の保全管理技術を融合し、大規模な構造物の全体系の挙動把握をきめ細かに計測し、状態に関する客観的な情報から保守点検の優先順位を自動的につけるAI技術へと発展させることを目的とします。

 また、超少子高齢社会を迎えた我が国において、老朽化が進む大規模社会インフラの「人手に頼らない管理手法の開発」は喫緊の課題であり、本取り組みを経て、さまざまな社会インフラへの展開も目指します。

【研究の背景】

 世界に先駆けて超少子高齢社会を迎えた我が国において、劣化する大規模構造物の高効率管理技術、人手に頼らない社会インフラ管理技術の開発は極めて重要な取り組みですが、大規模かつ風雨にさらされる環境における高精度な状態計測は容易ではありません。

 富山市は、全国に先駆けて先進的な構造物の保全管理技術に関する取り組みがなされており、すでに多くの構造物検査技術により構造物の計測が行われています。この優れた取り組みから得られている「経験・知識・データベース」と、大阪大学を中心とした研究チームにより開発された、貼り付けるだけで高精度な状態計測が可能な「シート型マルチチャンネルセンサシステム」を融合させる本連携は、世界に先駆けて「大規模構造物のスマート状態管理」「客観的な状態把握と優先順位を付けた補修(トリアージ技術)」の実現を目指します。

 関谷教授らの研究グループは、これまでにシート型のワイヤレス高感度センサの研究開発を進めており、パッチ脳波センサ等、手軽な脳活動計測が可能なセンサシステムを構築し、社会展開を進めています。研究開始にあたり、使用するシート型のセンサシステムを大規模構造物、特に橋梁・橋脚を計測することを目的に「機能、耐久性、サイズ」を拡張させ(図1)、橋梁・橋脚等のコンクリート構造物へ「貼り付ける」ことでその状態を正確に計測できるよう開発を進め、得られる情報から特徴量(老朽化度合い)を抽出し、橋梁のトリアージが可能な人工知能技術へと発展させていく取り組みを進めます。

(図1)シート型センサシステムの写真。橋梁等に貼り付けることで、歪、振動等のワイヤレス状態計測ができる。

【本研究が社会に与える影響(本研究の意義)】

 本研究により、壁紙のようなシート型センサを「貼り付けるだけ」で構造物の状態を把握できるセンサシステムの実現が期待されます。

【特記事項】

 本研究は関谷毅(大阪大学 産業科学研究所)を研究開発責任者とし、植野芳彦(富山市建設技術統括監)とともに本プロジェクトを統括・推進します。さらに、研究開発連携者として、桜井貴康(東京大学生産技術研究所教授)、東京電力ホールディングス(株)、東電設計(株)、昭和電工(株)、ダイキン工業(株)、東洋インキSCホールディングス(株)、双葉電子工業(株)が、本研究に取り組みます。

 なお、大阪大学は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業である、「IoTを活用した新産業モデル創出基盤整備事業/IoTの社会実装推進に向けて解決すべき新規課題に関するシステムの開発/シート型構造物ヘルスケアシステムによる橋梁トリアージへ向けた研究開発」のプロジェクト(平成29年度11月~3月)として取り組んでいます。

【記者会見】左:根津俊一特任研究員、中央:植野芳彦氏(富山市 建設技術統括監)、右:関谷毅教授

【記者会見】当日のデモ風景

【関連リンク】

先進電子デバイス研究分野(関谷研)
研究室サイト